さてタルチェンから期待のトレック1日目が始まった.
下はトレッキング全行程のマップ.
好天に恵まれたタルチェンの朝,新しくできた市営商店街を抜けて巡礼路に入った.傾斜は緩やかで少しづつ高度を上げる.眼下には広い平原とその先に一昨日過ごしたマナサロワール湖対岸のナムナニ峰がよく望める.
程なく巡礼路からカイラス山(カンリンポチェ)が最初に見える地点に至る.盛大にタルチョーがはためき,カイラス南面頂部が少し現れている.ここで五体投地(キャンチャ)する巡礼者もいる.尤も巡礼路全てを五体投地でコルラする巡礼者もいるというから,まあチベット仏教徒にとっては普通の行為なのであろう.
我々と違ってチベットの巡礼者は,ポーターなどに頼らずちゃんと自分で布団など寝具や食料を背負って歩いている.子供を負ぶっている人もいる.きっとこのように苦労してコルラする方が,報いも大きいであろう.
やがてタルボチェに到着した.タルボチェとは目の前の巨大なタルチョー柱のことだそうで,ここでは毎年一回,お釈迦様の誕生日と,悟りと,入滅を祝う「サカダワ祭」が行われるそうだ.サカダワ祭では,この柱を一度倒し,タルチョーを新しく付け替えてまた立て直す行事があるそうだ.訪れる人で毎年賑わうとのことだ.
タルボチェ,つまりタルチョー柱の背後,カイラスの麓に見えるテーブル状の岩盤は鳥葬場になっているそうだ.葬儀では主にハゲワシが集まるそうである.ただ普段は何処か,さらに山奥にでも引き篭もるのか,その鳥を見かけることはついぞできなかった.
下は,市営商店街からタルボチェまでへの写真
タルボチェから少し先に行くと広い河原の道に出る.巡礼路は川(ラチュと呼ぶ川のようだ)を越えたり,戻ったりしながら上流側に辿るようになっている.何れにしても緩やかな道だ.
川の対岸,西側の丘の上にチェクゴンパ(Chuku gompa)が見えた.ゴンパに至る道はそれまでの巡礼路と比べてかなりの急登だ.少し登るとカイラス(カンリンポチェ)を背にしたヤギが出迎えてくれた.皆同じようにこちらに顔を向けるので,ちと照れてしまう.
坂を登り,4,860mのチェクゴンパにたどり着いた.川向かいにはカイラスを麓から望むことができ,なかなかいい眺めだ.チェクゴンパはカギュ派の寺院だそうで,現在数人の僧侶がいるようである.ここもやはり文化大革命の頃かなり徹底的に破壊された模様であるが,近年ようやく再建されたようである.僧の一人(若しくは寺男)が中を案内してくれた.薄明かりのお堂をバターランプが照らす光景が印象に残る.
ところでカギュ派とは,密教の一派で,10世紀頃キュンポとマルパという2人の在家密教行者がインドやネパールに留学して密教を持ち帰ったことから始まるという.カギュ派はさらに幾つかの宗派に細分されるらしいが,難しくてこれ以上......
スケッチをするトレッカーの背後からじ~っと眺めるチベッタン巡礼者数人.必ずしも絵に興味があるとは限らず,スケッチを終えたとき,使用していた鉛筆を頂戴したいがために眺めているケースが間々あるそうだ.な~るほど,そんなこともあるんだ.
下は,チェクゴンパへ至るまでの眺め
本来チェクゴンパ下の河原でテントを張りキャンプの予定であった.しかし最近になって,ここでキャンプするのは当局から禁止されるようになったそうで,一旦タルチェンへ戻り,前日の招待所で一夜を過ごすことになった.チェクゴンパまでは巡礼路と並行して,4WDの道路もあるので,迎えに来てもらい,引き上げた.翌朝またここまで送り届けてもらい,歩きを再開することとなった.かなり楽ちんなのだ.