ペリトモレノ氷河Perito Moreno glacier

このペリトモレノ氷河編では,カラファテのパタゴンホテルから2013/1/29(火)朝バスでペリトモレノ氷河に行き見物,その後クルーズで船上から見物,昼食後再び陸上からペリトモレノ氷河見物,カラファテに戻って散歩,と氷河三昧の一日の写真を載せました.

ペリトモレノ氷河に行くgo to Perito Moreno glacier

ペリトモレノ氷河への行程マップ

ペリトモレノ氷河への行程

宿泊のPatagonホテルはカラファテ(El Calafate)にあり,小型バスでアルヘンティーノ湖(Lago Argentino)沿いを西へペリトモレノ氷河へと向かった.途中道草を食ったりし,展望台まで1時間ほど要したであろうか.


美しいアルヘンティーノ湖

美しいアルヘンティーノ湖

アルヘンティーノ湖(Lago Argentino)はエメラルドグリーンの水面がとても美しい.典型的氷河湖の色だ.それもその筈,これから行くペリトモレノ氷河を含め,西側の幾つもの氷河の溶けた水が流れ込むからであろう.アルゼンチン最大の湖で,面積が1,466km2,琵琶湖の2倍ほどあるそうだ.南米でも3番目の大きさだというから,かなり大きい.なおこの湖からはサンタクルス川として流れ出し,大西洋へ注ぐそうだ.


パタゴニアの大地はコールドステップ

パタゴニアの大地はコールドステップ

パタゴニアはアルゼンチンとチリに跨る南米大陸南端,およそ南緯40度以南辺りを指すそうである.この辺りは地形の関係か,南西からの強い偏西風が吹き,それがアンデス山脈にぶつかり,西のチリ側は雨や雪が多い,アルゼンチン側は乾燥気味になるという.でも偏西風の威力は然程落ちないのか,風はやはり強いままだ.こうしたことからある英探検家が『風の大地』と呼んだそうで,正に端的な表現で現在も色々な記事中に見ることができる.

このような気象は,ちょうど冬季,北西からの風が日本縦断の山脈に当たり,日本海側には大量の雪をもたらし,関東平野はカラカラに晴れて,一部強いからっ風が吹くのと似ていようか.

またこうした気象は,ロシア語の原意で「平らな乾燥した土地」を表すというステップ(steppe)大地を生じさせたそうだ.特にパタゴニアは寒冷で丈の低い草木が多くを占めることから,コールドステップ(cold stppe)に分類されるそうだ.

写真はペリトモレノ氷河への途中,そんなコールドステップの中に見つけた一軒家で,羊や牛,或いは馬などの放牧で暮らす人達のようだ.

なお,アルゼンチンのもっと北の方は豊かな草原地帯でパンパ (Pampa) と呼ばれるようである.


ロスグラシアレス国立公園のゲート

ロスグラシアレス国立公園のゲート

バスが進み,アルヘンティーノ湖の一つの湾であるリコ湾(またはリコ水道/Brazo Rico)辺りに差し掛かる頃,ロスグラシアレス国立公園のゲートがあった.ここで入場券を買って,園内に入る訳だ,この公園はLos Glaciares National Parkとして1981年,ユネスコ世界遺産(自然遺産)世界遺産ロゴに登録されたそうだ.


ペリトモレノ氷河が見えてきた

ペリトモレノ氷河が見えてきた

程なくリコ湾の先に目指すペリトモレノ氷河が見えてきた.急斜面にある氷河は白いが,比較的平坦部に入った氷河はモレーンで真っ黒,という固定観念があるが,ここは真っ白だ.もち論写真でこのことは知っていたが,こうして目の当たりにするとその真っ白さに改めて驚く.

氷河が崩落し,青白い光を放つ氷山として流れていく様子も,私には初めて見る光景で,お~っと感じる.

傍らにあった案内板を眺めると,氷河左の山はセロモレノ(Cerro Moreno/モレノ山:1,640m)だ.これから2日間,ペリトモレノ氷河と並んで常時見ることになる.


下は,ペリトモレノ氷河に行くときの写真

ペリトモレノ氷河に行くときの写真
ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真 ペリトモレノ氷河に行くときの写真

朝のペリトモレノ氷河Perito Moreno glacier in the morning

朝のペリトモレノ氷河の終端

ペリトモレノ氷河の終端

さてバスは氷河展望台に到着した.展望台一帯には周遊回廊が設けられ,早速ここを歩きペリトモレノ氷河終端を真ん前に望む位置にやって来た.

氷河終端はリコ湾の川底に乗っかっているのだが,地上部分だけでもかなりの高さがあり,迫力だ.その高さは60mほどで,水面下にはさらにその倍ほど隠れているようだ.

上流で成長した氷河は,徐々に下流へと押し流されるが,川底や両岸に接する所では大きな摩擦抵抗があるので,それが無い中央部分とでは速度差を生じ,氷柱状のクラックを生じさせるようだ.また擦れた部分は削った土砂の黒い層となって見えている.前述のようにヒマラヤなどではこの黒い層が盛大で,表面も厚く覆っているのが多い.


