14日目(トレック9日目),今日6月26日はブロードピークベースキャンプを往復する.
今日もいい天気で明けた.周囲の山は皆くっきりと見えている.南方面は左からバルトロカンリ,スノードーム,チョゴリサ,エンジェルピークと並んでいる.
この分だとブロードピークベースキャンプ往復は快適そうである.
この日は朝7時にブロードピークBCに向け出発した.リュックに付けた温度計は-8℃を指し,かなり冷たい.だが,天気がいいので快適だ.
ブロードピークBC(およびK2)はゴッドウィンオースチン氷河(Godwin-Austen glacier)にあり,先ず一旦西に向かい,同氷河に渡るルートに出た.
氷河が融け,川となって流れている.なので川底は真っ白な堅い氷だ.飛び石を注意深く渡った.運悪く足を滑らせた人もいて,暫く靴が濡れたまま歩くことになり,お気の毒だった.
こちらは湖ヴァージョンで,やはり湖底や側壁は白い氷だ.振り向く湖面にはミトレピーク(Mitre Peak:6,025m)が映っていた.
さてゴッドウィンオースチン氷河側に渡った.この氷河は一部は白い氷が露出し,一部はバルトロ氷河同様,砂利や岩で覆われている.ルートは同氷河の向かって右側にあり,これを進んだ.
ブロードピークは既に間近に聳えているが,暫く遡上すると目と鼻の先程度の距離感になってきて,迫力だ.また頂上の形も鮮明に見えるようになってきた.それは外輪山のようなリングが形成されている.これは,遠くから眺めたときに見える左側の弁当箱と共に印象深い.
K2はブロードピークの少し先に位置している.またエンジェルピークは結構裾野から見えるようになってきた.
真っ白という訳ではないが,それなりに白いゴッドウィンオースチン氷河もいい感じだ.
またゴッドウィンオースチン氷河の対岸側に目を転じると,マーブルピークの上流側には,白いスキルブラム(Skilbrum:7,360m)が堂々と聳えていた.
下は,コンコルディアからブロードピークBCに行くまでの写真あれこれ
お昼前,ブロードピークB.C.(標高5,000m)に到着した.ブロードピークB.C.はちょうどゴッドウィンオースチン氷河の中州のようなところに位置し,B.C.から見上げると裾野は氷河から立ち上がっているように見える.いや~豪快だ!
ブロードピークB.C.の標高は5,000m,ブロードピークは8,047m,標高差は3,000m余ある筈だ.でも,そのようにはとても見えない.皆からも,そんなにあるのかな~?という感想が漏れる.日常的にそのような高度差を見る機会があまりないので,ピンと来ないのであろうか?
上述の如くゴッドウィンオースチン氷河は一部白く,氷河らしい.その対岸にクリスタルピーク( Crystle Peak:6,237m)が尖ったピークを見せていた.ちなみにその左側はマーブルピークだ.
ところで砂利や岩の被っていない,このようなゴッドウィンオースチン氷河でも,その表面は荒々しく波打っている.流体であれば風などの要因で波ができ,静まれば徐々に収まる.それが氷の場合,風よりもっと強い,多分自重等によって押しつぶされ,波状になり,外力が除去されても変形は残る,てなことかな?
アスコーレのキャンプサイトで出会ったベラルーシの遠征隊がブロードピークB.C.で国旗を掲げ,テントを張っていた.まだ登り始めてはいないそうだ.もともと1~2ヶ月というレンジで計画しているので天候を見ながらチャンスを窺っているのであろう.
なお,ここでは同隊以外テントは見当たらず,K2とかに比べて登る隊は少ないのであろう.
なお背後はチョゴリサ(Chogolisa:7,665m)で,ここまで来ると台形上のてっぺんまでよく見える.実に美しい山だ.
ゴッドウィンオースチン氷河上流側にはK2の左にある,写真のクリスタルピークがきれいに見える.さらに左にも白い頂が見え,サヴォイヤカンリ(Savoia Kangri:7,263m)と呼ばれるようである.
こうしてバルトロ氷河の支流に入ると新たな高い山が見えるということは,カラコルム山脈には幾らでも山があるということだろう.
下は,ブロードピークBCから眺めた写真
ブロードピークBCからコンコルディアを目指すと前方には常にチョゴリサ(Chogolisa:7,665m)が立ちはだかって見える.チョゴリサは別名花嫁の峰(Bride Peak)とも称されるそうだ.どうしてそのように呼称されるにいたったかは判らないが,全体の形や襞模様の美しさからと想像しても違和感を感じない.
ゴッドウィンオースチン氷河対岸には黒いマーブルピーク(Marble Peak:6,238m)ともう1つの黒い峰が聳えている.またその間からは支流がゴッドウィンオースチン氷に河注いでいる.支流の先にスキルブラム(Skilbrum:7,360m)が位置しているようであるが,裾野は見えない.スキルブラムはマーブルピークより1,000m余高いのだが,山肌はエライ違いだ.
さて氷の湖辺りまで下ると,ゴッドウィンオースチン氷河を横切るように一旦西に向かう.このときバルトロ氷河の遥か下流にはパイユピーク(Paiju Peak:6,610m)が見えてくる.
パイユピークは登り始めてから間もなく(雲で裾野だけではあったが)見えていたし,コンコルディアからも見えるし,いい山だ.
往きと同じルートで戻ったのであるが,氷の川は増水しており飛び石が冠水し渡れない.ポーターの皆さんが身を切るような冷たい川に入って,石を並べ,我々の手を取って渡してくれた.ポーターの皆さん,ほんとにありがとうございました.
4:30PM頃,コンコルディアのキャンプサイトに到着した.今日も天気に恵まれ幸運だった.この日はこれまでで一番標高が高く,また長い時間歩いた.戻ってダイニングテントでお茶を出してもらい,続いて夕食を戴いた.パイユで処理された山羊肉はまだ残っており少しずつ調理に使われており,美味しかった.
やがて8時くらいになると,写真の無名峰は金色に輝き,そして程なく黒い山陰に変わっていった.つかの間のシーンであるが,無名峰としておくにはもったいないような美しさの山だ.
下は,ブロードピークBCから戻りのときの写真
やがて周囲は暗くなった.8:40PM頃になるとアザーンが聞こえてきた.信仰心に篤い人はこれから一日で最後のお祈りに入るであろう.そのお祈りを終えたころ,例の調理用具入れをドラムに我々のポーターたちの唄が始まった.程なく,遠くから少しメロディの異なる唄が聞こえてきた.別グループのポーターたちのようだ.そして,こちらでまた唄を返し,.....掛け合い唄合戦は続くのであった.
夜中手洗いに起きると,降る雪の如く満点の星空だった.寒くて僅かな時間だけであるが,普段の1年分見る星の数より十分多いであろう.いや~見事だ.
今日で概ね訪ねるところは全て廻った.特に要のここ3日間は好天に恵まれ,所期の願いは概ね叶えられた.どうもありがとうございました.明日はコンコルディアにもう1日滞在し,のんびり過ごす予定だ.