アルハジャラAl Hajara

標高2,300mの断崖にある山岳民族の住む町アルハジャラ(ハジャラ).石造りの美しい4~6層高層建築群で名高い.

シュアイブ山Mt. Su’aib

マナハへの道

マナハへの道

サナアからハジャラに向かう途中は山道である.なんでもこの道は1980年代,多くの中国人労働者の力を得て建設されたそうである.3,000m級の山々を臨みながらかなりの高度を進む.場所によってはアラビアのスイスとも称される地域があるらしいが殆ど緑のない山々を眺める限りスイスとは程遠いと云うのが実感だ,が,雨季はそのようになるのかも知れない.まあしかしこれはこれで珍しい光景であるので趣きがあるとも言ってよかろう.

シュアイブ山

シュアイブ山

正直言うと写真に収めたこれがほんとにシュアイブ山3,766mだったのかどうか完全には自信が持てない.或いはこの後方にある山であったのか?う~ん!

いずれにしてもイエメンの最高峰シュアイブ山を眺めるこの場所も相当高い位置であり,また景色も皆似たようにも見える(言い訳)ので,「あれがシュアイブ山です」と説明された山が今となっては判然としないのだ.

一見茶色一色に感じられるこのような光景にあって,ちゃんと眺めれば段々畑や家畜囲いのような造形物が判明することに感銘を受ける.どんな場所にも人々の営みはあるのだ.逆にこのような場所の住民が関東地方のような密集地帯に遭遇すれば多分,「こんなに人間がいっぱい居るのか!」と驚嘆してしまう.....ような気もする.


シュアイブ山展望カート売りの青年

シュアイブ山展望カート売りの青年

サナアとホデイダを結ぶ街道沿い,シュアイブ山を望む見晴らしの良い高台で我々一行の4WD群は休憩した.なにも我々に限らず多くのドライバ,観光客が休憩するのでここでは自ずとイエメン特産カート売り店群が形成されたように見える.多くのドライバは午前中はカートに手を出さない,殆どは昼食の後に始めて運転しながら,2時間くらいだろうか,を費やして嗜むのだ.ドライバの一人が話してくれたのだが,1日分およそ1,000リヤル(US$7)かかるそうである.当然であろうが上物はさらに高くなるそうだ.所得水準が決して高くないイエメンにあってこの支出は結構堪えるそうで,仕事がない日は我慢したりするそうだ.

で,多くの売り子は朝のうちは暇を持て余している....ように見えた.そんな訳で朝通りかかった我々に対し,写真のカート売り青年は商売を度外視して自慢のジャンビアを抜き,ポーズをとってくれたのだった.ありがとう!

マナハManakha

マナハの段々畑

段々畑

ハジャラへはなおも山を越え谷を越え,左のような段々畑とその所有者であろう農家の高層家屋を所々に眺めながら進む.この季節にあって緑の部分はカート畑が多いようである.


マナハのカートの木

カートの木

これがカートの木だ.この木の葉,主には新芽辺りの比較的柔らかな葉がイエメン随一の嗜好品として珍重されるようである.カートはアカネ科という木の葉っぱで,この生の葉を噛み,エキスを 飲むことでいくらかの神経興奮作用が得られるということだ.ただ味わい方に作法があり,噛んだカートは吐き出さず,片方の頬の内側にどんどん貯えていくのだ.こうすると頬が膨れ上がり,まことにおかしな形相と言おうか,仮に人相書きにしたら「コブとり爺さん」と同じようになる.

筆者も一枝分ドライバから頂戴して試してみた.味は若干苦味があり,お茶の新芽を少しワイルドに(?)した感じ....まあ,うまく表現できないが...不慣れなためか,量が不十分なためか興奮作用を呼ぶには至らなかった.また,頬に貯えたまま次々と新たな葉っぱを噛んでいくのはかなり難しい.筆者の場合,噛んで細かくなった残りかすはどんどん胃の方に流れてしまい,コブとり爺さんを演じることができなかった.「爺さん」の部分だけは最初からそのままなので,あとは頬貯めさえ上手くできればキマった筈であるが....

ところでカートの木の栽培適地はコーヒーの木の適地とほぼ同じらしく,同じ畑のそれぞれの区画で栽培されている場所を見物した.素人目にはカートとコーヒーの木や葉は良く似ているように見える.しかして赤いコーヒー豆を付けていればこそ「コーヒーだな」と,判別できるのが関の山か.まあ後出しジャンケン風判別方法だが.

かつてこの辺り,サナア州バニーマタルはかの有名な最高級コーヒーの1つ,モカマタリの産地として知られていたそうだ.だが今ではすっかりカートの栽培によって,コーヒー栽培がとって替わられてしまい,栽培面積はとても減ってしまったようだ.モカマタリをしても,やはりカートの収益性にはかなわないということのようである.

