このゾングリへ編では10月21日バッキムを出て,ツォカを経由しピッタンに来て昼食.午後デオラリを経てゾングリに至るとき,及び翌22日ゾングリに滞在し,未明にゾングリビューポイント往復,朝食後ゾングリ峠を往復したときの写真を載せました.
東にパンディムや,西にカンチェンジュンガやカブルーを望むことができ素晴らしかった.
バッキムキャンプサイトでは晴れて気持ち良い朝が明けた.改めてテントの張られていた様子を眺めてみる.急な斜面の段々に離間して張られている.張ったスタッフの皆さんも苦労したことでしょう.ありがとうさん.ところで今時ドーム型ではなく,三角形のテントは珍しい.ポールは太いアルミパイプで重そうだ.
テントの色は様々であるが,フライとインナーとで異なっており,これが最後まで問題となる.特に写真中央マゼンタフライのものは,内部がグリーンだったりして,フライでRB光が透過阻止され,インナーでG光が阻止される.つまり内部にはどの波長の光も透過せず,真っ暗になる訳だ.真っ昼間でもライトが要り,実に馬鹿げた設計だと思うが,昼寝や暑い時対策であろうか....?普通テントは最初当たったものをトレック完了まで継続して使うことが多いが,今回は公平を期すため毎回抽選と厄介なことになった.
朝食の後,添乗Tさんの音頭で身体をほぐし,ツォカに向けてスタートした.一般に朝のうちは晴れるようで,この朝も強い陽射しが降り注いていた.快適だ.
昨年の今頃であったであろうか,この地方では大きな地震に見舞われ,大きな被害が出た.バッキムキャンプサイトから僅か上に行った辺りに写真の半壊した山小屋があった.災害前であれば少人数の宿泊や,またキッチンの借用なども可能だったようだ.
そのうち雲が出てきたが,時々それが途切れ,そして待望の白い山が覗くようになった.左からパンディム(Pamdim/6,691m),テンジンカン(Tenzing Kang/6,010m),ジョプノー(Jhopunu/5,842m)だそうである.これらの峰々はこれから歩くトレイルの東側にあって,最終地ゴーチャラまでず~っと見える筈という.
暫く歩きツォカ(Tsokha/3,005m)という小さな集落に着いた.茶屋があり,ここでお茶となった.茶屋はテントを張る土地も保有しており,帰りにはここで一泊する予定になっている.
ツォカの標高は3,005mとさほど高いわけではないが,冬も通して常住する村だそうである.この先,例えば今夕到達予定のゾングリ(Dzongri/4,030)は,家畜と共に過ごす夏村(カルカ)で,冬の間住民は標高の低い所に移住し,暮らすそうである.
このツォカには茶屋の他に,山小屋1,2件があるようで,遠目であるが客らしき姿も見えている.果たしいて,全戸数は幾らであろう?多分数戸程度であろうが.....
茶屋の東屋軒下では紐で繋がれたチーズが下げられていた.チーズは乾燥するとカチカチになってしまう,かと思いきや,ここでは柔らかい.何度か食事で出してもらったが,形や色合い,食感が少し高野豆腐のような感じだ.このチーズも一旦夜間凍らせるのかもしれない.
下は,バッキムからツォカ辺りまでの写真
ツォカでお茶の後,再び北に向け歩き始めた.程なく見晴らしの良い場所にゴンパが見えた.前に池があり,背後は谷のいいロケーションだ.常駐か,或いは時々か不明だが,ラマ(お坊さん)はツォカの住民だということだ.
シッキムの特に山岳地方は殆どがチベット仏教徒であるようだ.ただマニ石やチョルテンの数は北のザンスカールやネパール山岳地方と比べると比較的疎らなように感じられる.
ツォカの先辺りからはそれまで多かった大木は徐々に減り,石楠花が多くなる.石楠花は春先に咲くが,咲くのは秋の今現在蕾を付けているものに限られるのだと,詳しい人に教えてもらう.そうした観点で改めて見渡すと蕾の無いのもが結構多い,いやその方がむしろ多いようだ.それでも春になれば相当鮮やかに染まるのではなかろうか.
これまでトレイルは主に石で補強されていたが,この辺りからは丸太を並べる方法が主に採られている.補強しないと泥濘が酷くなり,直ぐに道がだめになるためだが,近くで石材が確保できないため已む無く耐久性の低い木材になったのであろう.補強区間は延々と続き,大変な手間と費用が掛かると思われる.
そのうちにピッタン(Phithang/3,650m)と呼ばれる広々とした場所に到着した.丁度昼時であるがこの頃になると完全に雲が架り,ガスが覆い,立ち止まると寒い.写真左のように小さな小屋があったが既に先客が専有し,私たちは広場に特設されたテーブルに座った.
先ずは野菜の煮物に饅頭のようなものを出してもらった.写真にないがこの後ビーフ料理を出してくれた.まさかインドでビーフを頂けるとは想像だにしていなかったので大変驚いてしまった.元よりビーフは大好きなので感激いっぱいで頂戴した.
下は,ツォカからピッタン辺りまでの写真
美味しく食べた後,歩きを再開した.少し行くと道にタルチョーが架けられていた.地元の人が安全を祈願して掲げたのであろうか.
石楠花林は続いたが徐々に疎ら度合いが増しているようだ.標高の変化が植生の変化を起こしているのであろう.
標高4,000mのデオラリに着いた.ネパールでもよく耳にする言葉で,チベット語のラ(La)や英語のパス(Pass)に相当する『峠』の意味合いだと思われる.ここは緩やかな起伏で目立ちにくいが,確かにそんな地形かと思われる.チベット仏教の慣わし通り小石のチョルテンが築かれ,タルチョーが掲げられている.
