このトンサ編では,2016年6月10日,ジャカルのホテルを発ちキキラ峠を越え,そしてヨトンラ峠を越えてトンサに至り,ここでトンサゾンとトンサの街を見物し,トンサの宿に落ち着いたときの写真を載せました.
ブムタン谷のジャカル(丸印)からトンサに移動し,ここで観光した.
なおジャカル(ジェイカー)から北および南(南東)への赤い線は,午前中訪れたクジェラカンとメンバルツォへのトラックだ.
別窓で大きなGoogleマップを開くジャカルから出ると,しばしチャムカワ川(Chamkhar chhu)沿いをトンサに向け,進んだ.
チャムカワ川を離れると,上り坂に入り,やがてキキラ峠(Kiki La pass:2,860m)に至り,車でチョルテン周囲をコルラし,一旦降車した.膨大な数のダルシンやタルチョーを眺め,そして西進を継続した.
キキラ峠を越えると標高は高めながら,比較的広々した平面が多い地帯になる.写真は割りと珍しい平屋建ての農家で,柵で囲まれた牧場には牛が草を喰んでいる.殺生できないので牛は殆どミルクが目的だそうだ.ミルクはブータン料理に必須のバターやチーズなどに多く加工され,多用されている.
往きでも通過した現在のお妃様のご実家付近だ.特段異なる様子はなく,言われなければ判らないので周囲の農家と同じように土地に溶け込んでいる雰囲気だ.
背中にテキストや文房具を入れた(多分)リュックを背負い,下校中の小学生だろう.キラを着ているので下校中と判るのだ.ブータンでは同じ学年でも年齢は必ずしも同じではないそうだ.入学年齢は本人(両親)が選ぶらしい.
ブータンで二番目に長い1500m直線路区間になった.いや~気持ちいいですな~
道路脇の畑にはしっかりと木の柵や鉄条網が巡らされている.家畜や野生動物侵入を防ぐようだ.
夢の平原区間は終わった.この先は(悪夢の)崖道が待っている.特にウォンディポダンの先辺りまでは凄いのだ.
傍に農家は見えないが道では牛が遊んでいる.牛は,牛が天下の国インドやネパールより多いように感じられる.
UDさんには,殺生は地獄に落ちるから,ビーフはインドから輸入すると聞いているが.......こんなにたくさんの牛はここで自然死なのだろうか?それとも生きた牛がインドに輸出されるのだろうか....UDさんに訊いておくべきだったな~
厳しい道を進みヨトンラ峠(Yutong La pass:3425m)に到着した.道中央のチョルテンを時計廻りにコルラし,車を下りる.少し肌寒い.
ヨトンラ峠まではブムタン県,この先はトンサ県になる.
ヨトンラ峠からももちろん崖道は続く.ただUDさんの運転は確実なので安心だ.
暫く走り,道路脇に建物の並ぶトンサ(Trongsa)の街に入ってきた.トンサ市はトンサ県の首都でゾンが設けられている.キラの制服の子たちも纏まって下校中だ.
トンサの街は起伏とカーブが多い.街の途中でトンサゾン(Trongsa Dzong)を見下ろす位置になった.
こうして眺めるとゾンは傾斜地に建てられ,単純な四角形ではなく幾つかの棟が段違いに建てられているように見える.
道なりに行くとトンサゾン入り口ゲートになった.パーキングスペースもありここで停まる.ゲートにはゴの男性,正装なのでガイドか,がスマホで暇つぶしと見た.どこの国でもスマホで暇つぶし,最近はポケモンGoとかも一般的な光景になった.
さてトンサゾンの入り口ゲートを潜ると屋根付き橋があった.例によってトタン屋根以外は格調高い.下を流れるは小さな川だが,名称不明.
