昨夕の雷を伴った雪がうそのように晴れ渡ったトレック第13日目タレパティの朝を迎えた.
朝日が輝く静かな朝を迎えた.室温は-2℃であるが,この分だと直ぐに高くなるであろう.昨夕の雪で白くなった.量は僅かであるので歩くのに支障はない.ロッジ前の丘に立つと,逆光でコントラストが低いが向こうにガンチェンポが見えている.
今日は昨日と比べて行程が楽な見通しで,8時にロッジを出発した.
下は,タレパティ朝の風景
暫く歩くと尾根に出て,北東の方向が開け,山並みが見えてきた.日当りが良いので雪も直ぐに融け,黒い土が露出している.この辺りには珍しいことに数頭の馬が放牧されており,枯れ草を食んでいた.放牧とはいっても,飼い主の住まいがうんと遠くにあるのではなく,まあ,毎日朝夕餌のある場所まで通える距離のようだ.その距離とは,このケースでは次に通過予定のマギンゴート,ということになろう.
ここからはガンチェンポ(左/Ganchenpo:6,387m)とドルジェラクパ(右/Dorje Lakpa:6,988m)を眺めることができた.ガンチェンポはランタン方面からの眺めとはずいぶん違っている.ドルジェラクパはこちらヘランブーで初めてみることができた.地図で確認すると,ドルジェラクパはガンチェンポの東の奥くに位置しているようだ.
ドルジェラクパの左背後に見える三角形の山は一応シシャパンマ(Shishapangma/8027m)のようだ.ちょっと遠くで少し頂きが雲で覆われているのが残念だ.まあでもランシサカルカでは全く見えなかったのが少し見えたのでいいことにするか(するもしないもないが).
程なくマギンゴートの最初の区域に入った.そこはそのまま通り過ぎ,さらに歩くとマギンゴート第2区域に到着した.10時過ぎだった.写真のように小さな石を積み上げたこのように大型のチョルテンは稀で,初めて出合った気がする.
お茶を飲みながら空を仰ぐと,今日は早めに雲が出てきたように見える.
下は,マギンゴートまでの写真.
マギンゴートから下ると,さまざまなシャクナゲが花盛りだ.地盤が軟らかいためであろう,抉り取られ凹んだ道を暫く歩く.やがて前方にクトゥムサンの集落が見えるこの場所に至った.ここで腰を下ろし,水が半分入った水筒の蓋をひねると,シューっと勢いよく音を発し,大分高度を下げたことを実感する.
周りの木々の枝だけが妙に少ない.どうして?と訊いたら,この木の葉は牛が好むのだそうで,それで枝を餌用に刈り込むのでこのような変わり果てた姿になるという.木の名前も聞いたのだが,う~ん,忘れてしまった.
クトゥムサンの集落に入る辺りで,5人程の登りのパーティに出会った.暫くぶり,多分これが2回目くらい,こちらから登る人たちはとても少ないようだ.
その後,1軒のロッジで昼食を食べることにした.ここには少し先に下ってきたドイツ人カップルが先客で居た.カナジーはトレッキングでは全く食欲が落ちない.以前述べたように,むしろ肉類がないのが甚だ物足りない.まあ,でも仕方あるまい.ここではガーリックスープにチャーハンにしてみた.何時も同じようなものであるが,こうして屋外で,一応テーブルクロスの掛かったところで食べるのは初めてだろう.それだけ平地に接近したという訳だ.
下は,クトゥムサンに下るまでの眺め
クトゥムサンから下ってくると段々畑の上の尾根に連なるグルバンジャンの集落が見えてくる.何日か前に過ごしたトゥローシャブル(Thulo Syabru)の光景とよく似ている.また,直前に通ったクトゥムサンとも多かれ少なかれ似ている.つまりネパールのどこにでも見られる光景かも知れない.
グルバンジャンの集落は複数個所に分散されているようだ.その中でここは街道(?)筋にまとまっていて,村外れにはチョルテンを有し,旅籠も一軒あるのでグルバンジャン本村か?
ここを抜けると,従来の道とは別の,未舗装だが車が通れるくらい広幅の道に出合う.路線バス(と言っても小型バスだが)を通すため,大分前に着工したそうであるが,なかなか進展しないということだ.バスが通るようになればかなり村の生活が変わるであろう.
上の本村を通り越し,次の集落,ここもまだグルバンジャンの一部であるがの宿に泊まることになった.ソドンラマロッジ(Thodhong Lama Lodge)の看板を掲げたこのロッジにはゴンパの部屋があった.ここのご主人は,ロッジ名にあるように半ばラマ(お坊さん)のようである.なぜ半ばかと思うと,普通のお寺と違って住宅の一部にゴンパで,ご主人も袈裟ではなく普通の服装である.....そんな訳である.
こういった形式のゴンパにも驚いたが,写真中央のように,タルチョーに混じって,マオイスト派ネパール共産党の党旗が掲げられていたことにはびっくりしてしまった.チベットのようになる心配はないのでしょうか?しかもお坊さんの立場で....
下は,グルバンジャンまでの写真.ヤギは羊やヤクと違って放っておくと遠くに逃げてしまうため,紐で足が結ばれている.
グルバンジャンのラマロッジのダイニングルームには暖炉がない.2,140mと高度が低いため必要ないのだ.しかし暖炉がないのは何とも味気ない.夕食はキッチンのかまどの前で頂戴することにした.ガイド付きで来ていたドイツ人カップルと一緒になり,むしろに座ってダルバートを戴いた.
ガイドGさんと,ポーターJさんはトウモロコシや米,粟などで作るチャンと称するどぶろくや,それを蒸留したロキシーを楽しんでいた.なにしろ,キッチンには自家製チャンやロキシーの瓶が並んでいるので,あと少しで仕事も終わるし,かまどのムードもいいし,飲む雰囲気いっぱいなのだ.
こうして食事を終え,部屋に戻り,寝袋に入った.水筒の湯たんぽが要らないどころか,寝袋のファスナーの一部を開けないと暑いくらいだ.ああ,トレッキングも終わりに近づいたんだな~と感じながら,眠りについた.