グゲ王国(842年-1630年)は中央チベットの吐蕃王朝が崩壊したとき,王家の一部が西チベットへ落ち延びて,ここンガリ(Ngari)地方ツァンダに建国した王国だそうである.チベット仏教が盛んで,この後訪れるピヤン/トンガ石窟群なども築いた.
グゲ王国の遺跡は山の上にあった.上方に宮殿,中間部には仏教施設,主に下方の洞窟などに一般市民が住んでいたようである.グゲ王は荒廃した仏教再興のため,隣国のカシミールへの留学僧派遣や,カシミール様式の寺院建築,壁画の導入などに力を入れたそうである.この地方には今でこそ多少ポプラなど植林されているが,当時はさらに少なく,カシミールから木材が輸入されていた模様だ.やがて1042年にはインドの高僧アティーシャを招聘したという.
ここが入り口になっており,入場できる.文革で大分破壊されたが,現在は観光資源として再生に注力しているようだ.破壊されながらも一部残る白殿,紅殿といった寺院の壁には古い壁画などが残され,専門の学芸員が説明してくれた.
岩山の頂上には夏の王宮が建てられていた.周囲のトリンの景観を望み,涼しそうだ.地下部には冬の王宮があったようであるが,降りるのが大変なトンネル状の地下階段を下ってみたが,狭い空間が残っているだけだった.既に壊れたのか,或いは非公開なのか不明だ.
頂部にはマンダラ殿や馬囲いも残されている.岩山ではあるが,一部の稜線伝いに馬も登れる構造になっており,王など身分の高い者は歩かずに馬で登ったようだ.
グゲ王国麓でランチのとき,ドライバの一人,テンジンさんが持参した乾燥羊肉を切り分けてくれた.塩とか胡椒で味付けなどせず,そのまま乾燥させた干し肉のようだ.なかなかいける味で,ビールがあればなおいいかもしれない.
下は,グゲ王国遺跡と周辺の写真