烏鎮Wuzhen

江南の地図

烏鎮は浙江省桐郷市に属するそうで,人口1万人の小さな街だ.唐代の860年頃,鎮として設置され,最盛期の人口は10万を超えたという.だがその後は衰退の一途を辿ったようである.近年,上海から140km,杭州から80kmといった大都市の日帰りツアー圏にあるため観光客がどんどん増え,その数年間百数十万人に上るという.江南はこれまで廻ったどの街も水郷の里的景観を有するが,烏鎮は発展から取り残されたのが幸いして古い状態がよく保存されている,というのが理由らしい.自分もその一人であるが,日本からの観光客も多いようだ.

烏鎮水郷と橋

水郷と橋

水郷では橋がいたるところにある.船が通過できるようにするため橋脚位置や橋桁の高さを所定サイズに維持する必要があろう.また構造力学的条件を満たし,建設コストの制限もあるだろう.するとこんな半円形の橋ができるのであろう.静かな水面に反射して真円として見せるところも狙いであろうし,なかなかいいと思う.ただ実際歩いて渡ってみると,勾配がきつく,歩行者にとってはあまり快適とは言えないようだ.


烏鎮の住宅街

鎮と烏鎮

鎮(ちん/zhen)は郷クラスの行政区,都市よりも小さい人口(農業以外に従事)集中区域で,上下水道,電力供給などの公共インフラや教育,飲食,娯楽,市場などがまとまって集中したところの意のようだ.古くは南北朝時代,一般には晩唐から五代十国にかけて至る所に鎮が設置されるようになり,現在全中国で2万近くの鎮が存在するようだ.烏鎮はそんな鎮の1つなのであろう.ただ,烏鎮はカラスの鎮の意,かの文化大革命の嵐に中,赤は革命=共産党=正義の色,カラス=黒=資本家=悪党,これは許せない,改名しよう!といったことがあったとか......

プランターや洗濯物,製作中の干し肉(豚肉が多いようだ)が下がる烏鎮の住宅

生活

ベランダにはプランターや洗濯物,製作中の干し肉(豚肉が多いようだ)が下がり,水辺に下りる階段で洗濯をしている光景が見られる.調理のごみを川に投げ込む場面を見ることもある.あくまで実生活の場なのだ.


粉屋さん

藍染めのクロス,石臼,逆さ「福」,漢字の看板,時代劇の一場面のようで興味深い.ただ,名札の「1」は何であろう?謎だ.看板の黒芝麻紛は黒ゴマ紛,芝麻炒米紛はゴマ入り煎り米紛であろう(多分),だから粉屋さんに違いなかろう.


下は,いろいろな烏鎮の写真

烏鎮の写真
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石畳の道

石畳の道

木造建築が両側に建ち並ぶ石畳の道は情緒がある.日本の明治村,大正村の趣だ.ただ決定的に違うのは,日本のxx村はテーマパークであって,ここ烏鎮は居住者が実際に生活し,街並みをそのまま保存していることだ.ユネスコの世界遺産に照らせば,前者は登録されることはなく,後者は登録必要条件の1つを満たしているということになろう.


藍染め工房

藍染め工房

烏鎮の藍染めもよく知られているらしい.高い物干し竿から下がるたくさんの染め上がった布が風になびいていた.ここは一応工場となっているが,どちらかと言うと博物館の役割が大きそうだ.まあ,連日大量の観光客を入れていては操業に差し支えるであろうから見物用は分離した方がいいだろう.糸を紡ぐ作業や機織作業,ステンシルでのレジストプリント作業,染料浴での染め作業などを実演して見せてくれる.その他の藍染め行程で使われるツール類や資料が展示されている.一般にこういった場所では,最後に販売室があって,強力に売り込まれるのが通例,と覚悟していたが,そんなことが全然無く,勝手な予断ですみませんでした....と思った.

飲み屋

飲み屋

大きな瓶に入った烏鎮の地酒の三白酒などを並べている.飲み屋というかバーというか...料理はあまり出さないらしいし,テーブルもあまりない.イギリスのパブの感覚に近いような気がする.ところで地酒の三白酒は,話に聞いただけであるが,もち米100%を原料としアルコール度数55度,メチャ強い!の蒸留酒で,昔ながらの蒸留釜を用いる製法,つまり少量生産で造られているそうだ.なのでここでしか買えないらしい.


白いうだつ

白いうだつ

烏鎮は1kmほどの狭い範囲に家屋が密集して建てられている.だから火事に対する延焼防止は大事であろう.防火壁の漆くいで固められた白いうだつが建物の境界に設置されている.黒い屋根に対比して目立つ.目立つと言えば,よく比喩的に使われる「ウダツが上がらない」を広辞苑第5版で引くと,出世ができない.身分がぱっとしない.富裕の家でなければ「うだち」を上げられなかったことから転じたといわれる,と述べられている.だから中国でも,日本と同様うだつはこのように目立つ方がいいのだろうか?


下は,さらに烏鎮の写真

烏鎮の写真
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烏鎮近郷

烏鎮近郷

保存された烏鎮の街を出ると,江南の他都市同様新しい住宅街が広がっている.さてこれからは上海に戻って,市内見物だ.



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