このカンバチェンへ編では,グンサを出て,ラポークを通り,ランブクカルカで昼食を食べ,カンバチェンに着くまで,および翌日カンバチェンに滞在しジャヌーベースキャンプを訪れたときの写真と記事を掲載した.カンバチェンではジャヌー,ポレ,カーブル,シャルプーなどが楽しめた.
11月5日(木):グンサで2回目の朝を迎えた.この日はテントに霜が着き白くなっていたがテント内はあまり冷えなくて済んだようだ.
この日はそれまでより遅く6時半お茶,7時朝食,7:45AM出発となった.グンサのカルカは広いがこの時期家畜自体はあまり目立たない.山の方に出かけているのだろうか?屋根にタルチョーを掲げた村の家々には香木の煙が立ち上っている.香木焚きは毎日朝夕二回行われるようである.この村の住民もまた殆どがシェルパ族と云うことだった.
なおグンサは一年中住民が住まう最北の村だそうだが,それでも冬は寒過ぎるので,一つ手前,標高3,140mと低く温暖なフェレで生活する家庭も少なくないそうである.グンサはそのような避寒地が持てる比較的裕福な家庭が多いとも聞いた.
下は,グンサを出るときから暫く歩いた間の写真
グンサから暫く歩くとトレイルはグンサコーラ川原に降りる.川原らしく大きな石がゴロゴロ転がった道だ.ここを歩いているときヤクの群れを連れて下る人たちに二度も会った.冬に備えて高度を下げるのであろうか?
またこの辺りを歩いて行くと,先方に三角形の頂を持つ岩山が見えてくる.槍ヶ岳に似ている,いやそっくりと云う事でとりあえず「ネパール槍」となった.後でサーダーのPさんに訊くとガンガピーク(Ganga Peak)という名前が付いているそうだ.
ガンガピークを眺めながら進むと結構広く平坦な地形の場所に来た.ラポーク(Lapook)という標識が掛かっていた.民家はないので夏,若しくは春~秋のカルカとして使われるエリアなのであろう.
下は,グンサコーラ川原からラポーク辺りにかけての風景
ラポークを越えて歩いていると,鋭い頂がチラリと見えてくる.シブトンギ(Sobithongie:6,670m)だそうである.地図で確かめるとポレとジャヌーを結ぶ稜線上にあるようだ.あたかも角錐のように尖っている様は相当難度の高い山であろうことを窺わせる.
ラポークから比較的広々した通りを行くとダンボールでLama Hotelの標識が出ていた.地図ではランブクカルカ(Ranpuk Kharka)とされているところだ.ここもラポーク同様民家がある訳でなく,夏,または春~秋のカルカとして使われるエリアであろう.土地の所有者或いは使用権利者は最寄のグンサ村の人たちではなかろうか.
頃合も良く,ここに腰を下ろし昼食となった.食事前に同行者の一人の方がお腹の周りに異物が.....と見てもらったら,な,何とてんとう虫くらいの大サイズダニだったそうで暫し話の種になる.食事で使わせてもらったグンサのダイニングルームでくっつかれたのか,真相は不明.夏のネパールで厄介なズカ(山のヒル)は血を吸ってお腹がいっぱいになると落ちるが,ダニは腹いっぱいになってもそのまま居座り,毎食ず~っとそこで続けるそうだから性質が悪い.
ちなみにネパール語で“ダニ”と言うと,お金持ちの意味だ,とツアリーダーSさんの解説あり.「街のダニ」はほめ言葉になり,ニコニコされるそうである.
下は,ランブクカルカ辺りまでの写真
ランブクカルカの先にはトレイルが土砂崩れを起こした場所が2,3箇所あって怖かった.写真はその中の一箇所,通り過ぎた後写したもので,仮に足を滑らせば深いグンサコーラの谷底まで止めてくれるものは何もない,という感じだ.
トレイルの土砂崩れは,この3日後,パンペマ手前辺りでもあったが,そこよりやはり今回のここが迫力があった.
ランブクカルカで昼食後再び北に向けて歩いた.途中ドライフラワー化したエーデルワイスなども見られる.咲いているときと割と近い姿形で,比較的違和感なく観賞できる....気がする.
午後2時半頃であったと思う,丘のトレイルから見下ろす位置にカルカと数軒の建物が見えるカンバチェンの谷が見えた.そして谷に下り,小川を渡り,程なくキャンプサイトに到着した.
