ハバイケHabaike
このハバイケ編では,2019年2月3日アルシェイで朝が明け,アルシェイのゲルタ岩山入り口までランクルで送ってもらい,ゲルタ岩山ハイクでゲルタビューポイントに至り見物.暫く滞在後反対側急斜面を下り,そこでロバに乗りゲルタを渡り,少し先でランチ.午後はカチャビーの井戸で給水し,ベシケの岩絵を見て,ニャラの風景を眺めつつハバイケに至り,キャンプしたときの写真を載せました.
ハバイケ付近のマップmap around Habaike
この日はアルシェイで朝を迎え,アルシェイのゲルタ岩山入り口までランクルで行き,ハイキングでゲルタビューポイントに至り見物.その後ランチ,カチャビーの井戸,ベシケの岩絵を経てハバイケに行った.
別窓で大きなチャド付近Googleマップを開くアルシェイの朝in the morning at Archei
アルシェイのキャンプサイトで朝食
アルシェイのキャンプサイトは今日も晴天で明けた.テーブルには朝食の食事を並べてもらい頂戴する.このところルーティンとしてシリアルに粉ミルクを掛け,お湯を注いだと思う.もちろんパンかチャパティ的なものも食べた筈だ.
食事が終わると,車に荷を積み,アルシェイのゲルタに向かった.
アルシェイのゲルタを見下ろす山の麓に着く
今回旅行のハイライトの一つアルシェイのゲルタ(Archei Guelta)を見下ろすには近くの山に上るのが最適で,その山のハイキングを始める麓に到着した.
ガイドEさんからは軽いハイキングではなく,岩山ですから十分注意するよう案内があった.
ゲルタ上りハイクGuelta Hike
ゲルタハイク最初の休憩
岩山を上り始めて,少しして平らなところに出て,最初の休憩を取った.少しバラバラになった足並みをここで再び揃えるという.トレイルは急ではないが,左右狭い岩の隙間や,上下の岩に挟まれたところ,飛び越えるゴロゴロ岩といった場所が多い.
岩に掴まりながら上ってくる
後ろを振り向きUさんたちの様子を見る.砂岩のトレイルは,土は殆どなく,殆ど岩で,周りもまた岩だ.そしてそこに手を掛け,上って来る.
トラバーストレイル
先行者がトラバーストレイルを上っていく.結構上ったかな~いや,高さ自体は大したことないであろう.
ここでまた一休み
ちょうど休むに手頃な空間(と言ってもベンチになる石があるわけではないが)があり,ここでまた一休みとなった.
スタッフの中で,4人のドライバはゲルタの対岸に車を移動させるので,このハイクにはシェフUgさん,アシスタントAsさんがついて来てくれた.
短い区間だが所々大きな段差あり
岩山なので段差のあるところもある.こうして見ると砂岩が地層ごとに侵食され,空洞になったところもあれば,空洞が繋がって,独立した岩となって転がり落ちたりして,或いはまた岩の一方が陥没して傾斜したり....とまあ,いろいろな地形ができたようだ.
大分上って調整
大分上ってかな~ここらで先頭と後ろの間が開いたのでちょっと休んで調整だ.
どこもかしこも砂岩なので,改めてブリタニカ百科事典を紐解いてみると,
“ 主成分鉱物として石英,長石,白雲母などを含み,副成分鉱物として磁鉄鉱,チタン鉄鉱,ジルコン,電気石,柘榴石,金紅石などを含む砂粒 (0.1~2mm) が固結した堆積岩をいう.”
と述べられている.この言葉だけ聞くと,和菓子のおこしのようなものを連想するが,とんでもない粒状物が集まったようには全く見えず,完全に大きな岩の塊だ.
岩の隙間に植物が生える
ただ風化で砕けた砂岩は元の砂粒に戻るのもまた事実で,そのような砂粒が岩の隙間に溜まり,透かさずそにに草や木が生えている.
話は飛ぶが砂岩は粉末冶金法で作られた機械部品に似ていようか.つまり,鉄(鋼),銅,ニッケル,クロム,タングステンなど各種金属粉をブレンドし,それを金型に入れて,プレスして成形し,成形されたものを炉に入れ,融点近くまで加熱して部品に仕上げる.こうした金属は焼結合金などと呼ばれるが,ヘリカルインボリュートギヤのように複雑にして高精度,しかも強度のある部品を作ることができる.また金属粉焼結後に残る目に見えないほど小さな隙間を逆手に取り,そこに潤滑剤を含ませ,無給油のギヤやカムなどとして活用される.
