さて今年の富士山は,何れも河口湖口(富士スバルライン五合目)から登り,1回目は御殿場口ルートから宝永山前を経て須山口登山道で水ヶ塚へ,2回目は富士宮口下山道6合目から宝永山下/双子山上を経て御殿場口へ,3回目は御殿場口ルートをそのまま下った.
(新宿からバス→)河口湖口5合目→富士山頂→御殿場口下山道→御殿場口5合目(→バスでJR御殿場駅)
天気:晴れ
歩行+休止時間:11時間45分くらい.
歩行距離:16.9km
この日も晴れて,気温は高め,風も下山路では若干出てきたが概してあまり無く,富士山日和であった.最近の気象庁発表によれば,今年は113年間で最も暑い夏になった(なおも続きそうだが)そうで,まあ富士山の気温が高かったのもそれに関連しているのであろうか.
剣が峰では4~5組の団体客の皆さんが日の出を迎えていた.日が昇り切り,どよめきが収まるとツアリーダーの音頭でバンザイ三唱(右下)が行われていた.今年はツアーも順調で,同社最終ツアーは9/4発まであるという.なお,筆者は左廻りでお鉢を巡ったが,このときも,前回も団体ツアーの皆さんは全て右廻りで進んで行った.お鉢巡りはそれが主流なのであろう,多分.
この日は南アルプス方面に雲が少なく,よく見渡せた.写真左上は八ヶ岳だそうだ.8つまでは識別できないが確かにたくさんの峰が見える.あそこを歩いたのは大昔のことであるが,赤岳の石室小屋とそこのおかみさんという情景がおぼろげに思い出される.
この日は御殿場ルートを下ることにした.下山路を歩き始めると山中湖とその先に幾重にも山が重なる光景がきれいに見えた.それぞれの山の頂きは濃く,裾野は白っぽくなっているのがミソで,このためあたかも山水画のように遠近の立体感を鮮明に見せてくれている.
歩いているとしばしば山中湖の湖面が反っているように感じられる.目の錯覚であろうが,少し不思議だ.
御殿場ルートは何といっても大砂走りだ.最初は結構大きな石も混じっているが,暫く行くと殆ど砂だけでしかもとてつもなく広幅なトレイルになる.正しく「大」の修飾に相応しいであろう.写真は双子山上部辺りで撮ったもので,双子山の名の由来が手に取るようにはっきり判る.つまり2つの峰が並んで見えている.先週はちょうど2つの峰の間を右から左へと抜けたことになる.
9:35AM御殿場5合目のバス停に到着した.バスは先週と同じように11:50AMまでないので,ちょっと早過ぎの失敗だ.御殿場ルートは営業中の小屋はとっても少なく,八合目の赤岩八合館だけ(だったか?)で,七合5勺の砂走り館が建替え工事中の様子だった.多分来シーズンは営業しているのではなかろうか.
御殿場5合目からのバスは,20人近くの人にシートがなく,この日も相当込み合っていた.今年は好天に恵まれ,少なくとも山梨県側の登山者はこれまでで最も多かったそうだ.静岡県側でもそれなりに多かったのではなかろうか.天気に左右されるのでバスの営業も容易ではなかろうが,臨時便でも出してくれればありがたいものだ.
下は河口湖口5合目→富士山頂→御殿場口下山道→御殿場口5合目への道中写真
(新宿からバス→)河口湖口5合目→富士山頂→富士宮口下山道6合目→宝永山下/双子山上→御殿場口5合目(→バスでJR御殿場駅)
天気:晴れ/下の方では時々曇り
歩行+休止時間:13時間くらい.
歩行距離:19.0km
登りはバカの一つ覚えで河口湖口(富士スバルライン5合目からスタート)から山頂に至り,ご来光の後に富士宮口下山道(登山道と同じであるが)を6合目まで下り,ここで宝永山方面に分岐した.10分ほど行くと前回下った水ヶ塚方面に向かうトレイルに交わる.ここを10分ほど下ったであろうか,三叉路に至り,左側に折れると今回初めて通ろうとする双子山手前経由御殿場口5合目に抜けるトレイルの入り口だった.
双子山手前経由御殿場口トレイルもまた水ヶ塚に下る須山口登山道のように人通りは少ない静かなコースであった.
新宿からのバスは順調に走り,9:45PM頃富士スバルライン5合目に到着した.身支度を整え,歩き始めて2時間ほどすると24日(火)に入った.ところどころ立ち止まりながらなおも行くと写真の8合目太子館辺りに到着した.0時半くらいであったので,小声ではあるがしきりに「今年の年号入りですよ~」と金剛杖焼印の案内トークが流れていた.
