このヤシュピルトへ編では,ヤシュピルト付近のGoogleマップ,2017年8月1日キルグスワシュクの朝,出発して間もなくの大変な谷越え,バトゥーラ氷河に入るときの様子,バトゥーラ氷河横断,ヤシュピルトに着いたとき,その後ヤシュピルトの午後の写真を載せました.
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さて8月1日朝,キルグスワシュク14で目覚め,バトゥーラ氷河15を横断し,ヤシュピルト16に到着した.
この日のログは
歩行時間:3:48hr
休止時間:1:36hr
歩行距離:7.95km
終点標高:3,287m
終点気圧:685hp
だった
昨日遅く張ってもらったテントはこんな風に並んでいた.朝の光は先ず高い山稜から照らし始めた.どうやら今日もいい天気のようだ,
さて殆ど食べてしまったが,たしかチャパティにお粥に,味噌汁に,オムレツに....そんな感じだったか.朝食は毎朝似たようなものだ.
朝食が終わるとテントが畳まれ,荷物をまとめて撤収準備だ.
この日も行程は短い.そこでキルグスワシュクを8時に出発した.
歩き始めると間もなく,水がガレた路面に流れる場になった.前日シャンプーで使った水源を同じくする流れであろうか.
少し進んだところで,脇をシェフNさんが2羽のニワトリを抱え追い越していった.2羽だけなのでケージに入れず,羽根元を直接持っている.今日の昼食若しくは夕食になるようだ.そして明日からはチキン料理はなくなるであろう.
そして次は大変な谷越えが待っていた.今は涸れているが春先雪解け水が流れる谷なのであろう.
斜面は急で,また砂地で崩れ易い.ここは自力ではとても下れない.後ろから添乗Nさん,前方にはポーターAさんに支えてもらってようやく谷底に着いた.
谷底からの上りも,私にとってはまた大変だ.ポーターAさんに引っ張ってもらってようやく上に出た.
上に着いたときはほっとした.
谷越えの後はバトゥーラ氷河アブレーションバレーを上流に向かって歩いた.谷越えに比べて正に天国のように感じられるトレイルだ.
先方にはバトゥーラ山塊と思しき山も見えてきた.
上Googleマップでトラックを見ると,Wudmur(ウドムル?)と記された辺りでバトゥーラ氷河に向かったようだ.そして最初にアブレーションバレーからサイドモレーンに上っていったようだ.
次いでサイドモレーンから,表面が石で覆われたバトゥーラ氷河本体に下っていった.堆積した石は大きなものも多く,氷はあまり露出していないが,所々に大きなクレバスが口を開けている.
黒い砂利の下に時々白い氷を覗かしている.黒と白のコントラストが大きく,ちょっとハッとする感激を覚える.
例えて言えば,荒野の川で砂金探しをやっていて,掬い上げた砂利の中でピカーっと光るゴールドを見たときの感激を,ささやかにしたようなもの,と全然見たこともないのに想像してみた.
バトゥーラ氷河横断途中まで進んだ.そして振り返るとバトゥーラ山塊をよく望むロケーションになった.
写真左端は無名峰,右隣大きな山がバトゥーラ1峰(Batura 1:7,794m),さらにその右順に2峰(Batura 2:7,762m),3峰(Batura 3:7,729m),4峰(Batura 4:7,594m)ということだ.なかなか見事だ.
ポーターAさんが,ピッケルで氷を砕いてくれた.それを頬張ると口の中がひんやりとして気持ちがいい.
白氷河に入りかける辺りでバトゥーラ1峰(Batura 1:7,794m)を見上げると岩壁の凹凸や雪庇の具合が良く見える.
バトゥーラムスターグ(Batura Muztagh)と称されるバトゥーラ1峰ピークは世界25番目に高く,カラコルム山脈で最西の支脈に位置するようだ.そして最初に登ったのは1976年,Hubert Bleicher氏とHerbert Oberhofer氏(両者独隊か?)ということだ.
さて白氷河が近づいてきた.ガイドAさんがルートを探しながら先を行った.
白氷河は凹凸が大きいようで,底に入ると周りがよく見えない.そこは経験と勘が物を言い,Aさんはかなりスイスイ先導する.もちろん戻って,別ルートに変更するケースもある.
ところどころに現れるクレバスは深い.なるべく離れて歩いた.
氷河は塑性変形を伴いながら下流方向に流動するが,地形によって流速が異なり,特に引張り応力が塑性耐力(氷は見るからに塑性変形し難い)を越えると割れる.そして割れた氷のブロックはそれぞれ流速が異なるのでそれらの隙間が拡大し幅の広いクレバスになるということだ.
白氷河領域が終わるとまた左岸側黒氷河領域に入った.そしてそこを横断するとサイドモレーンになり,アップダウンが繰り返された.そして上って写真のように一休みした.
左岸モレーンから急なトレイルを上ってヤシュピルトに着いた.ヤシュピルトは夏村で広大な放牧地に何軒もの石室小屋を備えている.これまであまりなかった清水がふんだんに流れているのもうれしい.それともちろん緑の大地にバトゥーラ氷河を挟み,バトゥーラウォールを望む景観は見事だ.
テントは直ぐに張ってくれた.前後扉を開放し,風を通さないと天気がいいので暑い.洗濯物はすぐ乾く.
ヤシュピルトは放牧地であるがゆえに家畜糞,特にヤギ糞が至るところに転がっている.
テントではなく,外にテーブルを置いて頂いた.スープに焼きそば,キューリなどであったか.
なお写真はないが,午後のティータイムには添乗Nさん提供梅酒ゼリーがなかなか美味だった.
さらに夕食は,前記シェフNさんが連れてきたチキンのビリアーニ(パキスタンスタイルチャーハン),チキンジンジャーなどであった.
ヤシュピルトの丘を縁まで歩き,左岸側から改めてバトゥーラ氷河を眺めてみた.
白氷河の幅に比べて,左右の黒氷河の幅が広い.それにしてもこの白い部分に黒い部分が交わらずに下流まで流れるものだ.不思議だ.
背後は岩山があり,その一部が土砂崩れを起こし砂斜面を形成している.土砂崩れは継続的に起こるのか,そこではあまり草が生えてない.
ヤシュピルトの午後は時間がたっぷりあった.テント脇には建築材料のこんな木材が転がっていた.見事なほど捻れながら成長した様子が想像され,驚く.過酷な環境で育ったのであろうが,捻じれながらも曲がらずに真っ直ぐ伸びた根性は見上げたものだ.
ところでこの木はユンズに向け下る坂道で見かけたビャクシンの木であろうか.
前述のようにポーターの多くは学生で若い.ヤシュピルトに着くと体力を持て余し,一部は草クリケットに,一部はカードゲームに興じていた.クリケットは元宗主国が英だったことを思い出させる.
なお一部問題のあったポーター数人にはこの日のうちに帰ってもらったそうだ.
夕刻南東方面を望むと夕日に輝く山々があった.あまり確かではないのだが左の2峰はシムシャールの山,真ん中がディスタギサール(Distaghil Sar:7,885m),その右大きいのは不明,右端がクンヤンチッシュ(Kunyang Chhish:7,852m)だったか.....
さてこうしてヤシュピルト一夜目に入っていった.明日は上流パヤクシートまで往復の予定だ.