このグレイ湖ハイク編では,2013/2/5(火)朝バスでLago Greyホテルを発ち,ペオエ湖へ行き,ペオエ湖クルーズで対岸に渡り,グレイ湖沿いトレイルをグレイ氷河方面に往復ハイキングし,再びペオエ湖をボートで戻り,バスでラゴグレイホテルに至り落ち着いたときの写真を載せました.
この日は先ずバスでラストーレスホテルを出て,ペオエ湖に到着.ここをボートで対岸までクルーズ.下船後グレイ湖沿いトレイルをグレイ氷河展望点まで行き,戻るハイキングを楽しむ.その後再びペオエ湖をボートで戻り,バスに乗りラゴグレイホテルに入る.往復10km/5hrの予定になっている.
2泊したLas Torresホテルにはパタゴニアの自然や先住民族に関する資料館があった.写真はその中の一つでAonikenk族の肖像画だ.Aonikenk族はチリ中南部からアルゼンチン南部に住む先住民族マプチェ族(Mapuche)の一部族ということだ.現在アルゼンチン側ではほぼ絶滅し,チリ側で僅かな末裔が不遇な境遇で暮らしているようだ.
マゼランが上陸し,やがてこの地の呼称パタゴニア(Patagonia)の元になったパタゴン(Patagon)はポルトガル語で『大きな足』を意味し,このAonikenk族の足を指して言ったのが始まりだそうだ.当時同族はグアナコの毛皮の靴を履き,雪に大きな足跡を残していたのと,実際身長が2m以上の巨人も多かったのだそうだ.
さて,Las Torresホテルでまた今日のハイキングのお弁当を作ってもらい,これを持ってバスに乗り込んだ.旅行エージェント若しくはホテル側の手違いとかで2,30分待つことにはなったが.
バスはノルデンフィールド湖(Lago Norderskjold)の南側を通り,ペオエ湖(Lago Pehoe)の乗船場へと向かった.朝方晴れていた空も,黒く怪しげな様相に変わっていく中,車窓からは写真のパイネグランデ峰(Paine Grande)やパイネの角(Cuernos del Paine)といった風景が楽しめる.
バスはペオエ湖に到着し,乗船場まで歩いた.周囲の木立は尽く枯れている.2011年12月27日に大規模な山火事が発生し,強風エリアだけにそれが年末まで続き,園内の15,000haが焼けたそうである.その広さは膨大で,この先ボートで渡った先,ハイキングトレイルの途中まで達している.外国キャンパーの火の不始末が原因で,容疑者はチリ当局に拘束されたが,焼けた樹木は元には戻らない.寒冷地だけに再生には極めて長い年月かかるだろうと云うことだ.
下は,ペオエ湖へ行くまでの写真
桟橋からカタマランに乗り込んだ.比較的小型で,一日数会の運行だそうだ.そのため対岸の日帰りグレイ湖ハイクは時間的制約を受けざるを得ないようだ.
出航すると間もなくこのグランデ滝(Salto Grande)が見えた.地図を見ると,ノルデンフィールド湖からこのペオエ湖に流れ込む川に在るようだ.2つの湖は直ぐ近くなのに,随分大きな高度差があるものだ.
グランデ(Grande)と,かなり大層な名前にしては....と思うが,滝自体のサイズではなくパイネグランデ峰の前面に位置しているが故に付けられた名かも知れない.
船上からはパイネグランデとパイネの角がよく見える.グランデは名の如くどっしりした山で,複数の峰から成るそうだが生憎雲がそれらを遮っている.角の方は色分けされた地層が甚だ特徴的だ.中程の薄い色部分の上下は黒い岩で面白い.前日訪れたパイネの塔は花崗岩と聞いたが,ここ角の2色の岩も花崗岩なのだろうか?色が異なるのはどうして?
カタマランは対岸に到着し,皆降り立った.装いや持っているものからすると殆どこの辺りのトレイルを歩く人達だ.
小雨も降り始め,風も強い.こりゃ難儀なハイキングになるかな.
下は,ペオエ湖クルーズでの写真
往路(outward)
着船したグレイ湖畔にはロッジがあり,その広い庭はキャンプ場になっていた.沢山のテントが張られている.強風で飛ばされないようしっかりとペグが打ち込まれている.
私たちはこのサイトに掛けられた綺麗な木道から北へ向けて歩き始めた.
前述の2011年末山火事の跡が痛々しい様相で残っている.ひたすら焼け跡のままで,まだ新しい芽が生え出てくる様子はまだ伺えない.
暫く歩くとグレイ湖の畔になった.湖面には青い氷山が浮かんでいる.この鮮やかな青さはやはり美しい.
グレイ氷河(Gray Glacier)の終端が崩落し,流れだしたものであろう.氷山の比重は水より若干小さいだけで,よく言われる氷山の一角という言葉通り,水面下に大きな塊がある筈で,グレイ湖の水深は結構あるのであろう.それと氷山は皆湖の東側に寄せられている.風の方向のせいであろうか?
