タンガイルTangail
このタンガイル編では,2019年11月8日ダッカの朝リージェンシーホテルを発ち,タンガイルの種子バンクを訪ね,タンガイル織り工房を見せてもらったときの写真を載せました.
タンガイル付近のGoogleマップ(静止マップ)map around Tangail

タンガイルはマーカー4辺りに位置している.
別窓で大きなGoogleマップを開くダッカの朝morningDhaka

リージェンシーホテルで朝食
2019年11月8日朝が来た.リージェンシーホテルのレストランでバフェの朝食を頂く.窓際のテーブルに座ると悪名高い喧騒のダッカの様子がよく見える.
食べ物はよく覚えてないが普通に美味しかった筈だ.

リージェンシーホテル界隈
今日はタンガイルを訪ねる日だ.小型バスが来る前にホテル前を歩いてみた.
先ず交差点は信号があまりなく,在ったとしてもおまわりさんが交通整理しているようだ.この写真では流れが途切れているが,大変な交通量で,やはり捌くのにおまわりさんが必要なのかもしれない.それとも日本より多い人口の就業機会を増すためであろうか.
1700万人と東京より人口が多いダッカは人口密度世界一だそうで,この辺りは地価が最も高いエリアらしく,マンションの値段は東京並みに高いようだ.
ダッカ以外の街の人力車(リキシャ)の多くは電動化されている.でもダッカのそれは写真のように昔ながらの『人力』だ.一時電動化されたが,事故が起こり条例で禁止されたのだそうだ.
一般に人力車漕ぎ(リキシャワーラー)は地方から上京し,所定料金で毎日人力車オーナーからレンタルし,そのレンタル料金以上働いて,その分が稼ぎになるという.そのため必死で働くので大変だということだ.

ダッカのバス
市バスであろうか,これがダッカの典型的路線バスの姿だ.何がと言えば外側が他の車と擦ったり,また押し合ったりするため,外板塗装が剥がれ,凹み,傷だらけなのだ.多分ウインカーランプなども機能しないのではなかろうか.交通渋滞に留まらず,多少のぶつかり合いは承知の上の無理やり走行が一般化しているのでしょうね.
なおかつての英支配の伝統からか,時々ダブルデッカーのバスも走行している.大きいのでぶつかり合いには強いかも.
添乗Nさんのレポートを見ると,ダッカは世界一住み易い都市ランキングで,ワースト3の常連だそうだ.

途中の村々を通過
私達の小型バスは護衛(または私達の監視)の武装警察先導車に連れられてタンガイルに向かった.警察には私達のガイドAさんが密に連絡を取っているようで,管区が変わる場所では,パトカーと警察官が切れ目なくスムーズに交代する.
ダッカを過ぎても小さな村というか,集落というか,とにかく住宅が密に並ぶ.人口密度が世界一高いと聞いてきたことを実感する.
イスラム教徒(モズレム)が88%を占めるということで,スカーフ,さらに中央女性のようにマスクで頭を覆った人が多い.しかしアバヤのように黒一色の女性は少なく,カラフルな服装が大半だ.
種子バンクSeed Bank

ダッカ郊外辺り
ここはダッカ郊外辺りだと思われる.このゴチャゴチャ感はこの先訪れる街と共通で,まあバングラデシュの原風景とも言えそうだ.
真ん前は乗り合い三輪車で,リキシャより大きく,乗客数が多い.動力源は電動式かCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)エンジン式が多いようである.
CNGはLPGと同じ天然ガスであるが,液化せず20〜25MPで圧縮し,1/250程度の体積にできるそうだ.LPGは1/600に体積が減らせるが,液化するため超低温が必要で,大規模な設備,資金が要るが,CNGは簡単な設備で可能で,車のタンクも簡単で済む利点があるようだ.
なおバングラデシュでは石油は出ないが天然ガスを豊富に産出するという.ただし消費も多く,現在は輸入もしているそうだ.ただ増産の余地はあり,LPGタンカーが接岸できる港も整備中ということだ.

酪農農家の庭先には干し草の山
庭先には干し草の山が見えるので,酪農農家の庭先であろう.時々見かける家畜は牛が多く,ヤギなどもたまに見る.ヒンドゥーの人たちも人口の10%くらい居られるそうだが,ビーフはもちろんタブーだが,ミルクやバターはOKのようだ.

