アルシェイArchei
このアルシェイ編では,2019年2月2日テルケイ東のキャンプサイトで朝を迎え,徒歩で近くのテルケイ岩絵を見物,その後トークの井戸を見て,古代墓を訪ね,クギ渓谷の奇岩の数々を眺め,ここでランチ.午後は先ず深い井戸を訪れ,次いでマンダゲリの岩絵を見物,その後アルシェイのインフォメーションを経て,この日のキャンプサイトに着くまでの写真を載せました.
アルシェイ付近のマップmap around Archei
テルケイ東8から,岩絵や井戸を見物しながら,東へ,そして北へと走りアルシェイ9に移動した.
別窓で大きなチャド付近Googleマップを開くテルケイ東の朝morning at Terkey
テルケイ東では広々とテントが張られていた
テルケイ東の朝になった.明るくなり,見渡すと広々とテントが張られていた.トレッキングのキャンプでは僅かなエリアに密に,しかも段々に張らざるを得ないことが多いが,さすが砂漠のサイトは土地だけはふんだんにある.
荷物は車に積み,私達は歩き始める
朝食の後,荷物は車に積み込み,私達はここから近いと云うテルケイ東の岩絵の場所に歩いて向かうことになった.岩絵を見た頃合いを見計らって車でピックアップしてくれるそうだ.
テルケイ東の岩絵rock art at Terkey
テルケイ東の洞窟
キャンプサイトから少し歩くと,岩絵のある岩山に着いた.山の脇っぱらには大きな洞窟が付いている.洞窟は内部で入り組んだ形で続いている.山は全て砂岩に分類されるそうだが,特に風化し易い地層がこうした洞窟を形成したという.
天井に大きな牛の絵
随分大きな牛の親子だ.天井に描くのは現代のキリスト教会フレスコ画でも大変なことだそうで,これも苦労して描いたことであろう.
真下から見上げた牛の絵
上の天井画を真下から見上げるとこのように見える.お乳が大きく白く強調されている.牛を家畜化したという4,000BC以降で,特別な思い入れを込めて描かれたように見える.
兵士を乗せて飛ぶが如く駆ける馬
馬の前脚が揃って前に張り出し,後ろ脚は殆ど水平まで蹴り上げている.空を飛んでいるようでもあり,また水中を泳いているようにも見える.馬の速さを抽象化して表現したようである.
また上に乗っている人は槍のようなものを持っているので,多分兵士であろう.中程の兵士は馬の背に立っているような姿で,これまた勇敢さを表しているのではなかろうか.
飛ぶ馬をモチーフとした絵は他でも比較的よく見られるという.しかしこの絵のように人が乗り,飛ぶような絵は他に例を見ないということだ.1,200BC頃から馬が導入されたというが,同時に騎馬戦による戦闘,しかも多数同時に戦う団体戦も始まったということでしょうか.
これはヤギでしょうか
これはヤギでしょうか?世界全体で見ると,ヤギは犬に続いて家畜化時期が早いそうだ.牛や馬の絵と比べて脚が細く,やはりヤギを思い起こさせ,また腹部が白く着色されているので,牛の乳部と同じように,ヤギミルクも大事にされたのかもしれない.
それと他の動物では大腿部と下腿部があたかも連続的な一本で描かれている.一方この絵(ヤギ)は腿部と下腿部は関節で折れ曲がり,より自然な描写に見える.
模様のある牛の親子
模様のある親牛と,普通の子牛だ.白と黒,あるいは白と茶色の斑のある牛を描いたのであろうが,普通はフリーハンドで描いたような斑であろうが,ここでは直線の斑として抽象化されている.
周りの女性は横に張り出したヘアスタイルにスカート姿,男性は牛追いの棒切れを手にしている.
今度は羊でしょうか
これまでの家畜の絵と比べて,胴体が大きく脚が短い.家畜だとすると羊になろうか.そうだとすると,羊の行動様式,つまり同じ方に固まって歩く様子のように思われる.棒を持つ二人の羊飼い男性に,一人の女性の姿が描かれる.棒は持ってないが女性も両手を広げ羊を囲っている動作を見せている.
複数すり鉢を彫り込んだ大きな石
この石は巨大で運搬できまい.複数の凹面が削られ,多量の絵の具が同時に作られたのであろう.絵は無数にあるし,最初の牛のように巨大なものもある.また少なくとも暗褐色と白,2種の絵の具は必要だ.
なお,絵の具の主材料は色付きの石やオークル(ocre:黄土)を砕き,磨り潰し,卵など混ぜて作ったそうだ.ただこれで描いただけでは耐久性に欠け,岩絵の表面に保護コーティングを施してあるそうだ.コーティング剤はアカシアの樹液が用いられたようだ.
トークの井戸tok Well(?)
続々と家畜が集まってくる
テルケイ東から車でトークの井戸にやって来た.井戸には遊牧民がたくさんの家畜を連れて集まってくる.女性が多いが,男性や少年の姿も見える.
左側の一団は羊のように見える.これまでヤギはとても多いが,羊はいないな~と思っていたのだが,どうやら飼育されているようだ.