橋を渡ると,先には大きなゾンが建ち,右に大きな木(ヒノキだったか?),左に警備所があった.木の枝は一部枯れて落ち,人に危害を加える危険があるのだが....その枝を切り落とすお金がないという.確かに枯れ枝は相当高い位置で並のクレーン車,いやそんなものなさそうだが,では届きそうもない.
向かい側警備所のおまわりさんは暇なので,枝がいつ落ちるか,誰に当たるか.....楽しみにしているのだと,UDさんの解説あり.
ゾン入り口に向かうと,iPadのようなタブレット下げ,ゴ(Gho)にカムニ(Kabney)の正装で歩く男性が行く.ゾンは県庁でもあり,公務員は正装を求められるというから,多分県の職員さんでしょうね.
ゴは元々帯上に大きなたるみを持たせて結ぶので,たるみは大きなポケットとして活用されている(UDさんを見て).またカムニもどことなくズタ袋のように見えて仕方ないのだが....そんなことないでしょうか?
素の木材を活かした,落ち着いたデザインだ.
トンサゾンは前日見てきたジャカルゾンと同じで,市民も職員も,観光客もあまり多く見かけることはなくひっそりした感じだ.尤も職員は室内で職務中だからでもあろうが.
なお裁判所だけは,手狭になったためゾンとは別の建物に引っ越したことは前に触れた.
高いところは五層くらいある.県庁エリアと同じように落ち着いた色あいでデザインされている.
仏教エリアには大変多くの寺(ラカン)があり,100人以上の僧が所属するが,夏場は前日見てきたブムタンのクジェラカンに移動するそうだ.そう言えばクジェラカンには大きな僧坊が建てられていた.以前夏は涼しいジャカルで,冬はトンサで過ごす国王(初代および第二代)の時代があったそうだが,それと同じ考えであろう.
大きな目,ヒゲ,かぶりもの,手にした金剛杵などからパドマサンバヴァ(Padmasambhava,=グルリンポチェGuru Rinpoche)であろう.一番上に小さく描かれているのはブッダだと思う.
何れにしてもブータンではパドマサンバヴァが一番であるようだ.
左上から右回りに人間,天上,修羅,餓鬼,地獄,畜生の六道(六つの世界)を車輪のように生まれ変わる度に廻る(輪廻).但しその生まれる先はこの世で生きている時の行いで決まる,ということだ.UDさんからは,日頃行いが悪いと地獄に落ちます,クジェラカンのトンネルから抜けられません....とか,いろいろ親身になってアドバイス,いや脅されている.
ところでこの六道輪廻図を口に咥えているのはパドマサンバヴァの变化ではなく,死の神の忿怒尊,羅刹天ということだ.それはそれは恐ろしい神らしい.
トンサゾン中庭の壁にはマニ車が備えられている.長い年月廻されているようで,ペイントが剥がれてきた.それだけ功徳を授けてきたということであろう.
壁の門には例の吉祥アイコンがレリーフで記されている.中央は最も頻繁に見かける蛇を咥えたもの(何かは分からない),両側2番目はこれもよく見る白ライオンのようだ.これもかなり古くなってきたようだ.
現在は遠回りながらマンデ川(Mangde chhu)を越える橋が川上流側に架かり,私たちも往きで通り,また明日帰り道でも通る.ところが昔はそのルートはなく,写真のゾン脇の崖を下る急峻な道をマンデ川の底まで下り,そこを渡り,対岸の坂を上ったそうだ.
荷運びには馬も使ったそうだが,急坂でビビりそうだ.
なおこのルートは必ずゾンを通過しなければならず,関所としての役目も担っていたそうだ.
写真は崖の道から,マンデ川上流方面に目を転じたものだ.左山の斜面に白く伸びた東西横断道はマンデ川上流と交わっている.ここに橋が架かっている.バカバカしいほど遠廻りだが,仕方なかろう.
トンサの街は坂だらけだ.平らな道は全く無いと言ってもよかろう.崖っぷちに建っている建物も目立つ.
