ペルセポリスから風葬(鳥葬)のための沈黙の塔が残るヤズドに向かった.
風葬が行われた沈黙の塔と周辺の写真.ゾロアスター教徒は,火や水,大地を神聖なものとみなしたので,死体でそれらが汚されることを嫌った.それ故,岩山などの上に遺体を置き,鳥に食べさせたり,自然の乾燥に任せて処理をした.写真のように,ここヤズドの丘の上にとても大きい円筒が2つある.これがゾロアスター教の遺体安置所=風葬の場で,ササーン朝時代からつい50年程前まで使われていたようだ.遺族が遺体を安置し,悲しみをこらえて無言のまま立ち去ることから「沈黙の塔」と呼ばれるようだ.だが数十年前からハゲワシが少なくなったため風葬は行われなくなったようだ.また法的にも現在は禁止されているようだ.チベットやネパールの一部で行われている鳥葬と異なり,遺体にメスを入れることなくそのまま葬儀台の上に安置しハゲワシに処理させるそうで,風葬といわれるそうである.終わりの写真は地下水路カレーズの水路に付着した石灰の塊.この写真ではよく判らないが......
ヤズドにはいくつかのゾロアスター教会があるそうである.その中でこのアタシュカデ寺院はもっともよく知られているそうだ.ガイドのムハマドさんによれば,ゾロアスター教は一神教であり,キリスト教やイスラムより古いと,誇らしげに説明されていた.寺院正面にはゾロアスター教の神アフラマズダ(善神)が掲げられている.ペルセポリスで見かけた石に刻まれたレリーフと同じデザイン.
聞きかじりのゾロアスター教について要約すると,紀元前16~12世紀(一説には紀元前6世紀?)ペルシアの預言者ゾロアスター(Zoroaster)の創始した宗教.善神をアフラマズダ,悪神をアフリマン(アングラマイニュ)と称し,勤倹力行によって悪神を克服し,善神の勝利を期することを教旨とし,善神の象徴である太陽,星,火などを崇拝.アヴェスタ教典を奉じ,古代ペルシアの国教として栄え,中国には南北朝の頃伝来,拝火教と称す.7世紀になると,イスラムの興隆とともに急速に衰退した.善と悪の二元論を特徴とするが,善の勝利と優位が確定されている宗教であり,その意味で世界最古の一神教であるとも考えられる,とのことだ.現在のイランでは,ヤズドとケルマン地区を中心に数万人の信者が存在しており,ヤズドでは30万人の人口中約1割がゾロアスター教徒だとされるようだ.
写真は紀元470年(ゾロアスター教の興った時期からすると,大分後期のこと)以来燃え続けているという聖火.ガラス越しで見える.拝火教とも称される所以の火だ.
ゾロアスターはギリシャ語発音のようであるが,ザラスシュトラが本来の音に近いようだ.ゾロアスター以前は,多数の神が信仰されていたがアフラマズダ(善神/賢明なる神)だけが唯一至上の神である,つまり一神教の概念を説いた.また儀礼や生贄よりも日常生活でどのような行動をするかが重要であると,説いた.
ネットで見たサイトから年代別に預言者/開祖を並べてみると下のようになる.
預言者/開祖 | 年代 | 宗教 |
アブラハム | BC1600~BC1300年ころ | ユダヤ教 |
モーセ | 同(BC1600~BC1300年ころ) | 同(ユダヤ教) |
ゾロアスター | BC1500~BC1100年(BC500?) | ゾロアスター教 |
釈迦 | BC565~BC485年ころ | 仏教 |
イエスキリスト | BC7~A30年ころ | キリスト教 |
ムハンマド | AD570~AD632年ころ | イスラム教 |
肝腎のゾロアスターの年代がはっきりしないが,少なくともキリスト教,イスラム教には影響を与えたのは確かであろう.
旅行当時はハタミ大統領(セイエドモハンマドハタミ師/イランイスラム共和国大統領1997~2005年 )の時代だった.2006年現在,マフムード・アフマディーネジャード大統領(2005年 -)に替わっている.核開発の権利を欧米諸国に対して強硬に主張し,実行に移していることで今現在注視されている.たまたまバイクに跨って現れたこのゾロアスター寺院の工事関係者の顔立ち,アフマディーネジャード大統領の顔の雰囲気と似ている.....ように思う.イラン人は少なくとも筆者から見ると,失礼ながらこの手の顔はイランであちこちで見かける,
下は,ヤズド市内宿泊したアザディホテル周辺,ゾロアスター寺院周辺
下は,ヤズド市内や近郷,人気のクッキー店などの写真.住宅に自然空調のための塔が見られる.