この石林編では,2016年2月22日昆明見物の後,バスで石林を訪れ,昼食をいただき,石林湖,大石林景区,小石林景区を見物したときの写真にキャプションを添えて載せました.
右のGoogleマップスクリーンショットで,右の青いマーカーが石林のロケーション.
別窓で大きなGoogleマップを開くG78路で東に進む途中,屋根に月と星のイスラムマークを掲げた建物が見えた.ミナレットが見えないがモスク(中国語で清真寺)であろうか.このマークとその下の球形まではイスラム風であるが,建物本体や屋根はどちらかと言うと中華風だ.
回族は中国各地広く900万人ほど分布し,雲南省だけでも60万人が生活しているという.回族の皆さんはあまり集中せず,漢族と交じりながら生活しているケースが多いそうだ.従って普通中国語を話し,漢字で綴り,アラビア語系の言葉を話す人はごく限られているらしい.
雲南の少数民族は概して従順であるが,回族は1856年ころ清朝に対して大規模な反乱を起こしたことや,またMさんによれば,鄧小平の時代に反政府運動で首謀者が死刑に処された事件があるそうだ.
石林まで半分以上進んだか,トールゲートがあった.近くには高層建築が建ち並び,なおも建設工事中だ.
ほどなく古い村が見えた.斜面にかなり密集した住宅はレンガ構造か,それとも日干しレンガであろうか.
村の殆どは農家で,主に畑で作物を,少し家畜を扱っているのではなかろうか.ただし放牧は殆ど見かけないので,飼うとすれば畜舎であろうが.
やがて高速道は石林の出口に至った.石林らしさを盛り込んだ凝ったデザインのゲートだ.
さて高速道石林の出口を降りると,写真の際豊餐庁レストランにやって来た.この日のお目当ては私は初めてであるが『石林ダック』の名で知られるという昼食だ.そりゃ楽しみだ.
レストラン(大きい建物だが)なのに入口辺りでいろいろ出店があるのがいささかあやしい雰囲気でもある.
あやしい中の一つに果物屋さんもお店を出していた.もちろんおおよそ見慣れた果物であるが,少し右寄りの黄色に黒い線2,3本(トラのようだ)入った丸いものは全くの初見だ.ガイドMさんに訊くと『人参果』というトマト科の果物だそうだ.トマトの仲間と聞いて,殆ど勝手に味を想像し食べてみるに至らなかった.
肝腎の『石林ダック』を食べてしまった(過去完了形)後にシャッターを押した.ボケは進んだ.で,『石林ダック』は北京ダックと違って,皮だけでなくちゃんと肉の部分も出され,そして食するということが判った.北京ダックの肉の部分は一体全体どこに行くのか,ゴミ箱なら勿体ないと思っていたが,石林ダックはそうした懸念を持たなくて済む.
それと皮のパリパリ感も北京に較べて控え目なように思った.北京と雲南の気候の違いが生む調理の差であろうか.
普通暖かい石林も今年は異常気象で寒い.レストラン庭では大鍋に薪を入れ焚き火だ.非番のコックさんはそこに手を翳して暖を取っている.なんてこった.とにかく今年は例を見ない天気の悪さ,寒さ,ということなのだ.
石林ダックの昼食後,私たちのバスは石林に進んだ.石林風景区入り口にはこのような案内図が掲げられていた.現在地は写真上の入り口で,カートで風景区上客站まで行き,水色の石林湖周辺を歩き,薄茶色の大石林景区を周り,黄緑の小石林景区を歩く予定だ.
別の看板の石林歴史によると,前雲南省主席龍雲氏(1884-1962)がここを調査し,奇観に驚き,そして感激し,漢字『石林』の二文字を充てたという.この二文字は後に大石林景区の岩に刻まれ,後で眺めることになる.(個人的には,素晴らしい自然の岩に刻むのはどうか,標識で十分と思うが.....)そして1931年,公式に石林公園が設立され,管理事務所や遊歩道整備がスタートしたという.
先ずは『電動車停車区』から電気カートに乗り,風景区上客站へ向かう.いつも混み合うという電動車停車区は春節直後のため空いているようだ.
カートが風景区上客站に着き,緑地を歩いた.杏とか,桃のような系統の果樹であろうか,白やピンクの花が咲き始めている.
石林公園は有料で,ゲート(景区大門)脇にチケット売り場が並んでいる.
手前築山にはパンジーが咲き乱れているが,よく見ると無数の鉢植えを並べただけで,ちょっと残念との評があった.メンテナンスがやり易くいい点もあると思うが.
ゲート(景区大門)をくぐった先に石林湖が見えた.湖に,にょきにょき生えた岩はたしかに奇観だ.岩塔にはスプラインシャフトのように溝があり,その溝は滑らかだ.
石林風景区の平均海抜は1750mだそうだが,この石林湖はじめ幾つもの湖があるようだ.つまり水分も豊富という訳で,それが隆起した石灰岩層を侵食して,石林を形成したのであろう.
およそ2億7千万年前(想像を超えるが),石林の大元は海底にあって,海洋生物の遺骸が堆積したことにより,厚く石灰岩層が作られたそうだ.現在見える岩塔の横方向の線や窪みは,長い期間で海洋生物が変化したり,地殻変動などで岩石成分に違いが生じていたことが原因らしい.