さて砂岩に戻ると,一般に砂粒のすきまは粘土物質を主とする泥質物で満たされており,ときとして炭酸カルシウム,シリカ(二酸化ケイ素),酸化鉄などの膠結(こうけつ)物質で満たされているという.素人的には泥質物がヤワだと風化し,バラバラになるということでしょうか.なお粉末冶金法では銅粉がよく粘結剤として利用される.
さてそろそろゲルタビューポイントか
茶色の岩山に着いた.先方には暗褐色の峰々が聳え立っている.これぞ正しくエネデイー山地の景観か.
さてこうした砂岩の山はロッククライマーにとってどうなんだろう.素人目には硬そう(実際成り立ちによっては硬いそうだ)だが,層によっては風化され易いように,水を吸収し,また風でさえも脆くなっているケースが多いのだそうだ,ということで雨の後数日間はハーケンを打って登るようなクライミングは適さないらしい.
日本でロッククライミングで知られる砂岩の岩山は神奈川/鷹取山,千葉/鋸山など知られるそうだが比較的少ないのだそうだ.
ゲルタビューGuelta View
ゲルタビューポイントに到着
アルシェイのゲルタにはサハラ最後のワニが7匹棲息するとされ,人の声に敏感で,それを聴くと直ぐ水中に身を隠すそうだ.なので声を出さないよう指示を受け,先に進んだ.
そしてゲルタビューポイントに到着した.見下ろすと褐色岩山に囲まれ,水を湛えた峡谷が見える.こうした砂漠の水たまり場はゲルタ(Guelta)と呼ばれるそうだ.
山でなく周囲が砂だけのところに水たまりがあれば,普通のオアシスで,ヤシや他の植物が周りに生えて,これまた美しい筈だ.一方ここは高い岩山に囲まれた谷という特異な景観で,これまた実に見事だ.
ラクダが集まる
たくさんのラクダを連れて水飲みに集まってきた.トークの井戸とかでは人力で汲み上げないとならないが,ここは最初から水が満ちているので汲み上げなくていいのだ.一人のラクダ引きがたくさん引き連れ,またラクダも無競争で目一杯飲むことができよう.
アルシェイのゲルタは雨季には面積が広がるが,乾季が続いても枯れることはないそうだ.つまりこのゲルタには3箇所水の湧き出ている泉があり,現在程度の水位が維持されているということだ.
ところでここはチャドの代表的観光地であろうか何しろチャドだ,観光客は甚だ少ない.ただオーストリア男性2人連れとここで出会った.彼らもこの先似たようなコースを辿ったようで2,3回再会した.
隙間を這って少し奥へ
で彼らに,この隙間を抜けるとも少し手前側が見えますよ,と勧めた,それを実行しているところ.這わないで外側を歩いても行けるのだが,岩の縁が間近に迫り,怖い.私も縁は歩かず,這って向こうに行った.
真下が見える
ビューポイントの向こう側に渡ると直下付近まで見える.そしてその辺りまでラクダが来ているようだ.ラクダ引きの人も複数見える.
水に入ったり,渡ったりしているラクダも見える.当然排泄物も水に落ちるわけで,水はクリーンではなく,底に堆積し,実際黒ずんでいるように見える.ただその堆積排泄物の養分で藻類が生え,そしてその藻類を餌とする魚が育ち,その魚を餌としてサハラ最後のワニが棲息できているという.ワニは際どい状況にあるが,長い期間興味深い連鎖で生きてきたのですね.
ロバも渡ってくる
ロバは単に水飲みに来たのではなく,荷物運びの途中,ついでにここで水を飲むようだ.ラクダと違って,全然長居はしない,いや殆ど立ち止まることさえなく,歩きながら啜っている感じだ.ロバは哀れだ.
ワニを探すが見当たらず
これまでのUさん,Eさんの経験ではワニは先程ロバが渡った先方の岸辺やその近くの草むらで見えることが多かったという.そこで私達もその辺りを必死に目を凝らした.....が,誰も見つけることができなかった.この日はそのような場所に一家族がロバを連れて何の仕事か不明だが,少し留まっていたので,それでどこかに隠れてしまったのかも知れない.
アルシェイのゲルタのワニはサハラ最後のワニ,デザートクロコダイル(desert crocodile)とも称され,大きなナイルワニ(5m)の体が,こうした厳しい環境に適合すべく矮小化(1.5m~2m)した種とされるそうだ.現在7匹生存と確認されているそうだが,この先はかなり心配だ.
