このローマンタンへ編では,2017年5月23日のトレッキングマップ,ツァランの朝歩き始め,ツァランコーラを越えて,名無し峠を過ぎ,五仏チョルテンを越え,昔の修行洞窟を眺めて,ローラ峠に至り,これを下りローマンタンに着くまでの写真を載せました.
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トレック5日目の5月23日は,17:ツァランから,主に車道を歩き,18:ローラ峠に至り,ここからはショートカットトレイルで19:ローマンタンまで歩いた.そして午後はディジ祭見物だ.
この日のGPS記録(ローマンタン市内見物は含ます)では
歩行距離:13.3km
歩行時間:4時間8分
総時間:5時間22分
終点の標高:3,816m
だった.
ツァランのテントサイトに朝が来た.この日は行程が短いのだが,ローマンタン着後ティジ祭見物のいい席を確保するため早めの到着を狙い,やはり5:00AM起きだった.
テントを片付け,カイラスホテル母屋中庭から二階のダイニングルームへ上った.
二階から見上げると,誇らしげに屋根の丸太が厚く積み上げられている様子が判る.それにしても風変わりな伝統ですね.
お粥に,味噌汁に,トーストに,オムレツに....随分と盛り沢山だ.毎日こうした感じだが.
カイラスホテル前に並び出発準備だ.この後添乗Iさんの音頭で準備運動を行ったと思う.いやここは広いが公道なので,向かいのテントサイトに戻ってやったかな.
7:00AM予定通りツァランを発ち,北に向かった.ツァランの村外れまで来ると,前日の南入口と同じようにチベッタングッズを路上に並べている人がいた.今度は若い女性だ.朝早くから頑張っているがやはり通行人は稀だし,なかなか大変だとは思う.
写真先方の緑は,ツァランコーラ(ツァラン川 Tsarang khola)の谷に生える木立だ.これから越える筈だ.
さてツァラン村北外れまで歩くと,やはり赤く屋根付きのカンニが道端に建てられていた.いよいよツァランを離れるのだな~と思うときでもある.
さてここからはツァランコーラ(Tsarang khola)の谷に下ることになる.川にはしっかりした橋が架けられているのが見える.全く問題なさそうだ.
橋を渡りながら,そこからツァランコーラを眺める.チョボチョボの流れで,肩すかしというか何というか殆ど見どころがない.まあ,そういう問題ではなかろうが.
このツァランコーラもやはり下流でカリガンダキに注ぐのはこれまで渡った川(khola)と同じである.ところでカリガンダキでもないのに,連日昼前から強風に見舞われるのには参ってしまう.
ツァランコーラの橋を渡った後,その左岸斜面を巻くトレイルを進んだ.側面からの光線が侵食された斜面の縦筋を浮かび上がらせ綺麗だ.
そのうちツァランコーラ左岸上部になった.向こう側にはなかなか見られない雲なしヒマラヤの峰々が展開されている.
ちょっと遠いが,ガイドTさんの話など総合するに,左からタワヒマール(Tawa himal:5,750m),ヤカワカン(Yakawa Kang:6,482m),トロンピーク(Thorung Peak:5,751m),ガンガプルナ(Gangapurna:7,455m),テリチョピーク(Tilicho Peak:7,134m),ニルギリノース(Nilgiri North:7,061m)ではなかろうか.
暫く行くと,ツァランからは別々のルートで出掛けたのだが,車道に入ったこの辺で馬組みのメンバーお二人と一緒になった.この日はこの辺りから車道コースが多いようだ.
この辺りでツァラン方面を向くと,前日訪れたツァランゴンパと旧ツァラン王宮が丘の上によく見えた.所謂山城のロケーションで,攻めにくい場所だ.場合によっては兵糧攻めにも遇い易いとも言えよう.風景としては文句なしにすばらしい.
埃っぽい道を進んだ.たまに通る車では悲惨なほど砂埃を浴びる.私たち同様ローマンタンのティジ祭を目指す観光客が多く,いつになく車も多いそうである.
暫く行き名無し峠に出た.石塚(ラプツェ Rapche)が築かれ,タルチョーがたなびいているので地元では名が知られている筈だが,標識はなくまた地図に記されないので名無し峠扱いだ.
名無しではあるが峠なので,通りかかるマウンテンバイクのサイクリストもここで脚を休めている.私たちも少し休憩した.
名無し峠から進むと,道の真中に大きなチョルテンが建てられていた.五仏チョルテンのようだ.これまで見た大きなチョルテンでも屋根を支える柱は最大8本だったと思うが,ここのは12本もある.随分大きい.
ここのチョルテンは道の真中にあるのに,通過する空間(トンネル)がない.まあ,カンニではなくチョルテンだから当然だが.
五仏チョルテン周囲には各種動物のレリーフが刻まれている.北はガルーダ,東に象,南に馬,西に孔雀で,すべてお釈迦さまの乗り物だそうだ.また中央(塔の中央か?)は大日如来で,合わせて五仏,チョルテンは五仏チョルテンとなるようだ(不確かかもしれないが).
