このソゴン川畔編ではタバンボグドBCを去り,オロスラ渓谷を越え,北ゲートに下り,そこからは4WDでソゴン川畔のキャンプサイトまでドライブしたときの写真と記事を掲載した.
夜半から風が強くなり,未明の3時頃轟音に目を覚まされる.強風はテントを思いっきり叩き,テント内でも風を巻き起こす.2時間くらい続いたであろうか,風が収まると,今度はテントを叩く弱い音に変わった.雪のようだ.リュックに付けた温度計を見ると3℃でさほど寒い訳ではないが手洗いにテントを出るのは億劫......でも仕方ない,出てみるとやはり雪だった.
その後シェラフに戻り,明け方に朝食のためテント外に出ると少し雪が積もり,なお降り続いていた.
朝食後,雪が降りしきる中,下山を開始した.暫くは登って来たときと同じツァガーン渓谷沿いに下り,その後北のオロスラ渓谷(名称が不正確かも知れない)方向に足を転じた.
最初かなり強く降っていたが,暫くすると勢いは弱まり,部分的に青空も覗くようになる.こうなると白雪が陽に輝き,なかなかきれいだ.「モンゴルでは一日で四季がある」とガイドTさんが話したが,正しくそんな印象を受けた.
下は,タバンボグドBCを去り,ロスラ渓谷方面に歩いたときの写真
ベースキャンプを出て2時間くらいすると,オロスラ渓谷を見下ろす丘の斜面を巻く位置に立っていた.雪は止み,青空も広がり,氷結した湖が雪で覆われ白い平面を見せ,アルタイの峰々も輝いていた.
高度を下げたことと,天気が良くなったことで雪はどんどん無くなっていった.さらに下ると小川の流れる湿地帯に至った.ここで休憩しランチをした.
小川ではあるが渡渉するには結構大変そうだ(←軟弱だな~).そんなところにライフルを背負った地元のハンター2人が馬で通りかかった.文字通り“渡りに舟,いや馬”と云う訳でガイドTさんが交渉し,我々は馬で渡らせてもらうことになった.ハンターはカザフ族でモンゴル語や英語はあまり解さず,一方ガイドTさんは殆どカザフ語が話せない.手振り身振りで苦労してもらった.渡った後,Tさんが当地のマナーに従いハンターにタバコを差し出す光景も見られ印象に残った.
ところで,この辺でハンティングの対象はタルバガン,狼,キツネ....といったものらしい.タルバガンは前述の如く大変美味であるが,イスラムであるカザフ族にとっては豚と同様に不浄なものとされ,従って本来は食してはならない.では忌避すべきものをどうして?と思うが.....そこは多少教義を弾力的に運用している,というのが実態だそうである.
下は,オロスラ渓谷辺りの風景
オロスラ渓谷でのランチと川渡りの後,天気が良くなり雪も無くなったトレイルをどんどん下った.途中,今朝そのベースキャンプを発った聖山タバンボグドを望む丘に達した.そこにはオボ(石塚)が築かれ,五色の布が巻かれ,食べ物のお供えがしてあった.そしてウランバートルから来たという4人(男3,女1)のシャーマンが頭を聖山に向け大地に仰臥し天を仰いでいた(写真左).
その後起きて座り,聖山に向かいお祈りを始めた.お経とか言葉を発することはなく頭を垂れる簡単な形式で,しかも十分リラックスした姿勢だった(写真中).
お祈りが終わると,同行旅行社のガイドが普通の人並みに記念撮影を行っていた(写真右).
記念撮影を終えると,真新しいトヨタランドクルーザーで去って行った.タバンボグド周辺にはこうしたオボが要所に在り,シャーマンの人たちは順次巡礼して廻るのだそうだ.
こうして幸いなことに,チベット仏教やここバヤンウルギー県に多いイスラムに加えてシャーマニズムが今に生きているのを垣間見ることができた.シャーマンには男女就けることや,装束や記念写真に納まる行為などは一般人とさして変わらないことなど,なかなか興味深い.
オボを少し下るとタバンボグド国立公園北ゲートがあった.これで今回のアルタイ山麓ハイキングは無事終了したことになる.ゲートの傍らには管理者用ゲルがあった.
テントや台所用品を運ぶラクダやスタッフを乗せた馬がなかなか到着しない.そこで管理者ゲルにお邪魔してお茶を頂くことにした.お茶はバター茶に少し似るも,チベットのそれと違って塩分が控え目なのがいい.管理者のご主人はウルギーに管理状況の報告書類を届けに行ったため不在とかで,奥さん(写真右側)と夏休みで帰省中の中学生のお嬢さんが居られた.また遊びに来ていた近所の子はちょうど帰るところであった.
管理者ご一家はカザフ族でモンゴル語や英語はあまり解さず,一方ガイドTさんは殆どカザフ語が話せないのは上述のハンターのケースと同様だ.と云うことで結構苦労していろいろ訊いてくれたのであった.
ゲルは広いカザフ式で,周囲には想いおもいに飾りつけたベッドが置かれ,壁には刺繍されたカーペットが架けられ,床もまた刺繍されたフェルトが敷かれている.外にソーラーパネルとバッテリーを備え,テレビやDVD(写真左側)が楽しめる.また中身は定かではないが,スーツケースやトランク状のケースも積み重ねられ,素早い引越しを旨とする遊牧民の雰囲気も強く感じさせてくれた.
下は,北ゲートまでの写真
北ゲートでは3時間費やした.本来到着している筈の荷役ラクダとスタッフを乗せた馬がなかなか到着しなかったためだ.実は我々が出発したタバンボグドBCでは雪が一層強くなり,テントをたたんだり,ラクダに積み込むのが儘ならず手間取った.ようやく積み込み出発し,我々と同じトレイルを来たが,巻き道がホワイトアウトしており,1頭のラクダが足を滑らせ転び,積荷がバラけてしまった.転がった荷物を回収している間に,「これ幸い」と他の3頭のラクダが逃げた.トゥバ族のラクダ引きは何とかそれを引き戻してきたが,合わせて3時間ロスしてしまった,という真相が後に明かされた.ただ幸いなことに,転んだラクダは擦り傷程度で済んだのが不幸中の幸いであった.
ラクダの荷物が無事届くと,別のルート(この後下る道)から登り,待機していた4WDに積み替えられた.モロッコやシナイ半島観光地のラクダ引きと違って実直そのもののトゥバ族ラクダ引きの皆さんとはここでお礼を言ってお別れした.帰りは空荷で雪も融けていようから問題なく帰宅したであろう.ご苦労さまでした.
タバンボグド国立公園北ゲートからは2台の4WDで,ソゴン川(Sogoog Gol)の流れる幅広い谷間(広く長い盆地のように見える)を下る.
途中少し雪を被った山(名前があるが失念)を背に美しい水を湛えた湖に出合った.五色沼とか九寨溝とかのようで,加えて周りが広々している感じで素晴らしい.
水の豊富な場所を探してテントが設営された.水が豊富,即ち草も豊か,故にそれを食するタルバガンも多く棲息している.テント近くにもタルバガンの巣穴がいっぱい掘られている.
ハイキングも無事終了,またこの日でキャンプも終わり,と云うことでツアリーダーAさん特製のちらし寿司,酢の物,シェフ肝煎りで腕を振るったビーフシチュー,さらにワインとウオッカを頂いた.いや~最高に美味しかった.
下は,ソゴン川畔キャンプサイトまでの眺め
無事ハイキングは終わり,明日は4WDでウルギーまで下る.