西安から空路でウルムチに向かうことになった.
西安発18:40の中国南方航空CZ-6896便は,シート配列が3列-3列のB737-700型機だった.たまたま隣に乗り合わせた中国人(漢人)は漢方薬を仕入れにウルムチに行くというビジネスマンで,よく分からなかったが漢方薬の話をしてくれた.2時間あまりし,21:00に中継地敦煌に到着した.ここで40分ほど待ち,ウルムチに向かう.
敦煌の待合室は薄暗く,客も多くなかったが,売店には模写若しくはオリジナルの仏画などたくさん並べられ,敦煌らしさを演出していた.外は7℃と西安とは大違い.さてさらに北のウルムチはどんなやら?
ウルムチ(烏魯木斉)には夜遅く到着した.翌朝,宿泊した環球大酒店の展望レストランに上がった.360度の視界で街の様子がよく判る.ただ鳴るはずの目覚ましコールが鳴らず,遅れて一人朝食を食べたため忙しかったが. 環球はグローバルの意のようで,酒店はホテルなのでグローバルホテルとなるか.
ウルムチ(烏魯木斉)の街はうっすら雪が被り,向こうの天山山脈も白く輝き,きれいだ.この日のウルムチは氷点下,ウルムチは天山山脈北麓のジュンガル盆地東南縁に位置する.ウルムチという言葉はジュンガル部の言葉で「美しい牧場」を意味するそうだ.ウルムチは,言語的,文化的,交易面で,中国の東部よりもウズベキスタンのタシュケントのようなはるか西方の各地とより強く結びついているそうだ.それはそうであろう,漢民族に征服されるまでは民族的に西方の国に近いであろうから.現在人口約160万人で,中華人民共和国新疆ウイグル自治区の区都である.
下は,ウルムチホテル近くの写真.レストランから眺めると,街路樹が幾列にも並んだ巨大な通りが見える(左から2番目).朝なので通りには徒歩やバスで通う通勤,通学の人が多く見られた.ウイグル人より漢人の方が多いように見える.
ウルムチから天山山脈東部のボゴダ峰中腹の天池(テンチー)に向かった.途中羊の放牧風景がときどき見える.大地に緑は見られず,雪を被っているところさえ見える.人も羊も大変そうだ.
ボゴダ峰(標高5,445m)はモンゴル語で「聖なる山」の意味だそうだ.天池から出発するトレッキングコースがあり,ベースキャンプ(3,560m)までのトレイルはよく整備され,高山植物や緑豊かな景観が楽しめるようだ.BCとその近くの4,000m級ピークくらいまでのコースでは,日本発10日間くらいのトレッキングツアーも結構あるようだ.歩いてみたいな~
積もる雪が増えてくる.所々にパオが見え,牛やヤクが見えてくる.この辺りはカザフ族の人たちが多く住んでいるそうだ.
バスを降りてカザフ族のパオ集落を見物させてもらった.伝統的帽子を着けた男の子が一人パオの前で遊んでいた.カザフ族は,トルコ系に近いとされるウイグル族と比べて,顔立ちが日本人など東アジア系の顔に近いようだ.カザフ族はカザフスタンにおよそ800万人が住み,同国人口の半数を占めるようだ.またここ新疆ウイグル自治区北西部には約130万人が住むそうである.
カザフ人は元来遊牧民で,20世紀初頭までは人口のほとんどが遊牧生活を行っていたそうだが,現在は定住する人の割合がず~っと多くなっているみたいだ.アラブのベドウィンなどがやはりどんどん定住化しているのと同じような事情であろう.
下は,天池へ至る途中での眺め
雪が積もり,バスが終点まで入れなくなった.でも天気がよいので真っ白な道を歩くのもまた気持ちいいものだ.
ウルムチ市内から約125km,2時間くらい要したか?標高約2,000mにある天池に到着した.天池は氷結し,その上に雪が積もり真っ白だ.旅行パンフレットではどれも山を背景に,水を満たした天池の写真であるので,この光景は言わば想定外であろう.普通この頃(4月)は雪はあまりないそうなので,珍しいと言えば珍しいのかも知れない.
中国本土(多分)からの観光客も多いと思われる.2組のカップルがそれぞれの構図で記念写真を撮っている.特に後ろの男性は気合を入れて,腹ばいでポーズを決めているところがいい.湖面こそ見えないが雪のボコダ峰が写るのでまだいいであろう.何しろ山の天気なので,ボコダ峰が雲で隠れていることも多いそうなので....
天池の少し下には長いロープウェイが架かり,ゴンドラが下の駐車場から観光客を運ぶようになっている.さすが雪を被り,寒いので客はあまり乗っていない.ハイシーズンでフル稼働すれば,天池はかなりの観光客でごった返すであろう....と想像する.
下は,天池での眺め
新疆博物館は新疆ウイグルで最大の博物館だそうだ.楼蘭の美女と称されるミイラの展示で知られる.館内は撮影禁止で美女の写真はなし.髪色や顔の形から,美女はアジア系ではなくアーリア系のようだ.ミイラの保存状態はよく,やはり乾いた土地の成せる技であろう.ちょうど説明を受け,見学しているときに館内が停電になった.小さな懐中電灯で浮かび上がる美女が一層迫力を増したのは言うまでもない.ところで館に併設されたお土産販売コーナーは停電時にも,非常電源に切り替わり,照明が維持されていた.博物館本体が真っ暗で,併設販売コーナーだけは明るいとは,一体どう云う国なんだ~!と思うが,解りやすいと言えば解り易い思想か....
ここはバザールと言っても露店が並んでいる訳ではなく,4,5階建てくらいの大きな建物に,膨大な数のブースが並んだショッピングセンターだ.昔は露店が並んでいたのであろうが,大都会になってそれでは賄いきれなくなったのであろう.農産物,カーペット,インテリア用品......普通のバザール以上の品物が並んでいる.写真のように,通りに面し,世界共通の看板でKFCのレストランがあった.豚肉の心配がないのでウイグルの人にとっては好ましいのかも知れない.
ウイグル族はイスラム教徒なので,女性はスカーフを着けている.ウルムチには漢族,非ムスリム,もいっぱい入っているのでスカーフなしの女性もたくさんいる.
このバザール界隈には4本のミナレットを従えた大きな清真寺,つまりモスクが建てられている.”清真”はイスラムの意のようで,例えば機内食に”清真”と記されていたり,街のレストラン看板に”清真”と掲げられているのをよく見かける.これは食品に豚肉などイスラムで不都合な食品が使われていないことを表している,とすぐ判った.
バザールで並んでいたウイグルらしい商品
下は,二道橋バザールでの光景
ほんの一部に過ぎないが,バスから眺めたウルムチ市街の様子.