そんなトンサの街もまた他のブータンの街同様ラカンなど多い.必然的にお坊さんも多く住まうようで,時どき見かける.
商店街で立ち並ぶ3~4階建くらいの建物の一階部分は押しなべて商店だ.よく見るジェネラルショップ&バーなどに加えて,例えば靴屋さんなどの専門店も見える.そして多くはないが市民が行き交っている.
たまにしか客が来ないので手持ち無沙汰なのだ.そして店長はお店の前に座り,タウンウオッチだ.長閑な光景だ.
レンズを向け,いい?と訊いたらポーズをとってくれた.ありがとう.左の子は学校で頂戴した花マルかな?
皆同じデザインのキラなので,同じ学校か.でも中央の子は高校生くらいのようだから,別の系列校か?とっても仲良し姉妹,理想のブータン家族に見える.
坂の街トンサは道を進むと,それまで眺めていた商店街の裏側に廻り込む.こうして裏側を眺めるとブータン様式を保ちながらも,比較的簡素で,シンプルなデザインになっていることが判る.ただ少なくとも陸屋根はなく,切妻か寄棟,若しくは方形屋根になっている.伝統維持の規制があるのだろう.
斜面に小川が流れ,水力マニ車が廻っている.これはあちこちに見る眺めだが,傍らにバナナの木が生えている.
トンサの標高は2300mくらいで,ブムタンなどと較べて比較的温かい(いや暑いか)ことは,お坊さんの夏季移動などで理解できる.バナナもそういった観点で栽培可能なのであろう.
なおサボテンが多く自生するような温かい地方は,UDさんが言うに,コブラが棲んでいるそうだ.ただインド近くの南ブータンに棲息するキングコブラはいないという.キングコブラは普通のコブラを餌として丸ごと飲み込んでしまうそうだ.じゃ~普通のコブラ程度ならまあ出てきてもいいかな~と,何となく安心した.
天気がよくないせいか薄暗くなってトンサの宿Yanghil Resortにチェックインした.部屋にはトンサゾンを望むバルコニーが付いている.wifiもあり,広い浴室にはバスタブがあり,お湯は十分に出た.
暗くなりかけたバルコニーから望むと,トンサゾンと,手前に棚田が見えた.畑ではなく水田ということに改めて感心する.殆どのレストランで出してもらうのは赤いご飯であるから,きっと赤い米を植えるのであろう.
Yanghil Resortのレストランで初めてガイドUDさんがテーブルに現れ,一緒に食べた.内容はご覧の通りだが,UDさんは宗教上の理由かどうか,ビールを召し上がらないのは残念だ.
ここでは餃子が美味しかった.まあ無難だし.
さてYanghil Resortホテルで一夜明け,雨は上がっていた.庭の大きな香炉では香木が焚かれ,煙を上げている.それにしても大きな香炉で驚く.
ホテル庭には水力マニ車も備えられている.しかもよく整備され,スムーズに回転を続けている.他にも塀や壁には豊かな仏画が描かれており,タルチョーもたなびいているし,ホテルオーナーはきっと熱心な仏教徒に違いなかろう.
香炉を過ぎ,水力マニ車を脇に見て下るとレストランになる.陽射しのある窓際に座り,トーストにオムレツなどのごく一般的な朝食を頂いた.
少しして,隣のテーブルにはやはり一人の北欧かな?ヨーロッパ系の女性が朝食の席に着いた.明るい朝は気持ちがいい.
ホテル庭には日本でもよく見かけるこんな花が咲いていた.改めてよく眺めると赤い照々坊主といった趣だ.さて今日一日は晴れるかな~まあ,これまでも殆ど晴れてはいたが.
朝食後荷物をまとめてチェックアウトした.仏画の描かれた通路を出てランクルに乗ると,坂道を下り,東西横断道に出た.さて今日はこの後,冬の首都プナカと称される地に向かう.