ラウルビナヤクでトレック第11日目の朝を迎えた.北の空がクリアで,よく見えそうだ.
この日も早く起きてみた.室内で-2℃ととても冷え込んでいる.まあその分山が良く見えるだろう,とロッジの外に出て日の出を待った.
北西の方向,先ず左のヒマルチュリ(Himalchuli:7,893m)の頂が赤く輝き始めた.続いて右端のマナスル(Manaslu:8,163m),そして中央の広いピーク29(Peak 29:7,871m)が赤く染まった.美しい!
[以前の記述:北西の方向,先ずマナスル(Manaslu)主峰(左の峰:8,163m)の頂が赤く輝き始めた.続いて右端の峰,多分第2峰,そして中央の広い峰が赤く染まった.は間違いで,上のように訂正]
マナスルは1956年,日本隊(槙有恒隊長)が初登頂した唯一の8,000m峰として知られる.筆者ごときは元より全然関係ないのだがそれでも何故か感慨深い.
マナスルに続いて,真正面のガネッシュヒマールが朝日に輝き,やがてチベットの山や,このカットにないがさらに東のランタンも全体が見えてきた.
さて,朝飯を食べてゴサインクンドに向かうとするか.
下は,ラウルビナヤク,朝の写真
7時40分ラウルビナヤクを出発した.暫く登りが続き,8時半チョルテンのある峠に到着した.峠には名前が付いていないのか地図には載っていない.振り返ると,背後にはガネッシュヒマールやランタンが聳えていた.
下は,峠前後辺りの写真
峠を越えて暫く歩く.家畜は皆無であるし人通りも少ない静かなトレイルだ.しかしゴサインクンドという聖地に行く道なのでよく整備されている.今は巡礼者が多くないが,8月の大祭時は凄い数のヒンドゥー教徒が集うと聞くので,その時はきっと混み合うのであろう.
やがて右手眼下,深いところに湖が見えてきた.サラスワティクンド(Saraswatikund)と呼ばれるようだ.この辺一帯では,たくさんの湖があるそうで,トレイルから見えるだけでも3,4あるようだ.
下は,サラスワティクンド辺りまでの眺め
サラスワティクンドからさらに歩くとやはり右手に凍りついた湖,バイラブクンド(Bhairavkund)が見えてきた.既に標高は4,000mを超えているであろうから,気温が低いのだろう.地図で見ると,ここからゴサインクンドまではいくらの距離もないようだ.
ところで湖は皆クンド(kund)の語尾が付いている.多分,湖の意味であろうと思われる.
下は,バイラブクンド辺りの風景
9時50分,ゴサインクンド(Gosainkund)に到着した.ラウルビナヤクからの距離はいくらでもないので,まあこんなもんであろう.ゴサインクンドも凍っている.だか縁の辺りは融けているので,上に乗るのは危なさそうである.
他の湖,バイラブクンド,サラスワティクンド....がただの湖で,ゴサインクンドだけがなぜ特別聖なる湖であるのか....暫く眺めてみるが,一向に判らない....まあ,眺めて判るものではないだろう.
ゴサインクンドは4,380mで,今回のトレッキングで宿泊最高地点となる.ゴサインクンドには合計6軒ほどのロッジがあるようだ.この中のホテルナマステ(Hotel Namaste)というロッジに泊まることにした.
このロッジにいると,ポカラからのヒンドゥー巡礼者という一団が現れた.総勢10人以上居ようか.ゴサインクンドの辺に立つと,それで巡礼は完了するようで,ロッジのダイニングルームに来て,お茶を飲んだり,持参した軽食を食べると直ぐに引き上げていった.
戸外で日向ぼっこしていると,トゥローシャブのロッジのご主人が奏でてくれた龍頭の弦楽器の行商人(写真中央の人)が現れた.ここでの売り上げは無かったようであるが,商売といいながらずいぶん大変なところまで出向くものだと感心する.むか~し昔,マーケティングに関して教わったときの事例の一つに似ていると思った.
下は,ゴサインクンドの写真あれこれ
ロッジから眺めると,前にはゴサインクンド,裏手は山になっている.早く到着し,天気もいいので昼食後登ってみることにした.
歩き始めてちょうど30分くらいであろうか,頂上に到着した.頂上にはチベット仏教の慣わしに従い,石が積み上げられ,タルチョーが掲げられている.カシオで高度を見たら,ロッジからちょうど200m高い値を示していた.なのでこの裏山は≒4,580mであろうか.
裏山の頂上から見下ろすと左にゴサインクンド,右にバイラブクンドが並んで目に入る.ごく近接しているのがよく判る.でも,あくまで聖湖は左のゴサインクンドだけ.ふ~む,不思議だ!
下は,ゴサインクンド裏山の登ったときの写真
裏山から戻り,再びベンチで日向ぼっこすることにした.風は冷たいが陽が当たり爽やかだ.ベンチでは,ドイツ人カップルのガイドとして同行してきた男と隣り合わせた.少し世間話をして,失礼ながら,二焦点レンズの眼鏡をしているけど,それなりのお歳ですか?と単刀直入に訊いてみた.すると42歳だという.カナジーも42歳の頃は老眼になっており,近視の眼鏡を外さないと新聞を読めなかったから,まあそんなもんだろうな~と昔を振り返った.住まいはカトマンドゥではなく,珍しいことにクーンブ在住だそうで,実直で勤勉な印象の人だ.秋から冬にかけてはそれなりに,今も若干はガイドの仕事があるが,夏になれば全然なくなる.ネパールには他国と違って,工業などの産業が皆無だから......就労ビザがとれれば,外国でも構わないから出て行きたいのだが.....と,きわめて意欲的だ.自分にとってネパールはレジャーの場であるが,大きな産業らしきものが殆ど無く,ネパール国民はかなり大変,ということを改めて認識させられた.
さて明日はゴサインクンドを離れ,ラウルビナヤク峠を越える.楽しみだ.