これは前日ツァランチョルテンで見たガルーダと同じモチーフ,ガルーダのレリーフだ.ツァランチョルテンが人(女性)っぽく表現されていたのと比較して,こちらはより仮想動物っぽく表現されている.アーチストによって随分差があるものだ.
五仏チョルテンから先も,似た調子の荒れ道を進んだ.風がないうちはいいのだが,風が出てくると大変だ.来る前はカリガンダキから離れれば,風がないものと思い込んでいたのだが,決してそんなことはないのだ.
暫く行くと,脇の岩壁に洞窟がたくさん見えた.何でもムスタン全域ではこのような洞窟が一万個くらい見つかっているそうだ.
洞窟のうちの幾つかはその昔,ムスタンゲート16洞窟と同じように修行僧がここに篭って瞑想したのだそうだ.
比較的単調な道を行き,道脇に座って休憩した.この日は一段と天気が良くなったようで,空が青い.
さらに行くとソーラーバッテリを備えた電波中継所があった.アンテナ素子の長さからすると携帯電波のようだ.多分ムスタンでは有線通信回線は大変なので,先ずは無線方式から整備されていったのであろう.
歩き続けるとローラ峠(Lo La pass:3,950m)になった.道両側の石塚(ラプツェ)を結ぶタルチョーが強い風で大きく弧を描いている.
タルチョーやルンタは風に舞う度に経を唱えるに相当する功徳があるというから,風の強いムスタンには正にピッタリなのだ.
ローラ峠を越えると,かつてのムスタン王国首都ローマンタンが見えてくる.他のムスタンの村同様やはり山で囲まれた盆地状谷に位置している.畑の確保,水の確保,気温が低すぎない,風が強烈でない....などの要因があるのかもしれない.
比較的豊富な緑の中の白い住宅壁に混じり,赤い,多分サキャ寺院が2,3見える.も少し近くになれば判るだろう.
ローマンタンに近くなり,郊外になった.女性を乗せた馬が,少し上り坂を軽快に駆けていった.自動車道がローマンタンを経て,チベットまで繋がって以来,馬の出番がぐっと少なくなったそうだ.そして馬の数は急減したそうだが,今もこうして乗る人の手綱さばきは上手いもんだ.
いよいよローマンタン入り口になり,メンダンが築かれ,タルチョーが風にはためいていた.
昼近く,陽射しは強く長袖Tシャツ一枚でちょうどいい.顔や手にはサンスクリーンを塗っていたが,首には省いていたため,後で見たら相当焼け,皮が剥けていた.
平らな土地に比較的疎らに住宅やゴンパが建っている印象だ.それと家畜避け石のフェンスがやたらめったら張り巡らせてある.一つは樹木の保護だというように,緑も豊かだ.
茶色い中央禿山の頂きに見える構造物は軍事施設らしい.ムスタンにはこれまでチベットからの亡命者/難民が多く住み,また現在も密入国してくる人がいるのであろう.この先国境は標高5,000m以下で楽に越えられるそうだが,前述の河口慧海師は,当時国境管理が厳しかったこのムスタンルートを避け,敢えてドルパからの困難なヒマラヤ越えを選択したようだ.
北西には雪山が見えている.ドルパ境界付近の山脈のようだ.それとその麓辺りには白い大きな建物,さらにその上には建設中と見られる建物も.
白いのは学校で,建設中のはホテルとかかな~という声があったが,ガイドTさんもよく解らないということだった.
ローマンタンの街に入った.道は広く脇に小さな用水路が流れる.この水路は正直言ってあまりきれいではないが食器や食物洗いに使われている.
この道の両側には曼荼羅や仏画を描き,販売するお店,仏具店,バッティ....など並んでいた.
そして昨日から始まったティジ祭目当てに集まったと思しきムスタン他村の参拝者,外国人観光客がぞろぞろ歩いている.
ローマンタンの街外れ,広く平らなテントサイトに到着した.馬もほぼ同じころ着いたが,まだ荷を下ろしていない.おつかれさん.なお,馬は荷を下ろすと他の場所に移動し,明後日復路出発の朝また戻ってきた.
ところでこれまでのテント場はバッティの庭先とかであったか,ここはもちろんどなたかの所有地であろうが,原っぱの一画で,キッチンやダイニングルームは借用できない.そんな訳でシェフはガス(あるいはケロシン)バーナーや鍋釜を揃え,調理してくれた.水の調達にも手がかかりそうだ.
写真向こうに建設中の建物が見えるが,ロッジになるそうだ.観光客はこのティジ祭の間こそ多いが,普段は閑古鳥が鳴いている....と聞くが.
さてダイニングルームはないのでテントサイトに折りたたみテーブル(最近のはプラスチックで,以前の鋼板製に比べて軽そうだ)を並べ,いつものクロスを掛けてお皿が置かれた.どうやらチョーメン(焼きそば)にジャガ,缶詰のイワシ....などのようだ.
食後午後から,そして明日いっぱいティジ祭などローマンタン市内見物になる.