5合目から歩き始めたハイカーは少ないが,この辺りになると,この時間までこの付近で宿泊し,歩きを再開した人たちでいっぱいになり始める.幸いこの夜は所々黒い雲も見えるが,気温も高めで,風も少なく大きく崩れる恐れは少なそうだし,オリオンなどもくっきり見えていた.
9合目くらいからは渋滞気味になるが前回程ではないようだ.それに私にはある程度の渋滞はちょうどいいペースを与えてくれるので都合いい.いろいろなグループのツアリーダーの人たちが「日の出は5時ですよ~」と案内しているのが聞こえる.流れに乗って歩いて行くと4:25AM頂上に出た.ちょっと早過ぎたようだ.
頂上には既に大勢の人たちがご来光を待っていた.一部の人たちは写真のように久須志神社でお札やお守りを受けていた.
久須志神社から右の丘を登り日の出を待った.通常より決して寒くはないのだが,じっとしているとやはり冷えてくる.陽はまだ出ていないが地面はくっきり見えるくらい明るくなり,こりゃ歩いた方がいいな~と思い,剣が峰方向に向かった.
途中で5時になったが陽は昇らなかった.下界の雲が厚いため,その分遅いのであろう.噴火口の縁を歩き,剣が峰の少し手前5:05AM位になると,厚い雲の中から鈍く赤い太陽が現れてきた.所々輝度の高い横縞があり,微かな記憶にある土星を髣髴させる(本当は違うかも知れないが).陽が昇るに連れ上部の縞は輝度を増し,やがて直視できないギンギラの太陽へと変化していった.その頃になると「うわ~」とか「バンザ~イ」とかの歓声も聞こえてきて,富士山だな~と改めて感じさせてくれる.
6時少し前に富士宮口道へと下山を始めた.程なく6:15AM頃には9合5勺目の「胸突山荘」辺りにやって来た.下界は入道雲であろうか,夏の若しくは夏の終わりの雲で覆われているように見える.ダイナミックな雲そのものの造形は見事だが,前回よく見えた駿河湾や相模湾を望むことはできなかった.
富士宮口トレイルは登り下り一緒であるが,河口湖口と比べると歩いている人が少ないし,ほぼ全行程ロープが張られているので助かる.でも登りは「胸突山荘」の小屋名が付されるように結構大変なのかも知れない.
なおも下るとこの日も自衛隊の訓練で登ってくる一行に行き交う.ちょうど一人の方が休憩でヘルメットを脱いで休んでおられたので,ちょっと持たしてもらった.前回の「鉄兜か?」の予想に反し,普通の軽いプラスチックだった.富士山では普通これで歩くそうで,実射訓練などでは3kgの鉄兜だそうだ.ついでにかけていたサングラスは防弾ガラス製で相当重く,さらにGPS情報が映し出されるものだと教えてもらい,驚いた.映画,例えば戦闘機パイロットのゴーグルなどではそのようなものを見たことがあるが.....でも,これはさすがに覗かせては貰えなかった.液晶などレンズの一部に組み込むのは容易であろうが,被写体距離が目の間近なので,それを見えるようにするにはどうするのだろうか?これは興味深い.ご存知の方が居られたらぜひお聞きしたいものだ.なお,GPS本体とサングラスとはケーブルで繋がれていた.
朝8時半近くになり富士宮口6合目に到着した.茶屋で冷たいコークで喉を潤し,少し休んでから宝永山方面へと分岐した.10分ほど行き,三叉路に来て左側水ヶ塚方面へと右折した.そこから少し下ると「双子山に至る」の標識が見られ,ここで左折した.
写真は富士宮口6合目から30分くらい歩いたところで,背後は宝永山だ.この頃になるとガスが出て,隠れたり現れたりしていた.所々立派な標識があるのだが社会通念上中央には普通「現在地」が表示されると思うが,そこにはなぜか常に「御殿場口」と表記され,困惑する.地図と経過時間を見比べると「御殿庭上」辺りかも知れない.
トレイルはやがて林に入る.最初は丈の低い木立で,トレイルが不鮮明な部分もあるが,頻繁にペイントされた石がガイドしてくれるので助かる.ただ暗くなると判り難いと思う.
林を抜けると再び砂漠のような砂地のトレイルになる.総じて下りであるが,所々登り勾配の所もあり,水ヶ塚ルートの下り一本槍と比べると変化がある.
