このアルハド岬編では,2016年11月12日午後ワディバニハリッド峡谷を発った私たちは,スールを通り,アルハド岬のホテルに到着し夕食.夜ウミガメ保護海岸を訪れ,ホテルに戻り一泊し,翌朝アルハド岬を離れるときの写真を載せました.
先ずワディバニハリッド12を出て,途中スール13を通過し,アルハド岬14に至った.
ワディバニハリッドの流れるシク村からSyさんの3号車に乗り,東に向かった.途中幾つかの村や町を通過する.
通過する村や町以外は,山を含めて荒れ地が多い.そしてこの日通るのは殆ど国道23号線という一般道だが制限速度は写真のように100km/hのところが多い.
ところでアラビア語の綴りは右から左に書かれるが,数値だけは左から右に向けて書かれるそうで,写真の速度標識も100に相当する文字列は左から右に連なっているようだ.
これは通過した村の一つ.村や町に複数のモスクがある場合,一つだけ大きいのがあって,それは金曜モスクで村や町全域から集まり礼拝し,他は町内会のモスクで毎日の礼拝に供されるということだ.なお毎日の礼拝は普通昼の一回だけだそうで,他国の一日5回の原則と比べると緩いというか,現実的というか,理解し易い.
さてこのモスクは金曜モスクか?
スールのエリア,郊外に入り,スタジアムが見えた.この国もサッカーは特に人気があるようで,こうしたスタジアムが要所に揃えてあるのであろう.
なおオマーンのサッカーのナショナルチームは首都マスカットにあるスルタンカーブーススポーツコンプレックスがホームで,最近のFIFAランキングは100位くらいで,日本の50位前後には及ばないようだ.
前方にスールの町とオマーン湾の入江が見えてきた.スールは,千夜一夜物語に登場する船乗りシンドバッドが出航したという港町で,現在もダウ船の造船所があるそうだ.
また近年は,内陸部からパイプラインで送られてくる天然ガスを液化するプラントが建設され,ここからLNGとしてタンカーに積まれ日本にも輸出されているようだ.
スール入江の脇を通過するとダウ船,と言っても釘を使う近代式木造船であろう,が見えた.今はダウ船は観光用程度が主なようである.
スールからなおも進むうちに陽は落ち,暗くなってきた.そして目指すアルハド岬(Ras AL Hadd)に来たようでオマーン湾か或いはアラビア海に連なる小さな入江にボートの浮かぶ光景が目に入ってきた.
そしてTurtle beach resortホテルに到着し,Yさんが皆の分まとめてチェックインしてくれた.
レセプションには他と同様カブースビンサイード国王陛下の肖像画が掲げられている.それと背後の3つの世界時計の輪郭は6角形だ.ここの売り物ウミガメ,そしてそれを冠した当ホテルTurtle beach resortにあやかる亀甲の形を模したものであろう.
ただ驚いたことにここではバスタブが付いていた.砂漠の国の片田舎で申し訳ないような....でもありがたい.
田舎町の旅籠のような感じだ.テレビはビンテージもののブラウン管式で,リモコンは一つだけで容易に映すことができた.やった~.....でもアラビア語放送だけで皆目わからない.
一風呂浴びてレストランに降りた.例によってバフェスタイルで,ヒャーっいっぱいだ.殆どヨーロッパの観光客だ.7,000Kくらいありそうな高色温度の蛍光灯かLEDの明るい照明で,多分ヨーロッパの皆さんには不評であろうが,食べ物がはっきり見えるので実用的だ.
確かここにはビールがあったように思う.
夕食後私たちはランクルでRas al Hadd turtle reserveと呼ばれるウミガメ保護海岸に出かけた.そもそもアルハド岬(ラスアルハド)に来た理由はこのウミガメを見るためだ.
ウミガメは勝手に探して見るというものではなく,保護センターの学芸員の引率下で行動し,説明を受ける.先ずはその保護センターの受付に行く.既に多くの人が並び,Yさんがその後ろに付く.Yさんのお話ではここはいつも混み合っており,受付を済ませてから観察に案内されるまで普通一時間以上待つという.
私たちは2,30人毎のグループに分けられ,順次観察に出かける.センターの係員が現在ウミガメが上陸しているかどうか,いればどの位置かを調べながら,その情報をベースに案内されるようだ.