4WDのドライバの面々

4WDのドライバ

こちらが我々を乗せた6台のトヨタランドクルーザードライバの面々.中央,赤いカーフィーヤ(ターバン)に茶色のジャンビア鞘の男前がリーダー格のムハマドさん.皆さん格調高くジャンビアを差してはいるが陽気で,大体の人は英語を話す.全行程概ね100~120km/hrのスピードで車間を詰めてぶっ飛ばすので小心な筆者にはちょっと怖かった.

なおリーダーの名前ムハマドはイスラムの彼の預言者の名と同じなのでイスラム圏ではこの名の方はとても多い.スルーのガイド(英語)もムハマドさんだった.

また同行者の中に「はまださん」という方が居られたが,この方は仕事でイスラム圏での生活経験がお有りだそうで,ムハマドはハマダとも称する,と教えてもらった.な~るほど!これでガイドやドライバがやたら気安くハマダ!ハマダ!と同氏に声をかけている謎が解けた.どうやらムハマドのムは接頭語に相当し,語根がハマダということらしい.ナオミさんとか,ケンさんとか同様,諸外国と共通の名前だと直ぐに覚えて貰えていいだろう.

ジャンビアダンス

ジャンビアダンス

ナマハでは目玉焼き,ジャガイモなど野菜の煮物,焼き鳥,ナン....などの純イエメン料理を,イエメン作法,即ち料理皿を床に直置きし,床に座って頂戴する(お座敷での日本料理に若干似る),で味わった.

食後このレストランの従業員であろうか楽器奏者のイエメン音楽演奏に合わせてこのようなジャンビアの舞を披露してくれた.


下は,マナハへ至る道中や周辺の写真あれこれ

マナハへ至る道中や周辺の写真
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ハジャラHajara

ハジャラ遠景

ハジャラ遠景

標高2,800mの岩山の頂に築かれた城塞都市ハジャラ,若しくは定冠詞Alを付してアルハジャラ.木立ちとかなく見晴らしのよい山の上なので確かに攻め難いであろう.日本でも戦国時代は山城が多くあった.ただ山の上であるので現在こそ水道が引かれているが少し前は水の確保が容易ではなかったであろう.その大変な水汲みは主に女性の仕事であったそうだ.また耕作地は周囲の斜面に作られており,農作業は楽ではなさそうだ.部族闘争がしばしばあったのに加え,あの強大なオスマントルコ軍がこの辺りにも侵攻し,自軍はここで籠城したようだ.長期の籠城では特に水の確保がさぞかし大変であろう.


ハジャラの城砦

城砦

建物の色が周囲の大地と調和していると言うか,大地の岩を建築材料として用いているためか,まあ動物で言えば保護色のような様相だ.この城砦都市は敵方の攻撃に備え,出入りのゲートはたった一箇所,周囲には針の多いウチワサボテンがたくさん植え込まれている.

城砦から,つまり上から眺めるとかなり急峻な斜面が眼下に広がり,これならとりあえず防御面は万全と感ずることができる.


ハジャラ現代の生活

現代の生活

道こそ引かれているものの城砦内部は建物が密集し,道は狭い.たとえ入り口まで道路を敷設したとしても内部まで車が入ることはできないであろう.我々観光客にとってはとても好ましいことは言うまでもないのであるが,ここで生活している人々にとっては必ずしも楽ではないかも知れない.しかしながらこの写真のように昔ながらの生活様式で日々を送り,ロバでの荷物運びや,車がない故に安心して遊べる子供たちを見るにつけ,こうしたゆったりした暮らしぶりは我々の考えとは異なる基準で判断されるべきなのかも知れない.何はさておき当事者の判断が最優先されるべきだろう.


ハジャラ建築

ハジャラ建築

城砦内部の通りは曲がりくねり,坂が多い.少し広くなったこの場所では住民のおばさんが観光客相手に生地を広げ,売り込みに躍起であった.

この街では4,5階建てが多い.主建材は石ブロックで玄武岩や花崗岩が多いそうだ.概して1階は家畜室で,敵の侵入を防ぐためあまり窓はなく,窓の数と大きさは上の階ほど大きくなる.これは強度を維持し易い構造でもあるだろう.立ち入って見物した訳ではないが,階によって男女別など居住区域が分けられているのはイエメン全域共通のようである.

窓の上部はアーチ型でしばしば白い漆喰でハイライトされている.アーチ型窓はイエメン各地共通の様式であるようだ.ただ他地方の窓でしばしば見かける「カマリア」 と称されるステンドグラスの窓はここではあまり見当たらないようだ.

カマリアこそ少ないものの,石積みの文様はかなり凝っており,これもアラベスク模様とひっくるめて呼ばれるパターンの1つなのではなかろうか.


下は,ハジャラで見かけた子どもや景観あれこれ

ハジャラで見かけた光景
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