このポクスンド湖へ編では2011年8月~9月ネパールヒマラヤのロアードルパのトレッキングで,バガラフェディからポクスンド湖へと歩いたときの写真とキャプションを載せました.
9月1日朝先ずバガラフェディ(Bagala Phedi)からポクスンド湖(Phoksundo Lake:3,600m)へと下った.同日ここに宿泊し,さらに翌9月2日から3日もここに滞在し,近くを歩いてみた.
9月1日は雨で明けたが,朝食の頃から徐々に上がっていった.お陰で8時頃には出発できるようになった.
下る方向には川が走り,その右に沿うトレイルを下る筈だ.こうして上から眺める限り,緩やかで楽そうに見える.なお川はマデュワ川(Maduwa Khola)であろう.
ところがどっこい,歩き始めるとマデュワ川に流れ込む小川が現れ,渡渉することになった.一箇所は深そうで,そのまま素早く渡った人もいたが,軟弱な私はどうしたものかと迷った末,結局靴を脱ぎ渡った.
これで川渡りは終わりかな~?と思って歩いていると,またも現れ,合わせて3回渡ったようだった.
渡渉の後はなだらかな道が続いた.そして9時過ぎバガラベースキャンプ(Bagala Base Camp:3,980m)とちょっと大仰な名(地図に記されている)の付いたヤクカルカに到着した.緑豊かな草原で気持ちのいい所だ.
この周辺には左写真のようなテント小屋や,下の写真のような石造りの家屋が数軒,いや十軒以上か?見られる.ヤクや,ヤギや羊などの酪農を営んでいるようだ.
バガラベースキャンプ辺りでは西にカグマラ(Kagmara:5,978m)(若しくは別名カクマレーカン/Kagmar Gang)が見えた.さほど高いわけではないがなかなか美しい山だ.
この辺りの標高は3,980mで,ドータラップ辺りと近く,多分夏だけの村と思われる.上述のようにテント小屋の他に,写真のような石造りの家も建てられている.先ず傾斜のある屋根が珍しいように思える.ジュファールから,ドータラップやトキュウまで概ねフラットな屋根であっただけに,ちょっと驚く.雨が多いのだろうか?
もう一つ,窓が少ないのは同じだが,石壁には木の枠が嵌め込まれている.ここは木材が豊富なので石積みの脆さ補強に活用されているのであろう.逆にドータラップでは不要なのはなく,木材入手困難故に組み込めないのであろう,多分.
バガラベースキャンプの先では,高巻きのトレイル下をマデュワ川渓谷が深くふかく流れていく.やがて対岸に平坦な畑と集落が見えてきた.地図を見るとどうやら川と同名のマデュワ(Maduwa)村のようだ.この村は3日後ポクスンド湖からチェプカに下るトレイルからも良く見えて,何気なく印象に残っている.
下は,マデュワ川渓谷辺りまでの写真
やがてトレイルはマデュワ川渓谷を離れ,北に進路を変える.そしてトレイルは岩山に貼り付く如く細い登りとなった.
暫く登ると,向かう方向の背後,南にはスリ川(Suli Khola)を下方に望むようになる.こうして眺めると随分高いところまで登ったのかな~と感じられる.また写真左下側からは先ほどまで平行して歩いたトレイル脇のマデュワ川渓谷がスリ川に流れ込んでいる様子もよく解る.
なおこの合流点以南はスリ川であるが,それより北,ポクスンド湖から合流点までの間はポクスンド川(Phoksundo Khola)の名が与えられているようだ.
やがて左に,ポクスンド川途中で落下する滝を望む場所に来る.いつまで経っても途切れずに白く流れ落ちる様もなかなかいいものだ.落差200mでネパールで一番高いということだが,名前は付いていないのか,地図に滝自体は載っていない(滝のビューポイントは載っている)し,ガイドDさんも単に『滝』としか言わなかった.
岩山を登ると大きな杉等が林立する林に入る.そしてこれを進むとやがて,先にリンモ村(Ringmo,Ringmogaon)とポクスンド湖(Phoksundo Lake)が見えてきた.あ~これで間もなく今日の行程は終わりだな~と思う.
リンモ村周囲には広い麦畑があって,あちこちに茶色の素朴なチョルテンが目立つ.ここも熱心なボン教若しくは仏教の村なのであろう.
ポクスンド川を越え,リンモ村を横切り,麦畑を通りポクスンド湖脇のキャンプサイトに到着した.ポクスンド湖のエメラルドグリーンというか,トルコ石色(ターコイズ)というか,湖面はとてもきれいだ.波打ち際で眺めると湖底が見えて透明度も高いようだ.
キャンプサイトで日向ぼっこをしていると,リンモ村の婦人が手織りと思われる布製品を携えて売り込みにやって来た.ご当人(左の女性)も身に着けているが,巻きスカートなどのようだ.右は馬方のDさんが,奥さんへのお土産にどうか(多分)と試着し,可笑しいので,もう一人の馬方Dさんが脇で頻りにはやし立て,何だかんだと評論する.でも結局婦人用衣服の良し悪しは判断できない,という結論に達したようで,売上は立たなかったようだ.女性は随分淡白で,あ,今日は間に合ってますか,と笑顔で引き上げていった.ドルパ人爽やかだ.