さらにいろいろ見渡してみる
ワニはまさか山の上には居ないが,その麓の辺りにひょっとしたら寝そべっているかも....と,さらに見渡してみる.でもやはり見えない.
リーダーTさんの属するトゥブ族の人々はワニを神聖視し,ゲルタからこのワニがいなくなると水が枯れると信じ,大切にしているという.そして人がワニを襲うなど考えられないし,ワニが人やラクダを襲うこともないそうである.関係あるかどうか判らないが,昔ワシントンDCのスミソニアン博物館でナイルワニのミイラを見たことがあった.古代エジプトでも神聖であったのでは....
ゲルタ渡りcross the Guelta
下山し,ゲルタをロバで渡る
昨年までは,上ってきた道を折返し下ったそうだ.今回はUさん,Eさんの相談で反対側,つまり急斜面があるがゲルタ側に降り,そこからロバで渡る案でまとまったそうだ.同じルートより変化があっていいと思う.
写真は全員ゲルタの岸辺に降り,一人づつロバで渡っているところ.ロバ引き女性がしっかり手綱を引いてくれるので安心だ.料金は2ユーロ/一人と,ここらの諸物価相場からすると高めだが,いつ来るとも知れない客を待つ(実際滅多に来ないと思われる)時間も含めて計算すると安いだろう.
ゲルタ対岸に着く
ロバでゲルタを渡り,対岸に出た.眼の前,とは言っても間があるが,ラクダが多く休んでいる.あまり近くになりカメラを向けようとするとラクダ引きに怒られるのだ.
も一度ゲルタ対岸に渡る
水位が下がったためか,確か一部ゲルタの中を歩いて通過できる細道が浮かんでおり,そこをも一度反対側対岸に渡った.
そして振り返って遠くから眺めた風景がこれだ.大きな岩山とその前のラクダ,そしてそれらがゲルタ湖面に映し出された光景,なかなか素晴らしい.
ゲルタを過ぎ渓谷状地面を歩く
かくしてゲルタは終わった.ただまだ高い高い岩山に挟まれた渓谷状地面を歩く.渓谷はV字よりU字谷に近いかな.
周囲の岩山は折れ曲がり,洞穴があり,また縦横に溝が入り,天辺もタッシリ状から,とんがり状....いろいろ変化に富んでいる.
ランチlunch
そしてランチ場に至る
そして大きなアカシアの木の下で4台のランクルが停まっているランチ場に到着した.
このアカシアはアカシアアルビダ(Aasia Albida)と呼ばれ,マメ科の樹木という.花が咲き,乾季に葉を落とさず,実が成り,その実と木陰がある故家畜が集い憩いの場となり,その糞で土地が肥えるということだ.そして落葉するのは雨季の直前で,葉の栄養分もまた土地を肥やすという.まあ,この辺に畑は見えないが,耕作地があれば,大変有用性が高いであろう.
最近アフリカ各地ではアルビノ(albino:先天性色素欠乏症)の人が殺される,などという痛ましいニュースを耳にする.このアカシアのアルビダ(Albida)も枝から降りる白い気根から付いた名で,アルビノと同じ語源ということだ.
この日のランチはヤギの肝いため
アカシアアルビダの木陰で頂いたこの日のランチは,前日仕入れたヤギの肝いため,それに白いのはカリフラワー?さらにチーズサンドかな.
薪集め
ランチの後スタッフの皆さんは薪集めを始めた.アカシアアルビダの枯れ木のように見える.薪は何でも構わないということはなく,(今夜は)火力が強いものでないといけないそうだ.今夜はヤギ肉を用いるそうで,火力が強くなければならないレシピのようだ.
なおここで薪集めが完了した訳ではなく,今夜のサイトに着くまであと2,3回停車して集めた.それにしてもあちこち散らばる枯れ木の中で車内から特定の強火薪を判別する技はやはりここでの生活に根ざすものでしょうが,驚きます.
カチャビーの井戸Cachabe well
マスクを持つタッシリ
ピクニックランチの後はカチャビーの井戸に向かった.
途中,側面に2つ目のマスクを持ったタッシリ状の岩があった.まあ,ニャラはいろいろあるが,こうした擬態的なものは特に印象的だ.
