さてトズールから東に行くと間もなくショットエルジェリドという塩湖に出会う.塩というものが身近なものだけにこのような広大な”塩”,これはかなり感激的だった.
湖なのにこれを横断する立派な道が通っている.尤も湖と言っても殆どの部分は肉眼には茶色で,大地のように写る.地図で見ると湖幅は100kmくらいはありそうである.ところで湖とは言え,水分は少なく殆ど,つまり99%は固体の塩で構成されるようである.特に夏場は干上がって水分は殆ど無くなるらしい.
この日は冬であるに拘わらずバスの窓から数分間くらいであったろうか,このような二点鎖線状の蜃気楼が浮かんで見えた.どれくらいの距離に存在するように見えたか?「数kmくらい先に見えた」といった印象だ.しかし見えた方向は南で,地図で見るとこの位置からは100kmくらい先までは平面状の塩湖が続き,その先は砂漠のようである.やはり蜃気楼は相対的に「すぐそこに」見えるものなのであろうか.
念のため舐めてみた.確かにしょっぱかった.水辺が白い固体で,結晶化が進んでいるのがよく判る.また茶色の部分も土ではなく汚れてはいるが多くは塩のようである.雨が降って水の塩分濃度が下がれば若干溶解が進むのであろうか?
近くで見ると結晶が見える.さらに目を近づけると結晶の形が立方体であることがよく判る.やっぱりNaClだ~と感激する.改めて塩に関する資料を紐解いてみると,塩の結晶はイオン結合で成長する.塩(NaCl)は水溶液中ではプラスに帯電しているNaイオン(Na+)とマイナスに帯電しているClイオン(Cl-)に分かれて存在している.飽和溶液になると,NaイオンとClイオンがプラスイオンとマイナスイオンが引き合って交互に順序よく並んだ結晶となる.したがって全方向に一様に成長すると立方体となる.とまあこんなことだそうだが,なぜ立体状かはこれだけではちょっと.....
湖と称するにはやはり普通の人がイメージするに足るものがあった方が良かろう,というショットエルジェリド商工会議所メンバーの発案(この辺は勝手な想像,一応)であろうかこのような船が置かれていた.他に人物像とか,多分他所では落書きに相当するであろう個人の表現物があちこちに置かれていた.自分は単に記念写真でここで写っていた.遅くなったがショットエルジェリドの岩塩は工業用原料NaClとしてチュニジアの重要な輸出品目の1つであるそうだ.