このツァガーン渓谷編ではいよいよ歩き始め,シベートハイルハンを出て,岩絵(『モンゴルのアルタイ山脈の岩絵群』(Petroglyphic Complexes of the Mongolian Altai)として2011年世界遺産に登録された)を眺め,タバンボグド山群を先方に眺めながら湖畔に至りランチとし,午後はツァガーン渓谷の高巻き道を歩きやがて川を渡り,ツァガーン渓谷脇のキャンプサイトに至るまでの写真と記事を掲載した.
シベートハイルハン麓のキャンプサイトを畳んで,同山の南側を巻くように歩き始めた.天気も良く多少ガレたところもあるが快適なトレイルだ.
なお次のキャンプ地までは4WDが通ることのできる道があり,テントやキッチン用具とキッチンスタッフの皆さんは車で先に進んだ.
下は,シベートハイルハンのキャンプサイトとそこを出て暫くの間の眺め
シベートハイルハンの南を巻くトレイル脇を通過すると岩に描かれた絵を見かける.放射性炭素年代測定に依ると5,000年前~2,000年前に描かれたもののようだ.鹿やアイベックスなどの動物が多く,この写真左下のように弓を持つハンターなども見える.この地方は作物は殆どできないので専ら狩で食料を得ていたのであろうか?
これらの岩絵は『モンゴルのアルタイ山脈の岩絵群』(Petroglyphic Complexes of the Mongolian Altai)として2011年世界遺産(文化遺産)に登録されました(2012/1/3に追記)
岩絵を見物していると二人の青年が馬でやって来た.二人はラクダ使い(キャメルマン)で,明日から4WDが使えなくなる替わりにラクダで荷を運ぶ手筈で,その打ち合わせでやって来たのだそうだ.実は昨夜テント場まで来てもらってガイドTさんと打ち合わせの予定であったのだが,テントを見つけることができなかったのだそうだ.確かに広いひろ~い平原で,ケータイも繋がらないそうだし無理もなかろう.
トゥバ族青年のファッションはモンゴルの伝統的民族衣装デールにブーツだ.民族毎に多少の差異があるそうだが,長い丈,長い袖のローブで,チベットのチュパと似ている.デールの襟元が中華風により閉じているようにも見える.
下は,岩絵とその辺りの写真
岩絵のあるエリアを越えて暫く歩いた.先方にアルタイ山脈の白い峰が見えてきて,足元を見るとエーデルワイスが咲いていた.花の名はなかなか覚えられないが,白い綿毛が特徴的なこれは大まかに“エーデルワイスの仲間”と判別できるのがいい.
アルタイ山脈の中でモンゴル最高峰を占めるタバンボグド山群が見えてきた.写真左後ろ側がウイグル(中国),ロシア,モンゴルの3国境界に頂を持ち,モンゴル最高峰のフィティン峰(Mt. Fitin/Khuiten:4,356m)だ.
フィティン峰の手前,よく見ると重なって見えるのがイーグル峰(Mt. Eagle),右の黒いのはマルティン峰(Mt. Martin:4,021m),フィティンとマルティンの間に白くなだらかに横たわるのがフレンドシップ峰(Mt. Friendship)と呼ばれるそうだ.
なおフィティン峰は1956年,モンゴル隊が初登頂,以降ヨーロッパや日本の登山隊が登っているようだ.
エメラルド色のきれいな水をたたえた湖の畔に着くと,先に到着していたキッチンスタッフの皆さんがコーン型のキッチンテントを建て,ビーフのスープにサンドイッチの準備をしてくれていた.このテントはミニチュアゲルのような形態で,翌々日巻き起こった強風にも耐えた.そこで調理するシェフBさんの料理はいつも美味しく最高なのだ.
肉が主食のモンゴルでの価格をガイドTさんに訊いてみた.主婦ではないし,US$に暗算で換算したので多少誤差があるかも知れない.
