インディジョーンズと運命のダイヤル

インディジョーンズと運命のダイヤル

7月6日「インディジョーンズと運命のダイヤル」を連れ合いと観に行った.公開から一週間経った平日なので十分空いていた.ストーリーは1969年NY市立ハンター大学考古学教室インディジョーンズ教授の退任日がら始まる.だがこの日はアポロ11号月からの帰還で大騒ぎ,寝てもいられない.学生も退任式に無関心,だが一人オックスフォードの友人バジルショウの娘で,インディが名付親,でもお金オンリーのヘレナショウが現れ大学の保管庫からダイヤルを盗むところから始まる.元よりドンパチものは好きなのだが,80歳になったというハリソンフォードの好演は見もので素晴らしい.ほんと感心しました.


ところで先ずは「運命のダイヤル」とは何ぞや?完全な絵空事(そう思っていた)か?でもこれまでのシリーズでアーク(ark,十戒を収める箱)を探したり,奪い合ったりするシーンが多かったがエチオピアシオンの聖母大聖堂には十戒の石版と容器アークが収められている,とされるそうだ(真偽の確かめようは....真,或いは部分的にでも真としておくのが面白いだろう).そしてここはFRBの大金庫のようにエチオピア政府が守っている.ということで「運命のダイヤル」も完全なフィクションではなく少なくとも一部は史実が含まれているのかもしれない.そのほうが圧倒的に面白い.

アンティキティラ島のマップ

ということでEdgeのchatGptに訊いてみることにした.すると,な,なんと1900年アンティキティラ島(マーカー1)近くで発見された沈没船(The Antikythera wreck)の積荷を引き上げ調べると古代ギリシア時代の遺物(アンティキティラ島の機械=映画のダイヤル,The Antikythera mechanism)が引き上げられたそうだ.マップで示すと下のような位置になる.地中海からエーゲ海に抜ける辺りですね.これは俄然面白くなりそうだ.同島は縦10.5km,横3.4kmの広さ20.43km2 の木の葉形で,紀元前4世紀~紀元前1世紀にはこの辺りの海賊が砦を築き活動の拠点としていたようだ.近年の調査では島の人口は44人でその1/3くらいの人は北端の港町に暮らすようだ.また野生ヤギが棲み渡り鳥の中継地でいろいろ渡ってくるようだ.

↑ マウスのコロコロで拡大/縮小,ドラッグで移動.マーカーのポイントで地名表示.

 

ところで話は飛ぶが,ギリシャの北に位置する北マケドニア(首都スコピエ)は少し前まではマケドニア旧ユーゴスラビア共和国(略称マケドニア)という名であった.だがマケドニアはあくまでもギリシャ国の一部で勝手に別の国の名としてはいかん,とギリシャに怒られ続けていたので改称したようである.また同国の国旗は旭日旗そっくりであるがK国からの文句は来ていないようだ.

閑話休題,紀元前4世紀~紀元前1世紀と言えば日本ではちょうど平和な弥生時代になろう.一方ギリシャ周辺では例えばアルキメデスなど圧倒的に先端科学を担う学者や技術者,美術家が現れ,多くの発見や発明,美術作品の創作がなされた.驚くばかりだ.


アンティキティラ島の機械

Jアンティキティラ島の機械(アテネ国立考古学博物館所蔵)

アンティキティラ島の機械(アテネ国立考古学博物館所蔵)

この機械は1901年ギリシャ人考古学者によってアンティキティラの沈没船から回収された(近年含めて回収できたのは半分の部品).ただ総回収品は極めて多数(大理石像,青銅像,陶器,鉄製品,鉛製品,宝石,コインなど)で調査は遅れたそうだ.この機械は紀元前 1 世紀頃に青銅で製作されたとされ,3層のパネルに多数の歯車やハンドル,ダイヤルが付いていたようだ(発見時は既にかなり欠落).最大歯車の径はφ130mmで223個の歯を持ち歯型はインボリュートやサイクロイドではなく正三角形(60°)というのは興味深い.

機械はいわばメカニカルアナログコンピュータで,暦の計算や,太陽や月,その他当時知られていた惑星の天球上での位置計算が行えたようだ.映画ではアルキメデス草案とされている,凄い.

因みに現代(とは言っても相当前だが)のアナログコンピュータはオペアンプにキャパシターやインダクターを含めた電気回路で,微分方程式などを一瞬で解き解をオシロスコープに表示する.その速さはあっという間で大いに感心したものだった.


運命のダイヤル年表

一般に言われている時間軸上の時代区分は大まかには下のようである.ただこうした区分は諸説あり,まあお話の一つ程度だ.

運命のダイヤル年表

運命のダイヤル年表

ところが映画ではダイヤルは時空の裂け目を見つけ出すというタイムマシン的とんでもない機能(完璧に嘘っぽい)を有するということだ.そして歴史改変を目論んでいたナチスのフォラー博士とダイヤルの奪い合いとなり取ったり取られたりのどんちゃん騒ぎが繰り広げられる.フォラーが手にした時大戦で敗色濃厚な1939年に戻ろうとしたがダイヤルが誤動作(後世何者かが腕時計を置いたためか?)し紀元前212年ローマ帝国侵攻時代に入ってしまう.ウクライナ侵攻のロシア軍のように大きな火器やタンクはなく重そうな甲冑のあのローマ兵だ.そしてインディたちはローマ兵に取り囲まれてしまう.フォラーたちもインディもヘレナも捉えられ,4発機で他に移送されるが,2発のエンジンは火を吹き墜落,幸い2つのパラシュートでインディとヘレナは助かる.その後小型機で安全な地帯まで逃れた.

旧友の娘ヘレナに現代に戻ろうと説得されるも断り,このローマ時代をリアルに研究したい....ということだ.仕方なくヘレナはインディを殴り,失神させマンハッタンの家に連れ戻す.ここで離婚寸前だったインディ夫妻は再びよりを戻すようなシーンとなり,そして幕となり,少しほっとさせられた.やはりバイク,馬,地下鉄,三輪オートリクシャー,飛行機,船,潜水などで暴れるシーンが楽しかった.


なおハリソンフォード映画では逃亡者なども大いに気に入っている.製薬会社と大物医師の癒着,薬効データの問題を指摘した主人公キンブル,彼を殺そうとする強盗,シカゴの風景や音,追う警部ただし事件の真相を熱心に探しつつ,....いずれも米国で実際におこりがちな要素いっぱいに作られている.妻殺しサイクスの義手を調べるため忍び込んだ病院のエレベータに乗ったとき,たまたまX線写真とカルテを腹に載せた患者の少年と乗り合わせた.X線写真をよく眺めた結果カルテの病名は間違っており,直ぐに正しく書き換えた.ここでは勤務医ではないのでバレそうになるが......このシーンには涙が出る.こうしたタイプの映画も激しいアクションは少ないので一踏ん張り作ってほしいとも思った.おしまい.

(2023/7/8記)


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