ここではガイドリーダートゥブ族Tさんが交渉し,撮影の許可をとってくれた.トゥブ族の井戸なのかどうか訊かなかったが,とにかく写真が撮れるのはとても嬉しい.写真のあるなしで記憶の蘇りは,私の老化した脳では100倍位違ってくるのだ.
井戸の周りに寄ってくる
家畜は井戸の場所を知っており,井戸周囲の水桶に汲み上げた水が満たされ,タイミングを見計らってそれが味わえるものと心得ている.
ただ飼い主は家畜毎,或いは所有者ごとの水飲み順を定めているようで,割り込んだりすると追い払われる場合もある.なぜかロバは後回しにされやすく,やはりロバの生きる道は険しい.
つるべで汲み上げる女性
傍で覗かせてもらったが,深さは5mくらいあろうか,女性がロープの先に繋いだつるべ(釣瓶)を落とし,吊り上げ,脇の家畜用水桶に注ぐ.なかなか重労働だ.
頭が写ってない右下が,毛は長くないもののコロコロしているので羊と思われる.
井戸は社交の場,出会いの場でもある
右側二人の女性はそれぞれお子さん連れで,談笑中だ.また年頃の子にとっては出会いの場にもなっているようだ.遊牧民はなかなか人と会う機会は少なかろうから,井戸は文字通り井戸端会議の社交場なのだそうだ.
ラクダは飲み溜め可能
大きなラクダが数頭豪快に水桶に口を入れ飲む.ラクダは飲み溜め可能ということなので,ここに来るときは目一杯飲むのであろうか?それとも普段はやはり適量一日分くらいに留めるのでしょうか.
持ち帰りの水
炊事や洗濯に使うであろう水をポリ容器に注いでいる.ラクダはともかくとして,他の家畜はここで朝一度だけの水では不足かも知れない.それになぜかヤギは来ていないようだし...そうした家畜のために,水を持ち帰るのであろう.その重いポリ容器を背負うのは専らロバだ.
古代墓Ancient tomb
盛り石塚の墓
トーク井戸を離れ少し行くと,黒っぽい盛り石の塚が複数基あった.写真では中央とその左背後,右背後に見えている.紀元後からイスラム以前に作られたお墓ということだ.かなり大きいので当時の有力者のお墓ではなかろうか.
盛り石の石片
盛り石は石片を積み上げている.そして欠けた石の断面を見ると,砂岩で,表面はEさんの解説が思い出せないが黒化している.石片は大きな岩を砕いたのでしょうか,それともこうしたものを拾い集めたのでしょうか.
クギ渓谷Kugi valley(?)
林立するボトルロック
古代墓を後にクギ渓谷(Kugi valley?)にやって来た.そこで見た限り渓谷(valley)には見えないが,雨季には水が流れるのかも知れない.
クギ渓谷は奇岩がいろいろあるというので,それを眺めに寄ったのだ.写真はその一例でワインボトルのような岩が林立している.手前中央はスフィンクスかな.
大きな象の岩
大きな象の岩だ.あと暫くしたら鼻が落ちるかな.....でも巨大だから相当先になろう.
巨大棍棒
中世ヨーロッパで武器として使われた棍棒のようだ.
岩陰を探しランチ
ちょうど昼時になり,適当な岩陰を探して停車.ここでマットを敷いて,スタッフの皆さんがランチを用意してくれた.
写真を見るとピラフのようだ.それにスイカのデザートも付いている.スイカは当たり外れなくいつも美味しい.
チャドのお札
いきなり本題から離れてしまうが,ポケットに1000フラン,5000フラン紙幣があったので写してみた.砂漠なのでたまにコークを買ったりするしか用がないのだが....
公用語は仏語とアラビア語の2つだと云うが,お札を見る限り仏語のみで印刷されている.実質的には仏語だけが主に使われるのであろうか.(インドなどでは17語とかで印刷されている)
エライ人が誰であるか記してないのはちょっと妙な気がする.そして絵柄が自然や記念的建造物ではなく,木材の積み出しや,港湾の景色であるところが一風変わっているように感じる.今は経済発展が重要課題なのでしょう.
深い井戸a deep well
深い井戸に至る
ランチの後,朝とは違うところにあるという深い井戸にやって来た.朝の井戸はあれほど多くの家畜が来ていたのにここでは気が抜けたように静かだ.ただ水は飲んでいない(水桶に水はない)が周囲にロバやラクダは数頭見える.
井戸を覗き込むと随分と深い.朝のトーク井戸と比較すると2倍くらい深いであろうか.
スタッフの皆さんが水汲み
スタッフの皆さんが,長いロープの端に革袋のつるべを付けて水汲みをした.これを何度か繰り返し,ポリタンクを幾つも満タンにした.
ラクダの男性が現れる
そこへラクダに跨ったかっこいい男性が現れた.オマーシャリフのアリ首長であれば,少し離れた位置から銃撃し....かも知れない.幸いかっこいい男性はリーダーTさんと同じトゥブ族なのか,2,3友好的に会話を交わすと立ち去っていった.平和裏に水補給が済み,ホッとした.