目標のグレイ氷河第一展望点に到着した.何と言ってもその強烈な風に圧倒される.台風並みだ.このパッケージツアーのタイトルには,『スーパートレック』というフレーズが含まれていた.スーパーとは何ぞや?と判らなかったのだが,ここで疑問が解消したように思う.つまり,この風だ.並大抵じゃない.以前富士山頂で砂塵が目に入り,よく見えなくなり大いに狼狽したことがあったが,それ以上の風だ.
まあ,それはそれで荒れたグレイ湖の上方にはグレイ氷河の終端が見えている.氷河終端は2つの島で分割され3つの青白い塊で湖面に注いでいる.実に豪快な光景だ.
当初プランでは上記展望点で引き返すのであるが,時間もあることだし,も少し先まで行ってみることになった(ただしここで引き返した人もいる).前記ペオエ湖フェリーの疎らな運行時間の関係で,多大な待ち時間調整の意味合いもあるようだ.
先まで行ってもさして眺めは変わりないですよ~というガッカリなコメントがあったように,実際眺めに関してはその通りであったかも知れない.でもやはり歩くのは充実感がある,楽しいのだ.
確かに少し歩いた程度で目玉であるグレイ氷河の眺めにさしたる変化はなかった.それどころか天気は更に悪化したようで,雨脚は増したように思われる.勿論晴れていれば美しさは倍加する筈であるが,これもまた山の天気,やむを得まい.ただこんな環境でも青白く押し寄せるように存在する氷河の光景は迫力がある.
下は,グレイ湖ハイク(往き)での写真
復路(homeward)
第2の展望点から引き返しにかかった.全く同じ道で芸がないが,適当な通りがないそうで仕方なかろう.風は相変わらず強烈なままで飛ばされないようにしなくては....
私たちが下るというのに,登っていく人は数知れない.いや私たちが慌て過ぎているのかも知れない.このグループのメンバーの年齢は私たちといい勝負だと思うが実にゆったりしているではないか.見習わなくては
どんどん下りグレイ湖が見えてきた.先ず何よりその青さに改めて驚嘆する.ありきたりだが実に美しい.多分晴天下ではさらに美しさが増すであろう.
これでグレイ湖ハイクは終わりだが,改めて風の強烈さを味あわせて貰った.これがパタゴニアなのだな.....
下ると,麓のロッジでは先行の皆さんがビールでくつろいでいた.また近くのテーブルでは日本のN社ツアーの皆さんも今日の歩きを終えて休んでおられた.フェリーを待つ時間,まだかまだかと思いながらもリラックスできるときだ.
フェリーを待ってグレイ湖の船着場を眺めていると虹が見えた.湖の上は半ば天気雨のような気象で,虹が架かり易かったのかも知れない.円弧の内側が青で,外側に行くほど波長の長い色になり,最外は赤だ.同行の博識なMさんによると,これが反転して赤が内側に,青が外側になることがあるそうだ.それは一度太陽光が湖面に反射した光でできる虹の場合だそうだ.その理由は...難しそうだからいいことにしよう.
下は,グレイ湖ハイク(復路)での写真
グレイ湖畔では花がいろいろ咲いていた.キンチャクソウの内側斑模様もよく見える.
湖畔のロッジで一休みの後,再びカタマランのフェリーに乗り,朝とは反対側東へと向かった.相変わらず荒れ模様の天気がパイネの角を一層猛々しく浮かび上がせている.
朝の乗船場でフェリーを降り,バスでグレイ湖南端へと向かった.ルートはペオエ湖東湖畔沿いを南下し,南端で西に折れ,グレイ湖へと進んだ.
バスはラゴグレイホテルに到着した.コテージ風の外観で,グレイ湖とパイネグランデ,パイネの角を望む部屋は素晴らしい.
レセプション前には展望デッキやに展望カフェ,レストランがあり,真ん前に山と湖が展開される.青白く浮かぶ氷山に,遠くグレイ氷河も望める.最高のロケーションだ.ただ生憎の天気で,グランデも角もスッキリしないのが残念だ.
下は,ペオエ湖経由ラゴグレイホテルまでの写真
展望レストランで夕食となった.やはり窓際から席が埋まっていく.ローストビーフのトマト添えから始まって,パンプキンスープ,メルルーサ(←久々に聞いた名で,社員食堂を思い出した),ベリームースなど出して貰った.ミネラル水はペットボトルでなくガラス瓶だったのでちょっとびっくり.ビール小瓶がUS$8とちょっと高めだが,味はまあ並であろうか.
さてこれでパイネ国立公園の観光は終わった.明日はチリ南端の町プンタアレーナス(Punta Arenas)に向かう.