その太古の石灰岩層が隆起し,大地となり,そして数千万年に及ぶという雨水,地表水などで侵食され,また風化され,カルスト地形(Karst)が形成されたそうだ. 石灰岩層の厚み方向,また横方向には成分の差があり,また雨水の注ぐ方向性から,岩が所々横スジの入った林状になったそうだ.
立派な岩塔が林立する大石林景区にやって来た.確かに解り易いが先ず大きく刻まれた『石林』二文字に違和感を覚える.端からネガティブな感想ですみませんが.
岩は他エリアのカルスト地形,例えば少し東の桂林とか,トルコのカッパドキアとか,ベトナムのハロン湾とかと較べてシャープな岩塔で,見た目は硬そうな岩に感じられる.感じだけで実際どうなのか判らないのだが.....
石林は石林イ族(Yi)自治県にあって,イ族の皆さんがガイド,貸衣装屋さん,カメラマンとしてここで働いている.ガイド,貸衣装屋さんはイ族伝統衣装を纏い,後者はさらに写真のようにカゴを背負っている.
貸衣装を纏い写真を撮るのは中国各地で見られる慣わしで,女性用だけでなく男性用衣装もちゃんと用意されていることに感心した.私たちのメンバーの方(女性)何人かも身につけて,楽しそうだった.
右側菅笠女性二人はカメラマン.イ族貸し衣装を纏った客を撮り,プリントを販売する.写す前に細かくポーズを指導しており,プロ仕上げが期待できそうだ.中には勝手にスナップ写真を撮り,プリントし売り込んでくる商売の人もいる.女性は要注意かも.
写真左から1/3に見える三角屋根は展望台『望峰亭』で,この後ここに上る.
剣を並べて立てたような石柱だ.緑の地面との対比で美しい.
侵食で折れた石柱先端が,落下する途中,2つの石柱に挟まれてそこに留まった状態.ちょうどこの下にトレイルが続いているが,北京故宮の玉座上の装飾天井を思い浮かべ,まさかとは思いながらも意識して通過する.まあ,何れそのうちに落下するとは思うが....
折れた石柱の断面が間近に見えた.ブローチング加工されたスプライン(いやセレーションか)シャフトのように実にくっきりシャープな溝が刻まれている.いや~不思議だ.
展望台『望峰亭』からは,周囲が石林で囲まれている様子がよく見える.
なお雲南省にはこの石林風景区公園以外に,この100倍くらいの面積に,こうした石柱カルスト地形エリアが分布しているそうだ.実際高速道を走っているとき,こことは別の場所でも石柱が見える場所があった.
下りは上り路とは異なるルートが設けられ,重複しないようになっている.階段もよく整備されている.
下り始めて間もなくのところに手で触れると何かいいことがある,といった岩があり,ピカピカの跡があった.
上に載った石の重心が,下の台石左側エッジの左になると落ちる.ここから見ると殆どその段階に来ているような.....さていつまで持つやら.
大石林景区を見物し,下に戻った.広場にはイ族の楽器や,刺繍などの民芸品売店があった.
イ族は人口780万人ほどで,中国政府公認56民族の中で8番目に多い民族という.元々南東チベットから四川を通り雲南省に移住してきた経緯があり,現在はここ雲南に最も多いそうだ.言語はイ語で,イ文字を有し,ビルマ語と近い関係にあるそうだ.
宗教は精霊信仰だが,道教や仏教の影響を受けているそうだ.かつて奴隷制度を有していたそうだが,多分今はないのであろう.
小石林景区の手前に,蓮花池(lotus flower pond)と表記された池があった.水面が赤くなるほどたくさんの鯉が泳いでいる.
蓮花池の畔には,蓮花の形の岩があった筈だが.....写っていなかった.
3本弦で三味線と同じような楽器だ.共鳴胴が単純なぶった斬り円筒であるところが潔い.
小石林景区入り口辺りに来た.光線の方向も良く,緑の芝も美しい.
小石林景区を歩くと小さな池が現れた.向こう側畔には刺繍のイ族女性がいた.実演展示販売の品であろう.
小石林景区の石柱は表が大きな円弧で抉られているのが多いように見える.大石林景区では鋭い剣を束ねたような石柱が多かったが,ここ小石林景区では丸太舟,若しくは並んだ丸太舟のような形態が目立つ.
右側大石柱もそんな一本で,根本は心許ないほど細く侵食されている.
上写真大石柱を横から眺めたショットだ.いや~ものすごく細いよ.これこそいつ倒れてもおかしくない基礎の細さだ.
石林は数千万年前に海底が隆起し,地表に出てから侵食,風化が始まったそうだが,その隆起時に形を維持したままの巻き貝だというのがあった.そんな長い間元の形を維持したまま今日に至ったというのはすごいですね.なおこうした貝殻の化石は前年ウユニ塩湖のインカワシ島でも見かけた.ただ数千万年という長いレンジの話かどうかは判らないのだが....貝殻は自然環境では耐久性が高いのであろう.
なお石林は,2007年にユネスコ世界遺産『中国南方カルスト(South China Karst)』(自然遺産)として,登録されている.