アイトベンハットゥにたどり着く通りには沢山のお土産屋さんが並んでいる.ただこの時間,殆どのお店はまだ閉まっている.そんな中で,ベルベルデザインであろうかきれいな織物を掲げている店があった.
ここも茶色のカスバで,手前に川が流れ,前述のティフトットのカスバとそっくりな感じだ.まあ,カスバの日本語訳には「土の城」というのもあるそうだから,皆同じように見えても,まあいいかも.ところでここアイトベンハットゥは,ヒッチコックの3つの作品にも出現するそうで,その1つは「知りすぎた男」ということだ.以前見たときはアイトベンハットゥなんて知る由もなかったが,次に見るときは気づくであろう.
この川は今の季節(乾季)は干上がっていることが多いのであるが,つい先だってまで雨が降り続いていたためか,ご覧の通り,幾ばくか流れている.お陰でこの馬子やロバ子さん達もビジネスが可能になって喜んでおられるであろう.私は行きは馬,帰りはロバを選んでみた.先に対岸に到着し川渡りを眺めていると,ロバの場合つかまるハンドルがなく,たてがみを持つのか,首をしがみつくのか,....う~ん?
壁面のデザインを見ると,尖塔の付いた5角形の窪みが並んでいて,これ自体は飾りであって窓ではない.窓はそれら窪みの中のいくつかに小さく付いているに過ぎない.夏の暑い外気の遮断,夜間の温まった内部の断熱,構造力学的強度などでこうした小さい窓になったのであろう
壁は概ね日干しレンガ(アドビ)で,泥に裁断した藁を混ぜ乾燥させて作るようだ.つまり日本の土壁の材料と同じである.最近日本でも土壁を塗り込んだ本格和式住宅を建てる方が少し増えつつあるが,コストがかなり嵩む,と新聞に掲載されていた.屋根は木材の梁に葦かなにかのスノコで覆い,それに泥で固めた構造が多いようだ.壁や屋根は雨ですこしづつ表面が剥がされるので,時折新しい土を表面に塗り込むそうである.
下は,アイトベンハットゥ(前半)とその門前町の写真
ここ辺りから登りになっていた.ここに住んでおられる人々であろう,このようなちょっとしたお土産を並べたり,描いた絵を並べたり,お茶の用意をしておられた.
このカスバは自然の山の斜面に建物を貼り付けた構造になっている.どんどん登って行くとやがて見晴らしが開けてくる.ヤッホー!
ここに住む人はもうとても少なくなってしまったそうである.世界遺産だから大幅改修はできないし,かといって傷まないように維持は必要だけど資金供給は多くないし....そんな中でいくつかの家族が生活を送っているということだった.
そんな少ない家族の中で,ここムーサさんご一家が我々を内部に案内してくれた.この方が奥さんとお子さんだ.旦那さんのムーサさんは山岳ガイドと絵を描くのが仕事で,この日は残念ながら外出していて家には居られなかった.
ここは家の中で一番広い部屋,確か20帖くらいでリビングダイニングだったような.....ここで,一番小さい子を背負った奥さんと,ムーサ家のおばあさんに,お茶,そうミントティーを淹れてもらい,戴いた.
はた織り機に仕掛品がセットされていた.私たちが引き揚げたあとまた作業を継続するのであろう.天井は木材とスノコだ.他にキッチンや,家畜小屋が併設されていた.ロバは下の写真にあるように,家のお勝手口辺りにつながれていた.ロバはこんな坂道も重い荷物を背負って歩く.
下は,アさらにアイトベンハットゥの写真
道路標識かアイトベンハットゥから10km進んで来たようだ.車窓からは青空市場に大勢の人だかりの様子が見える.
マラケシュに向け,再びアトラス山脈越えを目指してバスは走る.
ここはティシュカ峠に至る中間地点.休憩したショップには,色鮮やかな陶器や,アンモナイトの化石.何れもこの辺の定番商品だ.
マラケシュに向かう街道の最高地点がこのティシュカ峠.この日もそうであったが,ここはいつも強風が吹き荒れているそうで,岩肌をくり抜いて建てたこのお店はその点バッチリであろう.看板によれば,標高2260mだ.下を見ると結構登ってきたことが判る.犬が「美味しいものな~い」と寄って来た.イスラム圏ながら牧羊犬やペットとしての犬は結構飼われているそうである.
左の窓から見るとこんな風にかなりの断崖を走り抜けるのが見え,念のため前方の窓から見ても,右の窓を覗いても,効き目のありそうなガードレールはあまり無いことを改めて認識する.ここはドライバのアブドラさん,しっかりお願いしますね~
下は,イトベンハットゥ過ぎ~ティシュカ峠~下りの景色
前方の白っぽい木はくるみの木で,ここタドダート地方の特産のようである.高度を下げたので,既に実の収穫時期は過ぎたが道端にはサボテンも再び目立ち始めるようになった.
標高が下がり,土質もよくなったのだろう,岩の上の農家の所有地だろうか,このような畑が見られるようになった.また,村人の寛ぐコーヒーショップや小さなお店の並んだ町も見受けられる.
この辺りからは3千数百mのティシュカ山がきれいに見える.なかなか見事な山並みだ.
ティシュカ山麓の山間の斜面に集落があった,陽がよく当たる斜面である.休憩したここのレストランは,カプチーノと,集落や谷が見えるテラスが売りであった.テラスから眺めると,農家の庭には牛やヤギが飼われている様子が見える.
レストランのテラスから眺めた景色.白っぽい葉でオリーブの木と判る.ただ実を見るとかなり小粒で,「オリーブかな~?」と思って訊ねたら,ここは標高が高いので実は小粒,だけど味はとてもいい,と云うことでした.