湿地や沼,池が多い
バングラデシュは西からガンガー(パドマ川),ジャムナ川,メグナ川の大河がベンガル湾に注ぐデルタの上に形成されており,そのためであろうやたらめったら湿地や沼,池が目立つ.多分雨季になればさらに増すことであろう.
これらに比べれば遥かに小さな多摩川でさえ,往時はしばしば氾濫し,流れが変わり,世田谷区と川崎側に分断された同じ地名が今に残っている.
水に浮いているのはホテイアオイと,同行者に教えてもらった.南アメリカ原産だが,生命力が強く例えば霞ヶ浦などでは大繁殖しているのだそうだ.

黄金の大地
右側が実った稲,左が刈り取られた後だ.添乗Nさんのレポートによれば,ダゴール(1913年ノーベル文学賞受賞)作詞バングラ国歌『黄金のベンガル』はこうした黄金の大地を謳ったものだそうだ.
ということで400年前,世界の経済力が穀物生産量で測られていた時代のベンガル地方はお米の二期作,三毛作可能な大収穫地で世界で最も豊かなエリアであったそうだ.ただその後大きな進展なく,後に,やはり盛んであったジュード産業も化学繊維に取って代わられ,アジア最貧国とまで言われるに至ったということだ.ちょっと残念ですね.

タンガロイ村の種子バンク(Seed Bank)に着く
私達の小型バスはやがてタンガロイ村の種子バンク(Seed Bank)に着いた.ここにはNGO研究機関Ubinigが活動拠点を置いているという.
この敷地内には種子貯蔵庫や実験農場,穀物加工場などが設置されている.

私達の護衛(監視)ポリスメン
こちらは私達の護衛(監視)ポリスメン.走行中は車で先導し,私達が降りてからは皆さんも降りて私達の傍を離れない.ある意味VIP並みですね.国によっては,いやそれが普通であるがポリスマンの写真はご法度だ.でもバングラデシュでは写真撮影はどうぞどうぞといった感じで,実にフレンドリーだ.髭が見事なれどちょっとお腹出てきたかな....

ナヤクリシ農業運動
ここはナヤクリシ農業運動施設で,右が担当の方,左は日本語ガイドSさん.ナヤクリシはバングラデシュの 農業運動で,農薬や遺伝子組み換え種子の使用で実際健康被害が発生したとしてその反対運動を行っている団体と言えるようだ.
実際従来からの固有種を有機肥料で栽培し,健康維持することを目指しているという.

ナヤクリシ農場のひよこ
ナヤクリシ農場は植物に留まらず,鶏などの家畜類にも範囲を広げているようだ.色々な色合いのひよこが可愛いですね.

種子センターに保存される種子
ここがナヤクリシの主題とも言える種子センター.素焼きの壺やガラス瓶にデータを記したラベルが貼られ,そこに種子が蓄えられている.
種子は戦略的に極めて重要で,例えばベトナム北辺で販売されていた種子を見たとき,ほぼ中国産野菜種で占められているのを見て驚いたことがある.さらには米国の種子会社が世界の種子を独占せんとしている実態に鑑みれば,小規模ながらこうしたナヤクリシの活動は素晴らしいものだ.

種子保存の工程
種子保存の工程は極めてプリミティブで,全く効率的とは言えないだろう.つまり試験農場で収穫した農作物,ここでは豆類を乾燥し,それを前述の壺やビンに保存するのだ.ただこの方法はどこの農家でも容易に実践できる普遍的な点が現在の実情に合っているのであろう.
それとこの種子センターは,水害で農作物が壊滅的被害を被り,次の作付け用種子が賄えなくなったときに緊急提供しているそうである.たまたま私達が訪れたとき2年ぶりの大サイクロンが襲い,旅程にも支障をきたしたが,農家によっては種を確保できないほどの被害を被ったところもあるであろう.そうした農家に種子を提供するということだ.
提供してもらった農家は,収穫後提供してもらった種子の量に+αから2倍ほどをお返しするそうである.

製粉作業
種子バンクでは収穫した農産物の活用についても研究している.写真は麦類の製粉作業で,一基の臼に二人がかりの杵を上下させ,一人の女性が臼操作に当たっている.
イスラム国では女性は殆ど家の外に出ないのが通例で,この製粉作業は皆女性が携わっているが,それが主な狙いなのではなかろうかと思われた.

ポン米作り
一人の女性が大鍋でポン米作りしていた.これもイスラム女性の外での活動を推進するのが狙いではなかろうかと思った.
タンガイル織り工房Tangail Weave

タンガイルの駄菓子屋さん
ナヤクリシ農業を見て,次はタンガイル織り工房に向かう.ここで小さな駄菓子屋さんがあった.よく分からないが,ガラス容器ともども駄菓子という言葉がピッタリ当てはまりそうな商品が並んでますね.