ロバに水を汲んであげる
スタッフの皆さんは集まってきたロバに水をあげるため,深い井戸から水を汲み上げ,傍らの水瓶に注いだ.ロバたちは首を突っ込んで水を飲む.いい人たちに会えてロバもラッキーだったと思う.
マンダゲリの岩絵rock art at Manda Gueli
マンダゲリに着いた
エネディー山地で最も素晴らしい岩絵があると言われるマンダゲリの洞窟に着いた.洞窟は深く入り組んでいるが洞窟の前に立つと天井や側壁に描かれている様子が見える.
オリックスの角を着けた騎馬兵
兵士の頭にはオリックスの長い角が着いている.また馬の尻尾にはフサフサしたものが描かれている.いずれも騎馬兵が実戦でかっこ良く飾り立てるために用いられたのでしょうか.
なお左下のラクダは一般的な白ではなく,馬と同じ暗褐色で描かれている.
大きなラクダ
これは定石通り白く描かれた大きなラクダの絵だ.ラクダの特徴が上手く表現されていると思う.
ただちょっと不思議なのは,ラクダは一般に右前肢と右後肢,左前肢と左後肢がペアになって歩く側対歩なのだそうだが,この絵では右前肢と左後肢,左前肢と右後肢がペアで動く斜対歩のように見える.ただこのアーティストは,馬は飛ぶように描くし,抽象表現を重視したのであろうか.
ところで斜対歩の動物は馬などで,ロバはラクダ同様側対歩ということだ.
丸い頭のボロロ族(bororo)
たくさんの牛の中に描かれた丸い頭の人物は,よそでも見てきたが,ここでも見える.
実はこの丸い頭の人物は現代も近くで暮らしているボロロ族(bororo)ではないかとされているそうだ.ボロロ族は男性が化粧し,美男コンテストなどすることで知られ,チャド西部からナイジェリア,カメルーン等移動しながら暮らすサヘルの遊牧民,現代はイスラムということだ.
牛の親子にラクダの親子
母牛は乳部だけでなくお腹も白く,また随分立派な白い角を付けている.大きな角の牛はこの地方を含めてアフリカでは多いようだ.
ラクダは上の大きな白いラクダと違って,右前肢と右後肢,左前肢と左後肢がペアの側対歩で描かれている.やはりアーティストの流儀の違いであろう.それと,ラクダの頭から胴体にかけて白いハーネス,それにムチを手にした御者まで描かれ,なかなか細密で,躍動感豊かな絵だ.
マンダゲリ洞窟内部
マンダゲリ洞窟内部は折れ曲がり,上下し,天井の低いところもあって,手を触れながら歩いた.場所によってはフジツボ形の虫の巣跡のようなものもたくさん,ちょっと気持ち悪く付着している.虫の種類によっては雨風が防げて営巣にいいのであろう.
アルシェイのインフォメーションArchei Information
エリア管理者のお宅
この日はアルシェイでテントを張るし,また明日はアルシェイのゲルタ(Guelta:水の溜まっているところ)を訪問予定で,リーダーがこちらのエリア管理者宅を訪れた.許可と共にインフォメーションも入手してきたようだ.
建設中の住宅
完成した住宅は上の通り,屋根も壁も植物を編んだ筵で覆われている.
一方こちらは引っ越してまだ間がないためか,骨組みだけ完成し,筵掛けはこれからである.
構造材は比較的細い木材を紐で結んだようだ.特に屋根の垂木は細くして軽量化を図っているようだ.
近所の奥さんが急遽露店を開店
近所には数軒の住居があるようで,私達の車が停まったのを見たのであろう,2,3人の奥さんが子連れで管理者宅前の道路に露店を開いた.
商品はザルや,ひょうたんの容器,石ころ....などで,すみません間に合ってます,といったところだ.
ただこれらのお宅の中の一軒から,シェフはヤギを一匹仕入れたようで,今夜はヤギ肉料理が楽しめそうだ.生きたヤギは相当前に訪れたバルトロ氷河以来,羊はバトゥーラ氷河以来だな~砂漠と氷河,圧倒的に違うが皆イスラム圏という共通点がある.
アルシェイのキャンプサイトArchei camp site
アルシェイのキャンプサイトに到着
この日は早目の4:20PMころアルシェイのキャンプサイトに到着した.ここもまた奇岩のある山の脇でいいところだ.荷物が降りると先ずはビール冷やしのルーチンワークを実行した.
ヤギ肉料理を待つ
ヤギはシェフの手でハラール処理されて,お肉になったころであろうか.今日は早い到着なので夕食までは間がありそうだ.
お料理ができる前にビールを飲み始める.誰もがこうして食事の前に飲み干してしまうのだ.一人一本しか無いのでやむを得ない.
で暗くなって,ヤギ料理,シチューのようなものだったかな~お肉はちょっと硬かったかも.それとフライドポテトなど添えてあったようだ.市場やポリス,軍...とかと違って写真はもちろん自由なのだが,暗いとつい億劫になる.今思うに撮っておけば良かった.星空もよく見えるのだが,長時間露光も面倒だし....と,情けない.