このカルカラ谷(2)編では,7月10日朝南イニルチェック氷河BCからヘリで再びカルカラ谷に戻り,カルカラ川沿いの花ハイクに出掛け,山羊取り合戦ウラクタルトゥシュ(Ulak Tartysh)を見物し,カルカラ谷キャンプサイトで夕べの椿事を体験し,翌7月11日カルカラ谷を離れるときの写真を載せました.
カルカラ谷はマーカー19に位置している.
ここで黒い線はキルギスタン/カザフスタン国境で,カルカラ川と重複している.
南イニルチェック氷河BCからヘリで再びカルカラ谷に戻り,テントに荷物を運び,ちょっと休憩し,A先生の案内でカルカラ谷花ハイクに出掛けた.
A先生には南イニルチェック氷河BCまで一緒に行ってもらったのだが,すべて雪で覆われていて,花が探せなかったのだ.
カルカラ川沿いは花だらけだ.カルカラ谷の標高は2200mくらいで高くはないが,それだけ植物が育ちやすい環境にあるのかもしれない.
日本で普通に見かける花もあるし,私が知らない花もある.
7月10日カルカラ川沿いで見かけた花幾種類か写真に納めた.
カルカラ川手前にはキルギスタン国旗と同じ色のポスト,川の向う側にはカザフスタン国旗と同じ空色のポストが立てられている.
川を挟んでそれぞれの国土ですよ,という分かり易い標識だ.特段バッファゾーンとか無く,狭い川に接して直ぐ住宅や農地があるのが平和である印象を受ける.揉め事のある国ならこうは行くまい.
これは一例だが,殆どカルカラ川に接してユルトが建っている.また私たちの常設テントも川の直ぐ横だ.
ところでこちらの家族は大釜で何を火にかけているのでしょうか?もう遅いが近寄って覗き見すれば良かったな~
私たちと同じようにハイキングの家族だ.でも花探しではないだろう.キルギスタンで花探しするのはA先生のように専門家や薬草を採取する人で....と思われる,多分.
ドライバーAdさん,Acさんは南イニルチェク氷河には行かないので2日間お休みだ.Adさんはカルカラ川で釣りを楽しんでいた.いわゆる渓流釣りで,その種の魚が釣れるようだ.なお私たちのキャンプサイトでも釣っているキャンパーがいた.
夕方になったので羊飼いの青年が馬に跨がり,お尻の大きな羊を家の近くの羊囲いに追ってきたようだ.
ここの庭には大きなログハウスが建てられている.大変珍しい.さてこれは倉庫であろうか.
干し草屋根の小屋だ.おもしろい.干し草は実際小屋の屋根として機能しているのだと思われるが,冬場に飼料として消費されると屋根がなくなる.....大丈夫な仕組みなのであろう.
山羊取り合戦ウラクタルトゥシュ(Ulak Tartysh)は2つのチームが首を落とした山羊を持ち上げ,ゴール(四角い1mくらいの高さの盛り土)に運び入れることで,得点する.ラグビーボールを山羊に替えて,馬に跨って山羊を奪い合う感じだ.
ウラクタルトゥシュには馬と騎手がいる.こちらの家はいい馬を多数抱え,今日のウラクタルトゥシュにはゲーム毎に交代させながら出場させるようだ.
ウラクタルトゥシュはとても人気のスポーツで,村には専用グラウンドが用意されている.そこに2つのチームのプレーヤーが,地面に置かれた山羊を挟んで対峙している.間もなく開始だ.
上述の有力馬主は親戚や友人も連れて観戦だそうだ.これはカルカラ谷のこの辺りの村のゲームだが,ウラクタルトゥシュは,州レベルの大会,国レベルの大会があり,強い馬と騎手はそうしたレベルの大会も目指すのであろう.
ビデオカメラマンもいて,記録ビデオ制作とか,TVのニュースとかスポーツ番組用かな....
前屈みになっている選手が,右手で山羊を拾い上げ,左側のゴールに運ぼうとしているところだ.ただ相手チームは当然,それを阻止し,山羊を奪い返そうとしている.
ただユニフォームなどで色分けされている訳ではないので,チームメンバーの識別が私たちには難しい.村のゲームなので,選手は互いによく知った顔で,プレイするに支障ないのだそうだ.
激しくもみ合っているが,まだ山羊をキープし,ゴールに近づいてきた.ゴール前には敵味方双方の選手が,ゴール妨害あるいはサポートのため待機している.
たしかこの時は結局ゴールできなかった.
応援の家族も駆けつけている.写真いいですか,と訊いたら,こんな風にポーズを取ってくれた.
私たち観客の前で馬の乗りこなしワザを披露してくれた.将来ウラクタルトゥシュプレーヤーを目指しているのであろう.とても若そうで,まだ就学年齢前に見える.両親を亡くし,叔父さんに育てられているとか.
さてウラクタルトゥシュを観戦して,キャンプサイトに戻った.そしてダイニングユルトで夕食になった.赤飯のように見える.そして野菜サラダ,マッシュポテトにチキンかな.
ダイニングユルトの外で,急にただならぬことが起こった.大勢の馬上の男どもがユルト前にドドドッと乱入してきた.西部劇で騎兵隊のキャンプにインデアンが乱入,いや逆にインデアンの村を騎兵隊が襲った,まあそんなシーンだ.いきなりのことで,まあ椿事である.
実はこの日はカルカラ谷の祭りで,ウラクタルトゥシュも行事の一つ,このキャンプサイト乱入も行事の一つ,ということだ.ウラクタルトゥシュで奪い合いをした山羊を売るのが主目的だそうだ.
私たちのユルト周囲でしばし気勢を上げると,また怒涛の如く馬を駆って去っていった.
山羊の売買が行われたか,どうか判らないが,一匹4500ソムくらいだという.ウラクタルトゥシュで使われた山羊は散々投げられたり,引っ張られたり...揉まれているので美味しいそうだ.なお参考のため羊一匹の値段は5000~7000ソムくらいという.羊は大きく,重いので単価は同じ程度なのか?
対岸のカザフスタンの山は夕陽に輝いているが,カルカラ谷は陽がなくなり,暗くなっていった.いい一日だった.
カルカラ谷キャンプサイトで一夜明け7月11日朝になった.朝食を頂いて,サイトのスタッフの皆さんにお礼を述べここを去ることになる.誰が名付けたか,私たちがグリちゃんと呼んだ若い女性はウエイトレスとして一人で全部賄ってくれた.ご苦労様でした.
また植物のA先生は役目を終え,別便で首都に戻られるそうだ.ありがとうございました.
私たちは2台の車に分乗し,カルカラ谷を離れた.窓から眺めるカルカラ谷は緑濃く,樅の木が立ち美しい.いいところだった.