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ボスラは，シリアの首都ダマスカスの南約150km，ヨルダンの国境近くにある都市．2世紀，ローマ帝国のトラヤヌス帝が，このボスラの地に都市を築かせ，7世紀になると，アラブ人の支配下に置かれたようだ．やがて12世紀頃，十字軍の攻撃に備え要塞化されたそうだ．その後，ボスラは幹線道路から外れ，衰退の一途をたどり，廃墟と化したそうである．
ボスラに向かう途中はこのようなオリーブをはじめ果樹園や畑が多く見られる．放っておけばオリーブや他の果樹が育つといった場所は多くなく，かなり大変な緑化事業の下で実現しているところも多いようだ．ところでオリーブ漬物は，中東や地中海沿岸地方のホテルの朝食では，必ず，と言っていいほど出される．あまりしょっぱいのはどうかと思うが，普通程度の塩加減であれば，黒いのも，グリーンのも，何れも美味しいと思う．
ボスラの街に入ると全体的に黒茶色の建造物が目立ち，やがてこの大きな円形劇場前に至る．現在は歴史あるごく普通の街のように見えた．仔細に見ることはできなかったがビサンチン様式の建物が数多く残っているそうである．
ボスラの建造物の多くは，黒い玄武岩（Black basalt）で作られているようだ．このため構造物が全体的に黒茶色で，必ずしも美しいとは言えないがまあ印象的といったところか．この玄武岩は東方に位置するアラブ山の噴火によって流れ出た溶岩が固まってできたそうである．中東最大クラスという15,000人収容の円形ローマ劇場も玄武岩が主材料で黒ずんでいる．ただしコリント式柱は遠方より取り寄せた大理石だそうで，ここだけは白い．いずれにしても各地に見られる円形ローマ劇場の中で，ここは舞台も，観覧席も全周きちんと残り，保存状態はいいと思う．この劇場は音響的にも優れているそうで，現在でも演奏会等で使われているそうである．
劇場正面入口のシリアアサド大統領の肖像を眺めながら入ってみる
