ドゥーズから東に100kmほど進むと山間の村マトマタに着く.マトマタは穴倉式住居やかつてのスターウォーズ撮影で知られるという,さてどんなところか.
陽がかなり傾き,間もなく暮れる頃マトマタに到着した.この辺りは小高い丘陵にあり横からの光線が強いコントラストを生じ美しい.健気にも僅かな水源を活用すべくナツメヤシの樹が谷に疎らに貼りついている.何気なく眺めると,ナツメヤシもうまくこのような大変な環境に適応して生きているな~なんて思ってしまうが,どっこいそんなことはなく1本1本ちゃんと所有者が居て手入れされているのだそうだ.言われてみればこのようなシビアな環境だからこそ1本のナツメヤシの重要さは他所以上であることが理解できる.アラビアのロレンスでアリ首長が「砂漠では水は人の命より大切だ」と撃ち殺した理由を述べる場面を思い出した.
ここのご家庭を訪問させてもらった.前に立つのはこの家のおばあさんだ.先ず山の斜面の一部を削りとり,平面の庭とそれに垂直な壁面を作り,垂直壁面の横から大きな洞穴を掘った構造になっている.部屋は複数あり,独立しており,それらを互いに繋ぐ廊下はない.つまり他の部屋に行くには一旦前庭に出て新たな部屋に入るようになっている.熱容量の大きな大地をバッファとして利用しているので,気温の季節変動と日内変動の大きい砂漠性気候に対して,気温変動を大いに抑えるであろう.
ここが居間で白い漆喰の壁に絵やオブジェが飾られている.中央が産まれて間もないという3人目のお子さんを抱いたこの家の奥さん.左は同居の,う~ん誰だったか?右はツアー客.奥さんはこの後石臼で穀物を挽く様子を実演して見せてくれた.旦那は?と問われれば「毎日朝からカフェに入りびたりです」と答えておられた.イスラムの典型的な一面を如実に認識させてくれた.
この方がこの家で最長老のおばあさん.ベルベル人の伝統であろうか顔に刺青が施されている.この方以外顔の刺青を見かけなかったので最近はこの伝統は廃れつつあるのかもしれない.
ところでチュニジアの先住民族ベルベル人は紀元前にはヌミティア王国という国を築いたそうであるがアラブ民族の侵入が始まり,12~13世紀頃になるとこのような丘陵山岳地帯に逃げ込み,このような穴倉式住居を築き住まうようになったようである.
下は,マトマタの写真あれこれ
この穴倉はスターウォーズでホテル「シディドリス」の場面撮影で使われたそうである.そんなシーンがあったのであろうが今はまだ思い出せない.
世界的にヒットしたスターウォーズともなれば,覚えている人も多いだろうし,既に宣伝が行き届いた観光地として活用するのは悪くないだろう.自分の忘却速度はとても速くて困ったものであるが,黒い仮面とマントの男とか,光る剣とか...は,少なくともスターウォーズの名と共に思い起こさせてくれる.やがてシディドリスも思い出すであろう.
ここは現在もホテルとしても活用されている.このレセプションに料金表が掲げてあったがごくリーズナブルなプライスであった.ホテルは食堂や,質素ではあるが清潔なシーツのベッドを備えた客室などから構成されている.ただ客室はトリプルどころか8人くらいの大人数の部屋でドーミトリーの趣,若い方以外は尻込みするであろう.ちなみに私たちの宿泊したホテルクセイラや他のホテルが徒歩ですぐのところに在るのでハイシーズンでなければ宿泊には困らないのではないか.