ジャンムはネパールとの国境の町,今日はここまで行く.
ティンリーを出て2時間半くらい走ったであろうか,ラローラ(標高5,050m)に到着した.チベット族の慣わしに従い,ここでもタルチョーが風になびいている.先方にはヒマラヤ山脈の一部が見えている.さして高くない山なのか良く知られた山ではないようだ.
下は,ラローラまでの写真あれこれ
ラローラからトンラの間は起伏が緩やかで,広い高原の中を進む感じだ.先方にはローデ山と聞く山群が見え,なかなか快適だ.因みにローデ山とは老人山の意だという.
トンラ(標高5,050m)に到着した.ケルンのチョルテンに風力式マニ車が廻り,タルチョーが風に踊る.風が強いのでたくさん廻り功徳は多大だ.
背後はシシャパンマ(標高8,027m)だ.頂上は,「少し見えたかな~?」という程度で,まあ麓程度しかはっきり見えない.前日眺めたマカルー,ローツェ,チョモランマ,チョオユーの8,000m峰は中国とネパールの国境に在るが,このシシャパンマだけは中国領内にある.また世界で8,000m峰は14座あるが,最後に登頂された8,000m峰はシシャパンマだったそうだ.また初登頂は1964/5/2中国隊によって成されたようだ.
ついでに,14座全ての8000メートル峰を踏頂した最初の人は,エベレスト無酸素初登頂などでも有名なラインホルトメスナー (Reinhold Messner) で,1986年のことだそうだ.
下は,トンラ付近の写真あれこれ
トンラを過ぎると,どんどん高度を下げ,程なくヒマラヤの見納めになる.
5:00PMニェラムの手前のここに到着した.近くに米拉熱波修行洞(Milaraba Buddhist Practice Cave)という看板があったので,ミララバという地名なのかもしれない.この集落は写真の畑が広がる谷の上に位置し,なぜか新築中の家屋が数軒あった.
中尼公路はここからネパール国境の間,大規模な工事中で,こちらからネパール側へは8:00PM~11:00PMだけ,逆方向は深夜の1:00AM~4:00AMの間だけ通行を許可しているとういう.とすると,ここでこれから3時間待つことになる訳だ,まあ,しょうがないので近くを歩いて見るが,放し飼いの犬がいてちょっと怖い.車の中にいても,子供に限らず普通の住民まで普通に物乞いに現れるのにはちょっと驚く.
なおここで8時まで3時間待ちの予定であったが,幸い2時間半後の7時半出発することができた(それでも十分長いが).日本では計画的な道路工事は一般に夜間行い,昼間は通行させるケースが多いように思うが,やはり共産党一党支配の国では道路工事労働者最優先なのであろう.
上記地点で2時間半待つ間,並んだ車は少ない.中尼公路と云う国際路なのに気が抜けるくらいだ.それでも我々の後ろにこのバスが並んでいたのに気付いたときは驚いた.フロントウィンドウの漢字標識,日喀則-樟木とはシガツェ-ジャンムのことなのだ.4WDでも大変な個所が多いのに,このような小型バスで行けるのか不思議に思ったからだ.今思い返してもやはり?であるが,実際は運行しているのだろうからドライバの腕と乗客の肝はすごいものだと改めて感心する.
下は,トンラ~ニェラム手前の写真あれこれ
7時半に進行を再開し,崖っ縁の道をどんどん下る.高度を下げるに従い,谷には霧がかかり,山は緑で覆われるようになる.茶色一色の世界から革命的な変化を遂げる.またこの辺りでは大きな町,ニェラムも無事通過し,今日のターゲット地点ジャンムまで1時間もかからないであろう,と思われるところに停車した.
どうやら崖崩れで道路が塞がれたようだ.8:50PMだがまだ明るい.幸い一帯は道路工事中なので,飯場も直ぐ近くにあり,建設機械もふんだんに在りそうだ.写真の如く実際大きなパワーショベルが落ちた岩を押している.ところが,である.2mほどはあろうか,その大岩は,起き上がりこぼし同様,揺らげども起き返り,ちっとも移動しないのであった.これはちょっと大変そうだ.傍らのドイツ人もこりゃちと時間がかかりそうだ,みたいに言っている.周りには街灯など一切ないので,一眠りすることにした.
一眠りの後目覚めると午後11時を回っていた.もう2時間もたった訳だ.それから30分くらいして,ドーンドーンという大きな音が5,6回響き渡った.ダイナマイトで岩を砕いたようだ.砕くのに成功すれば,あの黄色いパワーショベルで移動できるであろう.爆破が成功したことを願った.爆破から30分,GOのサインが出た.成功したのだ.12:12AM我々の4WDは出発することができた.
下は,ジャンム手前の写真あれこれ
崖崩れで足止めの再スタート後,既に翌日の早朝1時であるが,無事ジャンムのホテルに到着した.もう遅いから,早く休んだら....という声もあったが,最後の中国領内で中華料理と,もう高度障害の心配もない2,350mまで下がったので常温ビールも存分に楽しんだのであった.尤も,最高地点のシェカール,ティンリーにおいてもビールを絶やすことはなかったのであるが.
朝目覚めると,窓の外は緑豊か,濃い霧である.斜面に建物がいっぱい貼り付いている様子は言われるように日本の温泉場のような雰囲気だ.この辺りは何時も霧がかかり,陽は少ないそうである.緑豊かで結構であるが,昨日までの乾いた茶色一色の世界が懐かしい.たった一日なのに......
さて明日はもうチベットを抜け,ネパールだ.