ウミガメの産卵シーズンは夏で,秋の今は疎らであるそうだ.この日は数匹上陸しているらしいが,3日前は0と,運の悪い日もあるようだ.
そうしたオフシーズンにも拘らず,待合室は順番待ち客でいっぱいで,私たちは空いていたカーペットのオマーンスタイル席に座り待った.待ちの気を紛らわすためか,アオウミガメに扮した館員(写真中央)が何やら説明しているが,ここからは聞こえない.
1時間ほど経って,ようやく私たちの番になった.ヨーロッパの人たちと合わせ30人ほどの団体になって,二人の案内人に従い海岸に向かう.そして2,30分夜道を歩きアオウミガメに出合う.
学芸員がフラッシュライトで照らし出し,私たちは遠巻きでそれを眺め,説明を聞く.写真で黒く見えるのはカメの影で,その右側少し青みがかった灰色がアオウミガメだ.今産卵を終えて,海に引き上げるステージだそうだ.
手前に湾曲した足跡の大元の窪み(写真で右下)はカムフラージュのための穴で,明朝,今産み付けた卵を採りに来るキツネなどの外敵から保護するためだそうだ.
実は産卵した卵は,湾曲した足跡の右側,ライトで照らされ明るい部分の下にあるのだそうだ.普通100個ほど産卵するという.ここもカムフラージュのため砂が自然のままのように均されている.
さて産卵を終えたアオウミガメは重い体を引きながら,アラビア海に引き上げ,暫く行くと波打ち際に至り,そして海に沈んでいった.
やはりウミガメは海が本拠地のようで,5時間海中を泳ぎ,たった5秒間だけ浮上,呼吸することで生きることができるのだそうだ.ひゃ~驚いた.ベテラン海女さんなどでも全く敵わない,いやディメンションが異なる.
世界には7種のウミガメが棲んでおり,うち4種はオマーンのどこかで見ることができ,ここアルハド岬ではアオウミガメ一種のみということだ.
ところで上陸するのはメスが産卵のときだけ,3年毎に,2週間間隔で3回,それを80歳位まで続ける,ということだ.図解すると
成年になり100個産卵--2W--100個産卵--2W--100個産卵-----2年-----100個産卵--2W--100個産卵--2W--100個産卵....以下80歳まで続く,ということだ.
なおメスはこうして生涯に何度か陸に上がるが,オスは生涯決して陸に上がることはないのだそうだ.これまた驚いた.カメと言えば,石の上3代重なって甲羅干しの光景など思い浮かべるが,カメはカメでもウミガメとなると全然違うのですね~
これは別の親の卵から孵化したばかりの赤ちゃん.懸命に手足をバタつかせアラビア海に向かって進んでいる.何しろ腹が地面に載っているので歩くのは大変だ.暗闇を単独でちゃんとアラビア海に向かうのは凄い.
卵から孵化するのは60日後だそうだが,子ガメもまたキツネやカモメの餌食になり易いそうで,こうして夜間に海を目指すのも防護策かもしれない.無事アラビア海に入るには僅か1%くらいに過ぎないという.生後間もなくからの試練の激しさを知れば,気の毒に思えてならない.
また不思議なことに子ガメの性別は砂の温度に依存し,温度が高ければメス,低ければオスになるという.ということは,写真の子ガメは11月の夜,つまり低温下での誕生,オスであろう.
なおラスアルハドタートル保護区は120km2の海岸,海,2つのラグーン領域から成り,1996年以来自然保護区に指定されているそうだ.
そしてこの後保護センターまで歩き,Turtle beach resortホテルに引き上げた.
Turtle beach resortホテルの一夜が明け,11/13(日)朝となった.
窓を明けると,濃い青のアラビア海に入江,砂浜が見えた.今日もいい天気だ(毎日だが)
ホテルレストランに行き,朝食を頂く.パンにチーズ,トマト,ソーセージ,フルーツが残っている段階だ.ソーセージは少なくともポークではなく,はてビーフか?味はやはりポーク製にやや負ける.
そしてTurtle beach resortホテルをチェックアウトし,若いAさんの2号車に乗り,アラビア海沿いを辿る道へ出発した.