ところでこのような巻きスカートは,チベットを含め,他ではあまり見かけたことがなかったような気がする.ドルパ地方特有のファッションであろうか?
下は,ポクスンド湖に至るまでの写真
この日もいろいろ咲いていた.ピントずれが多かったが,比較的ぼけてないのを集めてみた.
9月2日,今日はここポクスンド湖滞在で,皆さんと一緒に湖の東側に出掛けた.皆さんは相当上の方まで行ったが私は少し歩き,戻った.
さてキャンプサイトから湖東に行く際ポクスンド川の橋を渡るのだが,その橋から川上を見ると写真のようになかなか豪快な景色が楽しめる.つまり湖の南側でポクスンド川が始まるのだが.静かな湖面から流れ出ると直ちに急流となって,波を立てながら下っていく.ダムではこれが普通だが,自然の流れ出しシーンは見たことがなく,かなり感激した.
ポクスンド湖畔を東に回るとボン教の古いゴンパがあった.また対岸西方向には待望のカンジロバ(Kanjeralwa:6,612m)が辛うじてながら頭を覗かせてくれた.う~ん,いい光景だ.カンジロバはこの辺りでは高いが,他エリアも含めると決して高い訳ではない.しかし別ページでも挙げた川喜田二郎著「鳥葬の国」に記された既に50年前のドキュメンタリーにも登場する日本人に縁深い山であるので感慨深いものがある.
ここはボン教のゴンパだそうだ.外側を眺めさせてもらっただけであるが,複数の建物があり,複数のラマ僧を見かけたりするのでドータラップで訪問したゴンパより規模が大きいように見えた.ズラリ並んだチョルテンや建物の外観などからするとここも相当歴史がありそうだ.
ここはリンモ村(Ringmo,Ringmogaon)の直ぐ近くであるが,リンモ以外は非常に遠く離れていよう.なので信徒の殆どはリンモ村住民ということになるのだろうか?
下は,ポクスンド湖東側畔の写真
翌9月3日もまたここポクスンド湖滞在だ.朝が明け東の空を見上げると,いつも頂上を隠しているソナムカン(Sonam Kang:6,019m)が珍しくくっきり姿を現していた.いざ姿を見せればなかなか滑らかで綺麗な山容だ.
この日は前日とは反対のポクスンド湖西側のトレイルを歩いてみた.私はほんのちょっと行ったに過ぎないが,それでも戻り,西から湖に注ぐ川の辺りの林に迷い込み少々手こずってしまった.
ところでこのトレイルはアッパードルパはシェイゴンパに連なるそうで,もう少し先では東の山から流れ込む川の多くで,膝上まで浸かり渡渉したと,スペイン隊のガイド青年が話してくれたことを思い出す.大変そうだ.
これもなかなかいい眺めだ.対岸山の雲の多い所が,朝現れていたソナムカン(Sonam Kang)のある辺りだ.短い時間で姿を消したのはちょっと残念だ.
ポクスンド湖周辺には有名だが滅多なことでは姿を見せないユキヒョウや,数日前宿泊した場所の名にもあるナワル(ブルーシープ)などが棲息しているそうだ.湖に魚はいるか?....これは不明だが,生息していてもチベット人は魚を食べないので捕獲しないと思う.
下は,ポクスンド湖西側からの写真
9月2~3日はたっぷりと時間があったのでリンモ(Ringmo)の村を回ってみた.先ず左写真は村背後チョルテンの丘から見下ろした眺めだ.ザーッとみて総戸数30軒余りあろうか,家々は比較的密集し,概ね住宅断面は』型で,少し緑化されたフラットな屋根,そんな特徴が読み取れる.
ただ一番驚くのは新築中の家が多いことだ.この写真だけで,右側に工事中のものが2軒見える.村を回ったら,学校らしき建物も含めて5戸くらいの新築や増築工事が行われている.すごい割合で羨ましい限りだ.斧やハンマーを振るう大工も大勢工事に携わっているが,多分遠く他村からも出稼ぎに来ているのではなかろうか.まあ,いずれにしても景気が良さそうだ.
リンモに限らないが屋根は大いに活用されている.この写真でも作物の乾燥や法事の集まりに使われている.少し前までラマ僧がいて読経の声が響いていたそうだ(私はその後に来たのだが).ラマ僧は前日訪れた湖畔のゴンパからであろうか?
ところで村を歩いていると背中に赤ん坊を背負った人が多い.出生率は十分高そうだし,住宅もどんどん新築中だし,過疎化とかの心配は全く無さそうで,喜ばしいことだ.
民家庭先で機織りしていた.両足ペダルで縦糸を1本おきに上下させ,そこに横から大きなシャトルを走らせ横糸を織り込む.最も一般的な織り方だ.この女性が,手織りの生地を屋根上の部屋に展示し,販売するというのでJさんと一緒に梯子で登った.生地はJさんが買い求め,私はほの暗い一階の部屋の雰囲気や少々厄介な梯子体験を味わうことができた.なお左の写真自体は買い求めてくれた見返りの実演ショーでのものだ.
ところで生地は意外と軽いとの評を聞いたが,素材はウールであったかな?
下は,リンモ村点描
リンモ村辺りの花や木の実