林を抜けた後は専ら宝永山の麓を巻くように歩いた.暫く行くと先方にこんもりした山が見えてきた.所々に「双子山までxx分」の標識があるので,多分あれが双子山であろう.真横に来ても「あれが双子山」や「双子山はこっち→」といった標識はないが,多分そうであろう.実際ここを通り過ぎた辺りには「双子山は→」の標識が見られたので,後になって確かにそうだと判明した.
双子山を過ぎた辺りからは御殿場口大砂走りと同様な砂走りトレイルとなり,ザクザク快適に下ることができる.そして程なく,10:40AM御殿場口5合目のバス停に到着した.富士宮口6合目から2時間ちょっと歩いたことになる.大分くたびれた.
5合目終点は濃い霧が架かりなかなか涼しかった.富士急バスは1時間少し待ち,11:50AMに出発した.私たちのように長く待っていた人は座れたが,間際に乗り込んだ10人くらいはお気の毒に席がなく御殿場駅まで30分立ちっぱなしだった.私の富士山バスの経験では概ね乗る人が少なく,「経営が大変そうだな~」と感じていたので,このような繁盛振りは実に稀有なことのように思われた.
御殿場駅に到着すると,今夏特有の猛烈な暑さが待っていた.幸い御殿場線には電車が待機していたので直ちに乗り込み,ほっとする,いやhotが多少緩和する.松田で小田急に乗り換え帰宅した.いや~それにしても暑い年だ.
下は河口湖口5合目→富士山頂→富士宮口下山道6合目→宝永山下/双子山上→御殿場口5合目ルートのいろいろな写真
水ヶ塚に下る須山口ルートも少ないが,今回のルートも歩いている人は多くない.それでも今回は林の中で反対方向に向かう2組の人たちに出会うことができた.双子山より御殿場口側ではさらに2~3組の人たちに行き交った.富士山なのか,あるいは宝永山や双子山に向かうのか定かではないが,須山口ルートよりは多少人の気配が多く感じられた.あのユニークな標識は,最近よく耳にする「ガラパゴス化」と揶揄されるケースといくらか類似しているのでは......いろいろな人が歩くようになった今,もっと有り体に「御殿場口」に替えて「現在地」が表示されるのがいいように思うが......
(新宿からバス→)河口湖口5合目→富士山頂→剣が峰→御殿場口ルート→宝永山前→須山口登山道→水ヶ塚(→バスでJR御殿場線裾野駅)
天気:晴れ
歩行+休止時間:13時間20分くらい.
歩行距離:19.76km
昨年水ヶ塚に下ったときは,富士宮口コースを下り,宝永山に至る道に分岐し,途中須山口登山道に降りるようにした.今回は先ず御殿場口ルートに下り,宝永山前を過ぎてから須山口登山道に下るルートを辿ってみた.
細かくは昨年は久須志神社前から時計回りで下山道に入ったが,今回は左回りで剣が峰を通り下山道に入った違いもあり.
河口湖口5合目から登り始めた.この日は風も弱く,気温もさほど低くはない.またトレイルも少なくとも途中までは込み合っておらず順調に進む.ただ時節柄,標高3,400m(本八合目)辺りになると,この辺のロッジで宿泊し,未明に歩き始めるツアーが多いためであろう,しばしば渋滞が起こる.九合目の上辺りでは,多分河口湖口や吉田口など山梨県側当局関係者が「まだご来光に間に合いますので,元気な方は3列,4列になっても,右側からどんどん追い抜いて上がってください」としきりに発破をかけていた.
その励まし通り歩いたら,確かに日の出前4:35AM頂上の久須志神社前に到着した.いつもどこかで出会う自衛隊の人々が,この日は既に到着し,ヘルメット(バイク用のFRP製とか違って多分鉄兜)を脱ぎ,一般のハイカーと同じように日の出を待っていた.
到着して待つこと10分,4:45AMウオーっと歓声が上がる.ちょうど日の昇る辺りに雲がなく,期待に応えてくれたようだ.いつもと比べて気温は高めで,風も無かったが,それでもやはりじっとしていると寒いので,高々10分待ちでご来光とは絶妙なタイミングで頂上に来た訳で,ラッキーだった.
日の出の後は直ぐに剣が峰に向かった.以前日の出前に歩こうとしたら,トレイルが判らず引き返したことがあったが,明るくなれば大丈夫だ.暫く行くとお鉢の反対側に至り,西側のエリア(樹海方面のようだ)が見えてきた.同時に当富士山のシルエット,所謂“影富士”がくっきり映し出されていた.まだ陽の位置が低いので影富士の頂上は地平線近くまでの高さに達しているように見える.