朝のペリトモレノ氷河終端の崩落

氷河終端の崩落

終端の氷柱は支えが無いので,上から圧力が掛かると前に倒れる.この崩落がペリトモレノ氷河観光の目玉でもある.写真(右上から1/3のとこ)はちょっとタイミングが遅かった.ここはやはり一眼レフのように速いレスポンスのカメラでないと遅れる,と腕は棚上げし,カメラのせいにしておこう.

ロスグラシアレス国立公園内に数十ある氷河の中でペリトモレノ氷河は,数少ない後退していない氷河の一つで,全長30km,終端部,ここでの幅は5km,一日で約2m進むという.なので毎日2m分崩壊すれば平衡状態を保つことになる.崩壊が追いつかないときや,崩壊しても氷が流れないときは対岸のこの展望台近くまで達し,リコ湖を堰き止めるダムを形成することもあるそうだ.

崩落後の氷塊(左から1/3)はあたかも宝石の如き濃いエメラルド色で,実にきれいだ.だがこの写真は日陰となっており,その美しさが表現されていない.でもカメラのせいにはできないな~


朝のペリトモレノ氷河南極ブナの林

南極ブナの林

コールドステップなのに氷河周辺には大きな樹木,南極ブナ科のレンガ(Lenga)とニレ(Nire),特に前者が多いそうだ.山や湖,川の近くでは平原より水分の供給が十分多いためなのだそうだ.それにしてもレンガとか,ニレとか紛らわしい名前が付いている....いや,覚え易くていいかな?

だが,低灌木程度しかない平原と巨木の茂る山沿いで果たしてそんなに雨量が違うのか....?この点はなかなかピンと来なくて,これを書いている今も,そうなのかな....?と疑問は続いている.


下は,朝のペリトモレノ氷河での写真

朝のペリトモレノ氷河での写真
朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真
朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真 朝のペリトモレノ氷河での写真

ペリトモレノ氷河クルーズgo on a cruise

遊覧船クルーズ

遊覧船に乗る

昼食後展望台少し手前のリコ湾船着場に行き,遊覧船(カタマラン)に乗り,リコ湾を遡った.

出航時はシートに座っているよう指示がある.一旦走りだすとデッキに出てよいそうで,風を受けながら前方を眺める.ちょっと寒いが.


クルーズで氷河の前に来る

氷河の前に来る

船は氷河の前にやって来た.密集する氷の柱は豪快で青い色がなんとも美しい.

普通の氷は白いが氷河の氷は青い.氷河の氷は高い圧力で圧縮された水の結晶であるが,圧縮される際,気泡が全て外部に押し出されるためだとか....?確かに普通の氷は水より軽く,水に浮くが,氷河の氷はかなり沈むので密度が大きいのは確かだ.でも色に関しては....まだよく解らない.

ググってみると,気泡を含まない高密度の氷の結晶は長波長側,つまり赤側の光を吸収し,相対的に短波長の青色を反射,或いは透過するので青く見える,と書いてあるところがあった.どうして赤光を吸収するか....など,まだよく理解できてないが....まあ,難しいことはいいことにしよう.


クルーズで記念写真のファミリー

記念写真のファミリー

多分ファミリーであろう,楽しそうだ.クルーズ船では専属のカメラマンが記念写真はいかがですかと客に声を掛けて回っている.ポーズの付け方などがやはり商売(プロ)だけあって一味違うようだ.


下は,ペリトモレノ氷河クルーズでの写真

ペリトモレノ氷河クルーズでの写真
ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真 ペリトモレノ氷河クルーズでの写真

クルーズの後,私たちはLas Nativosレストランで昼食となった.メインディッシュはアルゼンチンでは標準(最小サイズ)300gステーキで,ミディアムレアにしてくれたのでとても美味しかった.生ハム巻のサラダも珍しい.ただパタゴニアでは野菜は育たず,全て首都圏辺り,パンパ地帯からの空輸で賄われるそうで,量は少なくまた高価だということだ.

↓昼食のLas Nativosレストラン↓同レストラン店内
昼食のLas Nativosレストラン昼食のLas Nativosレストラン店内
生ハム巻のサラダカラファテのアイスクリーム
↑生ハム巻のサラダ↑カラファテのアイスクリーム

カラファテとはブルーベリーのような濃紺の果実(木の実)で,そのアイスクリームを出してくれた.なかなか美味しい.街の名前エルカラファテ(El Calafate)のエル(El)は定冠詞なので,つまり,この辺り特産のその果実名を冠した街ということになろうか.

午後のペリトモレノ氷河Perito Moreno glacier in the afternoon

午後のペリトモレノ氷河

リコ湾とロステンパノス水道の接続域

午後もまた展望台にやって来た.午前より陽が当たるようで狙いの崩落が増えそうだ.さてここはリコ湾とそこからさらにアルヘンティーノ湖本体に近い側のロステンパノス水道(Cl.de los Tempanos)と名付けられた部分との接続域だ.この辺りは狭く,しかも比較的浅瀬になっているそうだ.

