このサリモゴル村編では,7月4日朝アチクタシュBCを離れ,サリモゴル村を訪れ,村の一家族を訪れて,伝統のユルト,マナス叙事詩の謳い,嫁入りの儀式,揺りかごに寝かせる儀式など見せてもらい,また母屋のダイニングルームでキルギス伝統料理の昼食を頂戴したときの写真を載せました.
サリモゴル村はマーカー5に位置している.アチクタシュBCに行く際に一度通過したことがある.
アチクタシュBCから下り,暫く行くと遊牧家族のユルトやテントがあった.容器を湖で洗ったりして,馬のミルク搾りの準備のようだ.家畜に関する仕事は毎日欠かせないので,あまり休日が取れない.大変だと思う.
岩の上に4匹も並んで私たちを監視している.マーモットがこんなに並ぶのを見るのは初めてだ.多分好物のエーデルワイスが多いのであろう.
馬はたいへん目立つが,一方羊は然程でもない.でも一旦羊がいるとなると大量に群れを成している.
近くになると判るのだが,お尻の大変ふっくらしたタイプがいるのだが,キルギス特有の品種だそうだ.その部分は主に脂肪成分なのだが,とても美味しい脂身ということだ.
トラックの積み荷はユルトの部材のようだ.運悪くエンジン故障のようだが,引っ越しの最中であろう.家一軒が中型トラック一台で納まるのは素晴らしい.
キルギス伝統の白いフェルトの山高帽カルパック(Kalpak)を被ったカウボーイ(かどうかホントは判らないが)が馬で行く.アルゼンチンのガウチョ,アメリカのカウボーイなどと同様に実にカッコいい.
ここはサリモゴル村沿いの大きな川の少し手前辺りだ.往きでも越えたのだが境界がはっきりしない川があり,また渡ることになった.幸い水嵩は往きと変わりないようで,ベンツ小型バスはざざざざ~と渡った.
やがてバスは鉄橋を渡り,サリタシュから始まりタジキスタン首都ドゥシャンベに連なるA372街道に出た.さあこれからは立派な舗装道路で,目指すサリモゴル村は直ぐであろう.
さてサリモゴル村に到着した.家は平屋建て,トタン屋根が多いか.日干し煉瓦の塀や建物も見える.ユルトはあまりないが,たまに見える.写真手前の黒い塊の山は乾燥家畜糞で,燃料であろうか,いや肥料か.
サリモゴル村に入り,ブニサ家の皆さんを訪ねた.男衆は家畜を追って野に出ているが女性たちは家に残っている状態で,これが典型的遊牧家族の昼間の様子なのであろう.
ブニサ家ではアライキルギス族の伝統文化を紹介するため自宅庭先にユルトを建てている.比較的小型に見えるが,入って座ってみると案外広さがある.ドア口を見るとフェルトは結構厚く,屋根の下縁には毛の飾りの付いたXマークが並んでいる.さてこれは家紋であろうか?
ユルト内部は伝統デザインのカーペットが敷かれ,パンタグラフ状円筒壁には壁掛けが飾られている.
ユルトの天井を見上げると開閉式天窓の周囲に和傘の骨のような構造材が放射状に出ている.これはキルギス国旗と同じ,いや国旗がユルト天井を模したものだそうだが.
ガイドTさんによると,キルギスには例年ユルト組み立てコンテストが開かれ,速いグループは20分以内に終わるという.普通の人たちでも3,40分でできるという.
キルギスにはマナス叙事詩という有名な詩があるという.紀元後840年には既に存在し,文字にすれば50万行になるという超長編叙事詩で,専ら口伝で伝えられるという.マナスは本叙事詩のヒーローで,異民族との戦いが主テーマという.キルギスあちこちに銅像が建てられているそうだ.
ところでこのマナス叙事詩を詠う専門家がいるのだが,普通青年層以上が一般的で,このような若い子(ブニサさんのご長男の長女,つまり孫という)が....とガイドTさんも大変驚いたそうだ.本人がさらに幼い頃に興味を示し,習い始めたのだそうだ.
原語で詠うので,少しも理解できなくて,ごめんなさい.これからも精進してください.
この子はマナスさんの娘さんで,高校が終わり,秋からオシュの大学に行くという.長い髪はキルギス人の場合美人の必要条件で,この子は実際美人で長い髪だ.そしてその長い髪を幾束かに分けて編む.
編んだ髪には帽子が載せられ,さらに布が巻かれる.とても重そうな状態になる.
こうした装束で嫁入り先に嫁ぐと,カーペット上に座り,スカート裾周りに逃げられないように石の重しが置かれ,また多産願いの米が撒かれるそうだ.米撒きは理由は違うかも知れないがキリスト教圏と同じだ.
またお嫁さんの周りにはカーテンが掛けられ,覗いて見るためにはご祝儀の金一封を渡さないとならないという.へえ~と思った.
キルギスで悪名高い誘拐婚は,この地方ではあまりないという.ただ一般に女性は若くして結婚するケースが多いという.ガイドTさんの予想では,彼女は髪が長いし,美人だから,オシュの大学行くと直ぐに結婚の申し込みがあるでしょうとのこと.結婚すると通学がままならなくなるが,そうした女性が多いため,大学側も講義受講以外で単位を取る方法も提供しているそうだ.ネットでとかかな.
赤ちゃんを寝かせるために先ずこの揺りかごにぐるぐる巻きにする.しかもおしゃべりできないよう口に揚げパン(ボルソック)が咥えさせられる.巻かれたのは今まで機嫌よかった男の子だ.その巻き方はめちゃくちゃきついのだ.どうしてそんなにきつく....とこれには驚いてしまった.
さすが男の子も束縛され,不快なのであろう泣き始めた.すると今度は揺りかごを左右に激しく揺らした.揺りかごであるから揺らすではあろうが,あまりにも激しい.私たち皆からは,揺さぶられ症候群大丈夫か?との声が漏れた.ほんと心配だ.
ユルト壁にはキルギス伝統のフェルトや刺繍が飾ってあった.お土産販売品を兼ねているようだ.
私たちは昼食を頂くため母屋のダイニングルームに上げてもらった.とても広い部屋で私たち全員が座れる.それと椅子ではなく,床に座るスタイルで,日本以外では珍しいような気がする.
カーペットは伝統模様だが,花柄のタペストリーは少し違うかな....
テーブルにはキルギス伝統料理,マトンにジャガイモの煮込み,揚げパン(ボルソック),なすとトマトのはさみ揚げ,トマトやキュウリのサラダ....などを出してもらった.ごちそうさまでした.
ついでも他の部屋も見せてもらった.ここは寝室で,幾つもベッドが並んでいる.床に座って食事はするが寝るのはベッドだ.床に寝るのは日本だけかな~
ここはキッチンの一部で,予備室かな.ダイニングルームもそうだったが,植物や花のプランターが並べてあって,良く育っている.
さてこれでサリモゴル村の民家訪問は終了した.次はオシュに向かう.