デプン寺に上る参道には香木を焚く煙と香りが充満している.露天商も仏具,お香,お土産などを並べている.子供から大人までの物乞いもいっぱい寄ってくる.
この寺の僧は数百人に満たないそうであるが,巡礼者や,我々のような観光客は多いそうだ.マニ車の並ぶ坂道を上っていると,遠くから来たと思われる人や,エスコートされた高齢の人など,いろいろな巡礼者に出会う.
デプン寺は既述のセラ寺と並びチベット仏教ゲルク派の3大寺院の1つ.チベットの寺で最大で,最盛期には世界中のどの宗教の寺院,僧院よりも大きかったそうだ.なにしろ1959年,中華人民共和国のチベット侵攻以前には,15,000人もの修行僧がいたというからすごい.1416年,ゲルク派の開祖ツォンカパの直弟子ジャムヤン法主のそのまた弟子の発願で建立されたそうだ.17世紀にダライラマ5世がチベットの元首としてポタラ宮へ居を移すまでダライラマの寺であり,その後も歴代ダライラマがここで修行を積んだそうだ.
ダライラマの王座,その傍らの十一面千手千顔観音菩薩像,三世仏(過去の阿弥陀仏,現世の釈迦像,来世の実族菩薩),キッチンの巨大釜,世界一大きいというタンカ(チベット仏画)を納めた木の箱,....等など見て回った.
下は,デプン寺の写真あれこれ
寺の下側の原では紫色の花が一面に咲いていた.ツマの花と呼ぶらしい.ちょうど開花の季節なのであろう,この先,チベット高原のあちこちで見かけることになる.なお,羊がこれを食べているのかどうかは判らない.でも,羊っていつも何か食べているから,単にここで遊んでいるとは考えられないかな?
この博物館は中国政府が9600万元の資金を投じて建設され,1999年にオープンしたそうだ.なかなか立派な建物で,日本語のイヤホンガイドがあり,よく聴き取れる.展示室は大変空いていて,ゆっくり見て回れる.ただ,外に出ようとして間違って下のフロアへ降りたら,そこは大きな中国物産販売所のようになっており,往生してしまった.なおそのフロアはなぜか販売員も客も多く,繁盛している様子だった.
入り口近くに展示されていた.新石器時代から初期青銅器時代辺りの相当古い時代のもののようである.正直,そのような有史以前からこの高原に,このように見事な壷を造る民族が住み着いていたことに驚く.
明帝が,辺境,倭の女王卑弥呼に授けた金印と同じように,中国政府は既に古きこの時代からチベットを属国と見なして金印を授けていた,とまあそんな風な展示に見えてしまう.印は代々の王に対してそれぞれ,幾つもが展示されていた.
下は,西蔵博物館の写真あれこれ
この寺は街の真中,平地にあるチベット密教の総本山.正門の前に,香を作る作業場のような建物があって,そこから手前は大きな広場になっている.市民から巡礼者,観光客がいっぱい行き交っている.
7世紀中ごろ,吐蕃国王ソンツェンガンポが,641年に統一を果たした後,唐王朝の文成公主を妻にめとった.彼女がチベットに来て,持参した釈迦像をどこに祀ろうかと指輪を投げてみたら,湖に入った.そこでその湖をヤギの手助けで埋め立てて,廟を建てたのが本ジョカン寺の始まりだと言われるそうだ.何でも,チベット語で,ラ=ヤギ,サ=土地で,そこからラサの地名が生まれたとか.
また,ソンツェンガンポの死後,ネパールから輿入れしたソンツェンガンポのもう一人の妻,ティツンが亡き夫を偲んで建立し,十一面観音を祀った.そのため本殿はティツンの故郷ネパールを向いている,という説もあるそうだ.
ここは20元だったかで写真撮影できた.お堂内には,他の寺と同様多くの仏像や歴代のラマ僧の像が並んでいる.ラマ僧の像は帽子(ゲルク派では黄色)を被っている.柱の裂け目には小さなものがいろいろ埋め込まれている.巡礼の途中で亡くなった人の歯や骨を,家族が埋め込んでいったものだという.これで巡礼の願いが達成されよう.
赤い屋根に突き出た金色に輝く飾りが目に入る.向こう側にはポタラ宮始め,ラサあちこちの様子がよく見える.非番のお坊さんもここで休憩している.
下は,ジョカン寺の写真あれこれ
ジョカン寺の周りは無数の露店が建ち並ぶバルコルと呼ばれる巡礼路になっている.巡礼者の他に,市民や普通の観光客ももちろん多い.いやそちらが多い.巡礼者は右手にマニ車,左手で数珠を持ち,マニ車を廻した回数を数珠でカウントしている.廻るのは皆右回りなので人の流れは比較的スムーズだ.
人込みのバルコルを五体投地で廻る巡礼者も見られる.ジョカン寺は生涯に一度は巡礼に訪れたいとする聖地だそうで,この人たちは遠くから,場合によっては数ヶ月かけて,来たのかも知れない.このような敬虔な仏教徒にあちこちで出会うのもチベットならではである.
下は,バルコルの写真あれこれ
バルコルを廻った後,近くのレストランでチベット料理の夕食を食べた.ここでは特にバター茶が印象深かった.カイラスと思われる背景が描かれたステージでチベットの民族舞踊が披露された.写真の女性の舞は,ゆったりしたテンポで,まあ日本の郷土舞踊と大きな差はないような......でも男性のヤクの舞は,獅子舞のようになかなかダイナミックで面白かった.写真は間に合わなかったが.