このセリム湖編では,9/22精河を後に西のセリム湖を訪れ,その後カザフスタンとの国境であるコルゴス国境に行ったときの写真を載せました.
セリム湖(賽里木湖)はマーカー13の辺りに位置している.
天山北路のウイグル側西端近くで,間もなくカザフスタンに入る.
9/22朝精河を出発し,西へと進んだ.途中道路脇には所定間隔で送電用鉄塔が地面に置いてあった.既に工場で組み立てられた完成形だ.後はここで地面に据えたコンクリート基礎に,鉄塔を起こしてボルトで固定すれば完成で,とても効率的だ.風車などを運ぶ例の巨大トレーラーと道が整備されていればこそ使える工法であろう.
放牧地をさらに進むと全く新しくリゾート施設を建設中だった.中国の観光地というと,どこでも人が多く,押し合い圧し合いの光景を思い浮かべるが,経済規模の膨張に合わせて今後さらにすごくなるであろう.そんな需要に合わせ,新規リゾート施設も増えていくであろう.
セリム湖周辺は良質な牧草地で,モンゴル族とカザフ族が多く住むそうだ.添乗Kさんによると,セリム湖(Sayram)はモンゴル語で『屋根の上の湖』カザフ語で『祝福』を意味するそうだが,同じ言葉なのに別の意味というのが何とも不思議だ.直接流れ込む川はなく,水源は雨水と周囲の岩石層から湧き出る泉だそうで,それに含まれる炭酸カルシウム(CaCO3)が湖水に溶け込んで青くきれいな色になるのだそうだ.
セリム湖の直ぐ南は天山山脈だ.こんなに近くに雪山があるのにその雪解け水が流れ込まないのは不思議ですね.ここの標高は2073mで,カナス湖ほどではないが結構涼しい.面積は457km2で,琵琶湖の2/3くらいに相当するそうだ.
ところで,水源が雨水と泉だけのため,塩分が蓄積し,微塩水ではあるが一応新疆高地最大の塩水湖となっているそうだ.数日前通り,遠目で眺めたパリコン湖も同じような形成要因で塩水湖だった.広い中国はやはりいろいろ揃っている.
セリム湖南側は丘陵の牧草地になっている.モンゴル族の白いゲルが2,3見えて,羊が移動しながら草を食んでいた.
セリム湖からは直ぐに天山支脈のトンネルに入る.そして深い谷に架かるループ状吊り橋を通過し,また先のトンネルに入り,ここでもループを描く.橋とトンネルはループと同時に下り勾配に描かれ,谷に向かっていく.なかなかの景観で,2011年に完成したそうである.
下は,セリム湖での写真
上記ループトンネルは高速道路の一部である.ただ従来からある旧道を拡張整備する形で建設したそうだ.旧道はチンギスカンが遠征時通ったこともあるという,昔からのもので,これを生活道路として活用してきた遊牧民は困ってしまう.そこで家畜の移動では,この高速道路を通過することを許可することになったそうだ.なかなか粋な計らいであろう.
↑高速道路を行く羊 | ↑高速道路を行く羊 |
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天山支脈を越え平地に出てきた.道端ではトウモロコシが広げられ,天日に晒され,乾燥されている.このトウモロコシ干し風景はこれから頻繁に見かけることになる.
さてバスはコルゴス国境に向けどんどん進んだ.途中の家々の壁が鮮やかなラベンダー色に塗られているのが目立つ.この辺りはラベンダーの産地だそうで,プロモーションも兼ねたシンボルカラーとして用いられているそうだ.
残念ながら花の季節は既に終えており,畑の様子からは何も窺い知ることだできない.収穫し乾燥したもの,枯れ草のように色は全く冴えないが袋詰で売られていたので買ってみたが,結構強い香りを放つものだ.確か20元程度で安かった.
芦草溝というところのようだ.伊○佳宴餐庁(○は羊の縦棒が下に突き抜けなしの漢字)で昼食となった.回族のご夫婦のお店で,ラグメンなどイスラム料理をいただいた.一年前にできたばかりの新しいお店のようである.
料理店のあった辺りは回族やカザフ族,それにモンゴル族や漢族....いろいろ住むが,お店の名前が皆似たようになり,見分けにくい問題があったそうだ.そこで街ではお店は番号を付け,判別容易化を図っているそうだ.例えば写真では#163清和回民XX店,と云う具合だ.
この辺りは,トウモロコシやラベンダーに加えて,ブドウの木も多く見られた.カシュガルの棚に大きく育つタイプでなく,ユーロッパに多い種のように丈が低い.モンゴル族や漢など,非イスラムも多く暮らしているので,ワインの需要も相当ありそう,いやそれどころか中国最高とされる長城ワインに次いで新疆ワインは有名らしい.
コルゴス国境にほど近くのこの辺りは,流通トラックの交通量が多く,途中レストランやカフェの需要は多かろう.これからカザフスタンとの交易は相当増えそうなので,そういった用途の店舗がちょっとした建設ラッシュになっているように見える.
下は,コルゴス国境手前辺りでの写真
バスはコルゴスの街にやって来た.大きな建物が建っているが,混み合ってはおらず,また街を行く人も疎らで,まだ街としてはこれから,と云った印象だ.
コルゴス国境の税関と入出国管理の新しい建物.中国側はとっくに完成しているのだが,この先(裏)に建つ筈のカザフスタン側が資金不足で滞っているそうだ.
中国とカザフスタンはこのコルゴス国境をまたぐエリアを自由貿易地域として設定し,気合を入れて開発を進めているのだが,カザフ側が少し遅れているわけだ.自由貿易地域とは関税が0(若しくは激安)ということで,特に中国側には有利らしい.
上記新税関の左手に従来からの税関があり,その前には通関を待つ中国製トラックが列を作っていた.型式や仕様書を窓に貼った乗用車もたくさん並んでいる.中国からは少なくとも自動車の輸出は多いのであろう.
カザフからは,大物では石油やガス,金やウラニウムなどの金属資源などが入るようだ.
税関近くでは霍爾果斯(コルゴス)国際商貿中心の看板を掲げたショッピングモールがあった.ここは石油やガスではなく,一般市民を対象としたカザフや中国のおみやげ品を販売している.
例えば写真は,主にカザフ経由で入るロシア製アウトドアショップで,ロシアが得意とするらしい双眼鏡や暗視鏡から,ゴムボートや釣具が並んでいる.
下は,コルゴス国境での写真
まあこれで一応シルクロード天山北路のうちの一ルート中国側最西端に行ったことになるのだろうか?その頃もコルゴスが果たして道の一つだったかどうか....?まあ,当時は舗装道路があった訳ではないし,国境も今とは全く異なっていたであろうからはっきりとは判らない.
さてコルゴスからはイーニンを目指し東に向かった.途中これでもかとばかりトウモロコシの乾燥風景が見える.別に路面にビニールシートを敷く訳でもなく(敷くときもあり),直接置くのだ.トウモロコシは最初塊のまま(正式名称不明だが焼きトウモロコシの販売単位)である程度乾燥し,頃合いを見て実を一粒毎(ポップコーン一粒になるところ)に剥がし,粒単位で路上に広げ,完全に干し上げるようである.
これがつぶつぶ剥がし機で,半乾きのトウモロコシを一本づつ左のコンベアに乗せると,右から剥ぎ取られた小粒の実と,芯が出てくるようだ.剥がし機は路上乾燥場を巡回し行くのであろう.
トウモロコシ乾燥の光景は頻繁に見るのだが,見飽きないし,心休まる.