さてこの辺りに来ると潅木はあるが,石楠花を含めて,殆ど樹木は無くなった.なだらかな台地は多分夏場には草が茂り,家畜の放牧に良いであろう.
小さなショップや山小屋風建物など数軒建つゾングリ(Dzongri/4,030m)の夏村に着いた.下の方の村民がヤクや羊などの家畜を連れて,夏の間ここで過ごすようだ.私たちのキャンプサイトはここから15分ほど先にあるそうだ.
午前中行動食不足でお腹が空いて困ったのでここでビスケットを買った.2パックでたった70ルピー(100円くらい)と高地なのに激安だ.
広々したゾングリのキャンプサイトに到着した.既にテントが張られていた.前夜の急斜面の狭いサイトとは打って変わって実に広々している.
惜しむらくは天気が悪くて見晴らしが利かないことだが,まあ雨にならないだけ幸いか.
全般に雲が厚いのだが,その流れは早く,時々途切れることがある.そして一瞬であるがパンディム(Pamdim),テンジンカン(Tenzing Kang),ジョプノー(Jhopunu)三山が赤く染まる光景が望めた.控え目ではあるがなかなか美しい.
下は,ピッタンからデオラリ,ゾングリまでの写真
午後7時ダイニングテントで夕食を頂き,自分のテントに戻る.4,030mの高さになり夜は結構冷える.テント内でも翌朝方は氷点下2℃まで下がっていた.そんな訳でこの日寝る前には湯たんぽを用意してくれた.寝袋に入れて寝ると足が冷たくならず助かる.
10月22日未明の3時半,私たちは起こして貰い,ゾングリビューポイント(Dzongri View Point/4,350m)に向かった.相当寒い.1時間余り歩いたか,ビューポイントに到着し,朝焼けを期待し待った.カンチェンジュンガの方は雲がなく晴れているのだが,生憎光線の来る東の空は雲に満ちていた.残念!
ただその内時間が経つと,赤くはないものの陽の光が射し始め,カンチェンジュンガ方面が輝いていった.ガイドLさんや添乗Kさんの説明やマップを頼りにすると左から,ラトン(Rathong),黒く低いカブール(Kabur),カブルー南(Kabru South),同北(Kabru North),カブルードーム(Kabru Dome),フォークドピーク(Forked Peak),カンチェンジュンガ(Kangchendzonga)と思われる.
カンチェンジュンガの峰々も綺麗に見えてきた.多分左から,西峰(ヤルンカン Yalungkang),主峰,中央峰(Central),南峰(South)の並びではないかと思われる.カンチェンジュンガとはチベット語で「五つの宝庫をもつ偉大な雪山」の意だそうであるが,この4峰以外残り一つの峰はここからは見えないジャヌー(Jannu)が相当するようだ.
ゾングリビューポイント(Dzongri View Point)は4,350mとキャンプサイトより300m程高いようだ.タルチョーの棚引くここから下を見ると豊かな雲海が実に綺麗だ.
寒い中,私たち以外にも数人のトレッカーが登ってきていた.きっと皆似たような思いで眺めていたであろう.
下は,ゾングリビューポイント(Dzongri View Point)での眺め
ゾングリビューポイントでの見物を終えると,キャンプサイトに下り,朝食を頂いた.そして少し休んで次はゾングリ峠(Dzongri La/4,550m)往復に出掛ける.
テントの辺りは既にゾングリの夏村の内側であるが,ここを通ってゾングリ峠(Dzongri La/4,550m)に向かう.夏村の辺りは実に広々し,ヤクや馬がほぼ枯れた草を食んでいる.夏の間過ごす石室小屋がきっと家族単位でであろうが,建てられている.少なくとも雪の降る前までは長閑で美しい眺めであろう.
目指すゾングリ峠は東の4,550m,およそ500m程高い場所に位置している.そこまでの傾斜は緩やかで,徐々に緩やかに登っていった.暫く行くとカブルーであろうか,白い頂きが見えてきて,心なしか足取りも軽くなってくる.
途中トレーニングのため6,000m級に登ってきたというインド登山隊に行き交った.皆ヘルメットを携えていたので岩とか雪とかの本格登山のようだ.かなりの大部隊で,インドは,軍を初めとして登山にも力を入れ始めている雰囲気が感じられる.
ゾングリ峠に登ると先方に美しい峰々が見えてくる.晴れ渡った青空に白が映えて見事だ.
またこの日は幸いなことに昼近くになってもあまり雲が出ず,眺めも良く温かい.
ゾングリ峠に登り切ると麓から全容が望める.左から,背後に見えるコクタン(Kokthang),ラトン(Rathong),カブルー南(Kabru South),下方にカブルードーム(Kabru Dome),カブルー北(Kabru North),タルン(Talung)前衛峰,すぐ近くのカブール(Kabur)と思われる.
またゾングリ峠の間際まで伸びているのはラトン氷河(Rathong Glacier)だそうだ.
左端に見えるコクタン(Kokthang/6,147m)もなかなか豪快だ.またここから流れ出る氷河もどうしてどうして雄大だと思う.
下は,ゾングリ峠での写真
ゾングリ峠で,間近に山と氷河を堪能し,下りなので足取りも軽くキャンプサイトに引き上げていった.早朝のゾングリビューポイントでは幾人かの外国人トレッカーと一緒だったが,今回のゾングリ峠では我々だけだった.元々シッキムに入ってくるトレッカーは多くないのでまあ,こんなものなのかも知れない.穴場だ.
高度が上がり,しかも秋も終わりで花は少なめだ.エーデルワイスはドライフラワー化している.リンドウは細めで寒いところに適応しているように見える.
明日はラムエに行く.標高差は殆ど無いので楽です,と言われている.天気だけが問題かな.