タクラマカンと砂漠公路Taklamakan and Highway

砂漠公路(Desert Highway),正確には砂漠石油公路は,タクラマカン砂漠の油田開発用として1991年から建設開始,1995年完了という.これほど長大な道路を超短期間で完成させた,という中国政府土木技術の自信作だ.超短工期なのに,基礎は砂と砂利を組み合わせたしっかりした施工で,10年経った今でも殆どノーメンテナンスでびくともしないそうだ.ただ,通常の高速道路より単位長さ当たりの建設費は高いそうだ.一般には1997年から開放され,こうして観光バスも通ることができるようになったわけだ.

ニヤ側から砂漠公路に入る

ニヤ側から砂漠公路に入る

さてこれからタクラマカン砂漠を突っ切って,その昔,三蔵法師も立ち寄ったという,天山南路にあるクチャに向かう.どんなものか楽しみだ.アフリカ大陸のサハラ砂漠に次ぐ面積だそうだ.残念ながら砂漠化は現在も進み,面積は拡張しているという.

タクラマカンとはウイグル語で「入ったら二度と出られない」という意味だそうである.それが砂漠石油公路のお陰で,ラクダに乗ることもなく,バスで10時間かそこらで渡ることができるのだ.ドライバ趙さん,ありがとう.

防砂緑化

防砂緑化

全長522㎞にも及ぶ砂漠公路で最も驚いたのは,道路に沿って植物を植え,水を供給しているのを見たことだ.道路は砂漠を突っ切って走るので,そのままではあっと言う間に砂に埋もれてしまう.当初,葦のようなものを幾重にも並行に,延々と500kmに渡り埋め込んで防砂したそうだ.勿論このタイプの垣根は今も多く残っているし,また植物を併用している個所もある.

ただこれだと寿命が10年くらいで,頻繁にメンテナンスが必要な欠点があるそうだ.そこで生きた植物による垣根,つまり生垣に替えようとなったそうで,まず左写真のように何本もの水パイプを這わせる工事が進められている.既に全道路長の半分以上はパイプ敷設が済んでいるように見えた.水の供給源は地下水で,所定間隔毎にポンプ小屋が設置されていた.バスが100km/hrくらいの速度で走り,2分間隔くらいだから,3km間隔ということになろうか.

動力源は化石燃料のエンジンのようであるが,所々ソーラーセルがあり,ガイド馬さんの話ではポンプの電源用だ,とのことである.しかし数が少ないし,セルの規模から想定されるパワーではちょっと難がありそうだ.光ファイバーも敷設されているそうなので,今のところ,それらの中継設備電源くらいではなかろうか.ただし今後,ポンプのソーラーセルによる運転の試みも進められるに違いない.

育ってきた生垣

育ってきた生垣

ここはパイプ敷設と植林が済み,根付いた場所である.もちろん砂漠の植物であるからそれほど大きく生育することはなく,この程度かこれより少し大きくなるくらいであろう.木の種類は砂漠でも生き延びることが可能な3種類の植物だそうで,タマリスク(紅柳),ハロキシロン,と,何だったかもう1種類.写真で左側がタマリスクだったような.....自信がないが.これらの植物は,地表に出ている茎や葉の部分,および根で砂の移動を妨げるそうである.いずれにしても見た目には極めて地味な植物だ.

胡揚の木

胡揚の木

タクラマカン砂漠の過酷な環境に適応したポプラの一種だそうだ.ただし砂漠の真中に生えているのではなく,ニヤなど砂漠周辺に生えている.生きて千年,枯れてなお千年,朽ちるのにまた千年と言われ,とても生命力の強い植物だそうだ.確かに枯れてなお砂漠に佇む個体も見え,仙人風というかしぶといというか....風貌からそんな印象を受ける.


タマリスクの丘

タマリスクの丘

自然のタマリスクもタクラマカン砂漠の真中には生えておらず,砂漠の縁に多く繁っている.不思議なのは,どのタマリスクの木も,小高い砂山の上に生えていることだ.タマリスクが流動性の砂の流れを止め,木の根元に溜まった砂の上にタマリスクが押し上げられる,とまあそんな現象が繰り返されるようだ.だから,前述の植林によるタマリスク生垣も,やがて砂山列を形成し,砂防効果を一層高める,そんな算段なのであろうか.


下は,ニヤからクチャまで,タクラマカン砂漠と砂漠公路の風景.

タクラマカン砂漠と砂漠公路の風景
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石油とパイプライン

石油とパイプライン

砂漠公路を抜けた辺りでは,規模の小さな油井が見られた.規模の大きいのはタクラマカン砂漠の中ほど,今回通った砂漠公路の中ほどで分岐して,東に進んだ辺りにあるようだ.現在はそこから上海まで,4,600kmという長い原油パイプラインが既に完成しているそうだ.


塩分

塩分

同じくこの辺りには水があり,沼地になっているが,水辺が白くなっている.塩分が堆積しているのであろう.水も塩辛い,塩湖であろう.(舐めていないので想像)
さて,これからクチャに向かう.



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