種類 | 1kgの価格 | 註 |
---|---|---|
ビーフ | US$4 | |
マトン | US$3 | |
ヤギ | US$2.5 | |
チキン | 聞き漏らした | |
ポーク | US$8 | カザフ族はイスラムで食せず |
馬肉 | US$2 | 特にカザフ族は好むようだ |
タルバガン | ウランバートルではとても高価だそうだ |
草原で,豚と鶏はあまり見かけない.なのでそれらの肉は少なく,高価になるのかも知れない.
ちなみにモンゴルの5大家畜は,牛,馬,羊,山羊,ラクダで,各遊牧家族毎に主体とする家畜を決めているそうだ.主食ともいうべき羊肉の需要がやはり多く,全家畜頭数の58%を占めるそうである.
下は,湖畔に至るまでの写真
湖畔のランチを済ませ,ツァガーン川を遡上するように右岸の高巻き道を進んだ.途中ツァガーン川に注ぐ支流を越えたり,所々土の穴から這い出たタルバガン(モンゴルマーモットで,チベットのマーモットや北米のプレーリードッグより一回り大きいようだ)を眺めたりしながら西に向かった,
今日の目的地はツァガーン川左岸の畔.なので対岸に渡る必要があるのだが,橋はないし,流れは速く深そうだ.そこで先に到着していた2台の4WDに乗っかって渡ることになった.この4WDはとても強力には見えないし,それにかなり使い古されているが.....実際はかなりパワーがあり,渡り切った.車軸はコイルバネではなく貨車のような板バネで,トヨタランドクルーザーなどと比べると甚だ不格好ではあるが,ロシアでは準軍用車として供されているそうで,なかなか頼りがいがある.
下は,ツァガーン川を渡るまでの眺めあれこれ
氷河から流れ出てこの辺りを通過するツァガーン川はミルク色で,さほど深くはないが一応渓谷を形成している.今度はその渓谷の左岸を暫く遡るように歩いた.やがてタバンボグド国立公園中央ゲートがあった.ゲートには一応手動の遮断バーが備えられ,管理者(レンジャー)用ゲルが建てられていた.
私たちのテントはそのゲートをくぐって直ぐ,目と鼻の先に設営された.対岸を眺めると,遊牧民の白いゲルが2,3戸見えて,夕方になるとどこからやって来たのか,たくさんのヤクが川縁に集まっていたのが不思議に思えた.翌朝起きて眺めると,これらのヤクは既に居なくなっていた.黙っていてもちゃんと草のあるところに出勤するようで,感心かんしん.
近所,とはいってもどこからか馬でやって来たのであるが,姉弟の二人が手造りのフェルト製品を拡げて見せてくれた.キッチンスタッフやドライバーの皆さんが話しかけるが,はにかんだ様子であまり商売っ気がない.尤もスタッフはガイドTさんも含めて殆どカザフ語を解さないし,若い姉弟はカザフ族であろう,モンゴル語があまり自由でないようで.....そんな要因もあろう.
私たちもここで買い物すると荷物になるのであまり食指も動かない,ごめんね.さて幾らか売れたのであろうか?この辺ではなかなか日が暮れないのだが9時は過ぎていたであろうか,馬に跨り,駆けて行った.弟の方はまだ小学生であろうが,なかなか見事な手綱さばきだった.なお,モンゴルの学校は6~8月の3ヶ月間は夏休みで,大きな村や町のアパートや寄宿舎から実家に戻っている子が多いようだ.
下は,ツァガーン渓谷畔のキャンプサイトでの写真あれこれ
筆者は甚だ不案内であるが,今回のツアーのウリの一つは花だ.アルタイ麓の春~夏は短く,多くがこの時期一斉に花を咲かす.標高が高く,厳しい気象環境下にあるので,自ずと丈の低い高山植物系が多いようだ.水の多少,土質,傾斜の大小....などで微妙に植生が変化しているのがおもしろい.
下は,ツァガーン渓谷キャンプサイトで眺めた花の数々
さてこうして長閑なハイキング初日は終わった.明日も晴れて欲しいな~