自撮りの青年
近所の青年でしょうか自撮りの最中だ.こうした光景はどうやら世界共通になってきましたね.大変嬉しいのはバングラでは写真大歓迎,どうぞどうぞと言ってもらえることだ.ありがとうございます.

タンガイル織り工房
コットンの伝統布地『タンガイル織り』の工房を見せてもらった.先程の種子銀行は女性が多かったが,こちらは逞しい男性が多い.上半身裸であるしやはり体力が要るのでしょうか.
タンガイル織りはサリーの生地として最上級で,これで仕立てられたものはタンガイルサリーとして珍重されるそうだ.和服の(シルクであるが)越後紬とか大島紬...といったものに相当するのであろうか.
織り方そのものは縦糸を一本おきに前後させながら,その間にシャトルを横から潜らせる一般的な織り方のように思える.

生地模様を刻んだ型板
生地の仕上がり模様は予めパターンを穴開けした型板列に縦糸を通過させるのか....?
そのメカニズムを全く理解していないのだが,その昔コンピュータにパンチテープでFortranプログラムなどを読み込ませたのを思い起こさせる.さてどんな仕組みなのでしょうね....?

型板(プログラムカード)作り
こちらの男性たちは出来上がりの生地デザイン図を見ながら型板(プログラムカード)に穴を穿っている.一つの生地デザインに対して型板は多数枚で構成されるようである.

タンガイル織り機の全容
タンガイル織り機を横から眺めた全容がこの写真.型板(プログラムカード)が上方縦糸供給部の辺りに連なっている.でも相変わらずパターンを織り込むメカニズムは理解できてない.
ところでタンガイル織りの繊維はよく知られるインド綿であるが,タンガイル北部に広がるドゥプール丘陵で細く柔らか良質な綿花を産し,タンガイル織りの薄地の織物モスリン(muslin)に仕上がるということだ.ただ現在はそのドゥプールコットンが得られなくなり,他産地品を素材としているようだ.なおモスリンは素材が限定されず,現在の市場ではシルクが多いそうだ.
ところで現在タンガイル織りに関わっている人々はヒンドゥーの方が多く,半分を占めるという.全国平均は10%程度なので相当高い比率だ.多くがサリーに仕立てられるのと関係していようか.ただデザインはイスラム的要素を多く採り入れたタイプもあるようだ.

タンガイル織りのサリーを纏ったモデルさん
モデルのヒンドゥーおばさんが淡い黄と赤花模様のタンガイル織りサリーを纏って見せてくれた.背後はぐっと派手な模様入り生地だ.確かここには仕立て事業部もあったと思うので,生地を選んだらオーダーメイドで仕上げてくれるのだと思う.

タンガイル織りカーペット作り
これは一般的な織りカーペットの製法ではなく,タンガイル織り生地に,刺繍のように絵柄パターンをパイルで埋め込んで作っているように見えた.生地はサリー用と違って厚く丈夫に作ってあるのでしょう,多分.

ペットのヤギ
ここに住んでおられるおばさんのペットヤギ.いやミルクや肉生産のための家畜かな...
ヤギは牛やニワトリと違って紐がないと逃げていくので,繋がれている.バナナは好物のようで,私と同じだ.

レストランのキッチン
ナヤクリシ農業運動団体はレストランや,地域リゾート事業も手掛けており,ここはそのレストランのキッチン.土のかまどやBBQ炉が復元された庄屋さん屋敷のような雰囲気だ.

頂いたランチ
ここのレストランで頂いたランチだ.素材はここの農地で有機栽培で育てられた野菜ということだ.
これだけではちょっと寂しいので肉類とかもあったような......

地下水を活用
額にティカを付けたヒンドゥーおばさんが手押しポンプで水を汲み上げている.これも地産地消の一環か.それともインフラが未整備なのであろうか.お茶や調理にだけ美味しい地下水を用いている可能性が大きいかな...

地域リゾート事業のポスター
前述のようにナヤクリシ農業運動団体は地域リゾート事業も手掛けているが,そのポスターが掛かっていた.バングラデシュでコミュニティベースツーリズムのパイオニア云々と記された大きな布地は薄く,向こう側が透けて見える.正しく気合を入れて織ったタンガイル織りであろう.文字はシルクスクリーンなどの印刷ではなかろうか.