現在も通常より狭くなっているのだが,統計的に見ると,後数週間すると崩落若しくは氷河先端がさらに進み,接続域が塞がれてしまう可能性があるという.普通塞いだ氷の下にトンネルが形成され,やがて上部が崩壊し事無きを得るそうだ.だが時々トンネルが形成されず,リコ湾側の水位が3m(いやもっとだったか?)も上昇することがあり,その氷のダムが水圧で決壊し,それこそ巨大崩壊となる年もあるそうだ.その際の轟音はとても広いエリアまで轟き渡るそうだ.それはそれは見事であるが,滅多なことではお目に掛かれないそうだ.


周遊回廊の様子

誰が与えたのか懸命に小枝の下からパン切れを引っ張るネズミがいた.好物なようで,何度も何度も小枝と格闘し,とうとうその下を潜らせて巣穴に引っ張って行った.

周遊回廊ネズミ小鳥
↑周遊回廊↑ネズミ↑小鳥

南極ブナ

レンガの方がニレより葉脈が鮮明で,葉の淵がギザギザしている.個体数はレンガがかなり多いそうだ.

南極ブナの林レンガ(Lenga)の葉ニレ(Nire)の葉
↑南極ブナの林↑レンガ(Lenga)の葉↑ニレ(Nire)の葉

下は,午後のペリトモレノ氷河での写真

午後のペリトモレノ氷河での写真
午後のペリトモレノ氷河での写真 午後のペリトモレノ氷河での写真 午後のペリトモレノ氷河での写真 午後のペリトモレノ氷河での写真 午後のペリトモレノ氷河での写真 午後のペリトモレノ氷河での写真

この日ペリトモレノ氷河周辺で見かけた花today's flowers

キンチャクソウ(巾着草)

キンチャクソウ(巾着草)

去年シッキムトレックで見たのと同じ花がここにも咲いていて驚いた.そのとき同行のSさんからの情報によれば,キンチャクソウ(巾着草若しくはカルセオラリア)と同じかその仲間であろう.シッキムでは尽く口を閉じていて,きっと開くときもある筈では....,と思っていたのだが,ここでは現に写真のようにちゃんと口を開けているではないか.感動した.


この日,この他下のような花や実を見かけた

この日ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真
ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真 ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真 ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真 ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真 ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真 ペリトモレノ氷河で見かけた花や実の写真

カラファテ散歩stroll about El Calafate

カラファテのメインストリート:リベルタドール大通り

カラファテのメインストリート:リベルタドール通り

ペリトモレノ氷河を存分に見物し,バスでカラファテの街に戻った.ここはメインストリートのリベルタドール大通り,Av. Libertador General San Martinとあるから正しくは『サンマルティン将軍の』と云う限定詞が付くようだ.サンマルティン将軍はアルゼンチンの軍人にして政治家.南アメリカ各国をスペインから独立させるために活躍し,偉大な解放者として称えられている人だそうだ.

一番驚き感心するのは,道に大きな松やポプラなどの木が植えられていることだ.ステップ地帯なのにと,とても不思議に思う.懸命に水を供給しているのであろうか?

カラファテは人口8,000人くらいで小ぢんまりした街だが,夏の今は観光客で急増しているのではなかろうか.通りの両側にはお土産店,アウトドア用品店,カフェやバー,レストランなど目立ち,スーパーマーケットはもち論,カジノまで揃っている.

アルゼンチン側の先住民はほぼ絶滅したそうであるが,先住民風工芸品それらの専門ショップも目に入る.絶滅と云う深刻さからどうしても物悲しさを覚えてしまうが....


カラファテのオープンレストラン

カラファテのオープンレストラン

然程広くはない歩道の上にテーブルを並べているのがリゾート地らしい雰囲気を盛り上げている.交通量も多くないし,こうして行き交う人を酒の肴にビールを飲むのはなかなか良さそうだ.一人ではちょっと躊躇うが....

傍に『TOKIOまで17221km』と記した標識があった.ちょっと17221kmが大きすぎてピンと来ないが....時差が12時間ということは,ほぼ地球の反対側同志....遠い筈だ,と思ってみる.

帰りがけ,オープンレストランには寄れないが折角だからとスーパーに入り水や安いワインにポテチなど買う.但しビニ袋は無いという.困った!でも有料(5アルゼンチンドル)ながらちゃんと薄い布袋が置いてあり助かった.支払いはクレジットカードでOK.


下は,カラファテ散歩での写真

カラファテ散歩での写真
カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真
カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真 カラファテ散歩での写真

夕食は前夜と同じLa Carmelaレストランに行った.イカリングフライにマスのムニエルで,日本のそれらと同様,無難な味であった.目の前のアルヘンティーノ湖にはマスが棲息していると聞くから,地元産かも知れない.これも訊ねてみれば良かった.

さて明日は,今日飽くことなく眺めたペリトモレノ氷河の上に行き,歩く予定になっている.楽しみだ.



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