程なく剣が峰にやって来た.既に大勢の人が詰め掛け(或いはここで日の出を迎えた人もあろう)旧富士山測候所前の階段で列を成していた.いろいろな国の言葉が聞こえてくるが,何度も登る機会のない外国の人にとっては特に好天に恵まれ良かったと思う.
ところで「剣が峰」は日常でもしばしば用いられるが改めて辞書(広辞苑第4版)を引くと,(1)噴火口の周縁.主として富士山頂をいう.(2)相撲で、土俵のたわら.また,そこに足がかかって後がない状態をいう.「―で残す」(3)事が成るか成らぬかのぎりぎりの分れめ,と載っている.固有名詞と思っていたが,(1)の「噴火口の周縁」は意外(筆者にとって)だ.でも言われれば,(2)や(3)の原意であろうとことを考えればなるほどと納得だ.
剣が峰から浅間大社奥宮に歩き,そこから少しばかり行くと御殿場ルートの下山道(登りもここ辺では一緒)があった.ここを下り始めると下方には所々雲があるもののとてもクリアで先には駿河湾が見えていた.また左には相模湾も広がっている.写真では必ずしも鮮明ではないが,これまでの経験では最も眺望が利くように思えた.
歩いていると,登って行く人や,足早に追い抜いて行く人に出会う.ただそう多くはなく,静かにゆっくり歩けて快適だ.
御殿場ルートを7合目まで下ると,登り/下りトレイルが分離する.下りは大砂走りとして知られるコースだ.これを滑りながら,6合目まで下り,宝永山及び富士宮口ルート方面へ抜ける道に分岐した.
この道を進み,宝永山前を越え少し行くと,尾根に出て,御殿庭への標識が現れる.新しく鮮明な標識ではあるが,最終ターゲットやコース名の表示はなく,折角立派な標識を立てたに割りにちょっと....といった印象を受ける.まあ,ともかくここで左折し須山口ルートに向かう.なお,ここで直進すれば富士宮口6合目に至り,その距離は幾らでもない.
須山口ルートを下り始めると程なく林に入る.やはり林に入ると陽射しが少し遮られるのでほっとできる.1時間余り歩いたであろうか,最初の標識にあった「御殿庭」に至った.特段変わった眺めはなく,また御殿庭上,同中,同下といったちょっと感覚的には紛らわしい地名には要注意だ.まあ,ほぼ一本道なので迷うことは無かろうが.
御殿庭から暫く歩くと,登ってきた二人連れの男性に出会い挨拶を交わす.前年歩いたときは誰一人出会わなかったので少しほっとする.
さらに下り,終点の水ヶ塚バス停まで20分くらいの林に至ると,写真撮影中の女性に出会った.フィルムを久しく使ってなかったが,最近また再開したそうだ.ただ以前よく用いたリバーサルフィルムが手に入らなくなり....と嘆いていた.本格派にとってはなかなか大変な時代になったようだ.
11:20AM水ヶ塚バス停に到着した.次のバスは1:33PMなので2時間余りあるが,シーズン中なので昨年の待ち時間よりまだ何ぼかましだ.時間を潰すのに一苦労だが,周りを眺めているとごく狭い範囲ながらいろいろな花が咲いているのに驚く.写真のオダマキ(苧環)などは高尾山などより時期が随分遅い気がするが,標高が高いためであろうか?
バスは定刻でやって来た.富士宮口が始点で,三島駅に向かう.既に乗っていた登山客は数名居たが,ここで乗り込んだのは私一人で,やはり須山口ルートを歩く人は非常に少ないのが見て取れるようだ.
バスは三島駅まで乗るつもりであったが,途中御殿場線裾野駅の近くを通過する旨案内があった.御殿場線の方が東海道線より近道なのでここでバスを降り,電車に乗り換えることにした.
裾野駅はいかにもJRローカル線といった趣の駅だ.乗った電車は両側のシートの間が普通の電車より少し広いように感じられたが,気のせいかな....?途中の駅での停車時間が意味もなく(いや,きっとあるのであろうが)長い場合がある.御殿場線は単線かな...?
松田駅で運賃の安い小田急に乗り換えた.裾野駅ではSuicaで改札を通れたのに,松田では人手に頼っていた.ちょっと不思議というか...まあ,こうして無事小田急,さらに東急と長い道のりを乗り継いで帰宅した.天気が良かったしなかなか楽しめた.
下は今回の富士山道中で撮った写真.
須山口登山道は静かな林の中を通るなかなかすばらしいコースである.でもなぜかここを歩く人は少ないようで,有名な4大ルートに比べると著しく知名度が低いようだ.少し歩行時間が長い,バス便が悪い,道幅が狭い....などあるかな~.でもとても空いているので今後は増えるかも知れない.