アカシアアルビダにニャラ連山
この辺りもアカシアアルビダが茂っている.地質が適しているのでしょうね.そして背後には細いニャラが林立し,細い峰の連山のようだ.或いは煙突の林立する日本の工業地帯のようでもある.ここでは煙を吐かず幸いだ.
カチャビーの井戸に到着
カチャビー(Cachabe)の井戸に到着した.既に午後2時半だが,ラクダやロバが集まっている.ラクダ引きやロバ引きの何人かは少年だ.
皆さんの家畜水が済んだ頃を見計らい,私達のスタッフが管理者宅にポンプ給水のお願いに行った.
井戸から電動ポンプで汲み上げ
井戸からは電動ポンプで汲み上げる.ポンプの電源は,近くの管理者宅が管理する内燃機関,多分デーゼルエンジン,で,その音が響いてくると間もなくポンプが回り,ホース先から水が出てきた.
スタッフの皆さんはポリタンクにホースを差し込み,順次水を満たしていった.
ホースの先近くには細長い家畜用水桶があり,ポリタンク給水のおこぼれがいくらか溜まった.そしてロバたちがそれを目当てによって来た.いつも大変なロバたちにはほんの一時の楽しみに見える.
ベシケBeshike
ベシケに至る
カチャビーの井戸で給水が終わると,次はベシケに向かい走った.途中砂溜まりのような轍のはっきりしないところも通過した.そしてベシケに到着した.
ベシケに着くと,私達は岩絵見物の準備にかかり,スタッフの皆さんはメッカに向かい午後の礼拝に入った.午後の礼拝は人の高さとその影が同じになる時刻に行われるが,普段皆一緒に行う昼の礼拝が事情でできなかったのでこうして今行うことにしたのであろう.実に敬虔な皆さんだ.前にも書いたが,モスクでなく,仕事中のこれほど徹底したお祈りは他国では見たことがない.
ベシケの岩絵もまた洞窟の中
ベシケ(Beshike)の岩絵もまた洞窟の中だ.外側にもあったのかも知れないが,風雨で残らないであろう.
そして私達は先ずこの洞窟に入り,窟内壁や天井の絵を眺めた.
牛と牧童の構図は他所の絵と似ている
これは牛と牧童の構図で,基本的には他所の絵と似ているように思う.
上二人の細顔は丸顔とは対照的で,また垂れた上腕部に対して肘下の前腕部が横に開き,手にムチか棒切れを持つ構図はこれまでもよく見かけた.
また牛の腹部は白く,雄牛なのか乳部は白く塗られず,全身と同じ色だ.
下の二人は駆ける姿であろうか,これは初めて見る動作姿勢かな.古代のランニング大会かな~
凹凸在る砂漠を進む
岩絵の後,なおも凹凸在る砂漠を進み,北を目指した.途中筵(むしろ)屋根壁の遊牧民家屋が見える.枝の広がるアカシアアルビダと思しき木も目立つ.改めてこのような砂漠地帯によくもまああのように大きく成長するものだな~と感心する.
ハバイケでキャンプHabaike
ハバイケエリアに入りキャンプ適地を探す
ランクルはハバイケ(Habaike)エリアに入った.そしてキャンプ適地を探すようにあちこち走り回ったと思う.
まあこの辺りであれば,景色もいいし,手洗いの場所も確保でき,ほぼ平らなので大丈夫そうに見える.
ハバイケのキャンプサイト決定
4:40PM立ち並ぶニャラに少し赤みが射してきた.そしてこのニャラ群前がこの日のキャンプサイトに決定された.
ランクルから荷物が降ろされ,ビール冷却準備,テント張り,荷物入れ,着替え....など.ほんと毎日変わらぬルーティンワークだ.
ハバイケの陽は沈む
やがて5:20PMハバイケ(Habaike)の陽は沈んでいった.ニャラの輪郭が影絵のように強いシルエットで浮かび上がる.下が細くて,ひょっとして倒れやしないか....と見えるものも.
ハバイケの夕食前
左側が気化熱冷却中のビール瓶.夕食前に,1,2度濡らしテッシュの乾き具合を調べる.普通途中で乾いてしまうので水を補給して,また放置する.乾くに要する熱量をビールから奪ってくれたのだ.
で,本命の夕食であるが骨付ヤギ肉料理だったが,例の火力の強い拾い集めた薪が使われたのだと思う.基本的に私は肉食爺なので美味しかった筈だ.
写真中央がLEDランタンで,ある程度明るいのだが,ビールの後は億劫になり写真写してない....歳とったな....