キャンプサイトに到着すると小雪がパラついてきた.今夜は冷えるかも知れない.
午後は雲が厚くなってきたが,その流れは速く,夕刻になると時々切れ目から赤く染まるジャヌー,ポレ,カーブル3山が望めるようになった.グンサでも3山を眺めたが,それらは南面で,カンバチェンでは北面で,並び方もちょうど逆に見える.
個々の峰がちょうどきれいに見えるタイミングのショット(のつもり)は以下の通り.
下は,カンバチェン到着までの写真
11月6日(金):カンバチェンの朝を迎えた.この日は高度順応のためこのままカンバチェンに滞在し,ジャヌーBCまで往復する予定になっている.
カンバチェンの標高は4,100m,明け方テント内は-10℃まで下がり,十分寒かった.地面もテントも霜で白くなっているが,谷にあるためなかなか陽が当たらず気温も上がらない.
写真のように東に位置するジャヌー,ポレ,カーブルは逆光で絵的にはイマイチであるが,良く晴れた空の下,基部からクリアに見えていた.また西に位置するシャルプーの連山は朝日を浴びて,明るく青空に浮かんでいた.
さてこの日は高度順応を兼ねてジャヌーBCに出かけた.ジャヌーBCはカンバチェンの東に位置し,300m程標高が高いようだ.トレイルは最初グンサコーラ川原のゴロゴロした石の多い道を行き,それを越えると歩きやすい土の道となる.
ジャヌーはトレイルの南に位置し,北壁を眺めるので終始逆光であるが,シャルプー(Salphu)は順光で雲一つない青空に映えていた.
カンバチェンからジャヌーBCへ行くまでの行程は以下のような眺めである.
緩やかな道を辿り11時前ジャヌーベースキャンプに到着した.
眺めているのはジャヌー北面となるが,全体が赤い岩で,直ぐ隣のポレが黒い岩であるのが不思議だ.また雪はあまり付着していない.急峻な壁や,気流の影響なのであろうか?
ベースキャンプには,脇の山から流れ出るのであろうか小川が流れている.ヤクが枯れ草を食む比較的な平坦な土地と併せ,キャンプサイトとしての必要条件を満たしているのであろう.尤も登山者は滅多なことでは現れないのであろう,この日も我々以外人影を見ることはなかった.
サーダーPさんは皆を束ねる人格を備えている訳だが,当然ガイドとしてもすごい.8,000m級ではマナスル2回(台湾,日),シシャパンマ(日),チョオユー2回(日),マカルー(スペイン),ローツェ(インド,ネパール合同隊),エベレスト6回(日)で,他にエベレスト失敗2回(ネパール,米)の記録を持つそうである.エベレスト6回中2回は三浦雄一郎隊のシェルパとして加わったそうである.
カトマンドゥはボーダナート近くに住んでおり毎日コルラするそうだ.トレッキング中も最後尾筆者の後ろで,数珠を持ち小声で「ムニュムニュ....」と経を唱きながら歩いている.「何を祈りながら?」と訊くと,「天気とか,みんなの健康とか....」と答えてくれた.家族は奥さんと女の子二人で,上の子は今年大学に入ったところだそうだ.
シャルプーはパンペマに向かうメイントレイルの西側に聳える.カンチェンジュンガやジャヌーとは逆側になる.シャルプーは4つの峰から成るが,写真は南端の第Ⅲ峰のようである.
下は,ジャヌーBCからカンバチェンに戻るときの眺め
カンバチェンに戻ると雲が増え始めた.さてジャヌー,ポレ,カーブル3山の夕焼けは今日も見えるかな~?と期待して待ったが,やはり少し雲が多く残念であった.
カンバチェンは寒いが夜空はきれいだ.満月ではないが月は明るくジャヌー,ポレ,カーブル3山を照らす.ミニ三脚を取り出して撮ってみたらこれらの山とテント先の小屋がきれいに写っていた.それだけではつまらないが,星もそれなりに写っているのがいい.月明かりで山が写し出されると同時に星もくっきり写るのは空気と同時に光を吸収する炭酸ガスも薄くなっているせいであろう.(ISO400 f/3.2×25sec)
計画通り高度順応は済んだので,明日はロナークまで上がる予定だ.楽しみだ.