このウズゲン編では,7月5日朝オシュの宿を出て,ウズゲンを訪れ,カラハン朝遺跡を見て,ウズゲンの街をざっと眺め,ウズゲンの市場を見物したときの写真を載せました.
ウズゲンはマーカー9に位置している.周囲に川が多いためか,米の名産地で,プロフ(キルギス風ピラフ)に最も適した米ができるという.
またここもオシュ同様ウズベキスタンとごく近くで,何と住民の85%はウズベク人で,かつてのキルギス系/ウズベク系抗争では数百人レベルの犠牲者が出ているそうだ.
ところで今日7月5日はラマダン明けの日で,朝街の広場で皆でお祈りし,朝から食事して良いそうだ.特に黒い羊を食べる伝統があるそうだ.そんな訳でこれから見物する遺跡のチケット売り場など閉まっている心配はないのかな~などと若干気になったが,実際何も支障なくいった.
私たちの2台のバスはウズゲン目指し,北東に進んだ.途中はまだフェルガナ盆地の平原であり畑や牧草地が広がっている.ただ天気が芳しくないので些か色彩は物足りない.
ウズゲンに着き,先ず古いミナレットを訪ねた.このミナレットはカラハン朝時代の11世紀に建造されたと見られているという.基部の直径は9.1m,高さは19.1mで,11世紀建立時は遥かに高かった(地震で崩れた)と推定されるそうだ.近くにモスクの跡を見ることはないが,アザーンを発する場であると共に,監視台の役割を兼ねていたそうだ.
焼成レンガをセメントで固めた構造のようだ.多分鉄骨等はなく,地震の横揺れには脆いかも知れない.基部の上の円筒部の表面はレンガ表面をアラビア文字風に凹凸させて嵌め込み,レンガ色一色で単調になりがちな欠点を上手くカバーしたデザインだ.
ところでカラハン朝とは何ぞや?840~1212年中央アジアに興った最初のトルコ系王朝で,10世紀中頃にイスラム化したという.カラハン朝成立の過程ではトルコ系カルルク人がキルギス族,ウズベク族,イラン系民族と戦い滅ぼしていったという.つまり中央アジアのトルコ化が進んだわけだ.
そしてカラハン朝拠点の一つがここフェルガナ盆地ウズゲンだったということだ.
螺旋階段を上った.最初暫くは暗黒世界だ.上に近くなると,文字通り光が見えてきてほっとする.
ミナレット頂には広い展望室が備えられている.現在も機能しているミナレットであれば普通四方にラウドスピーカーを備えているが,ここは遺跡なのでそうしたものはない.
ミナレット展望室からはウズゲンの街四方がよく見える.そしてこうして街を眺めると高い建物はなく,このミナレットが街で一番高いのかな~と感じられる.
せっかく高いところがあるのだから,通信や放送アンテナを設置しようとか,監視カメラを置こうとか.....言い出さないのがいいと思う(ヨーロッパの高い聖堂の上にはアンテナがよくある)
壁に掲げられたプレートによると11世紀の霊廟だそうで,ミナレットの先に建てられている.やはり焼成レンガ作りである.
ドーム天井を持つ広い部屋になっている.
霊廟壁には美しい模様が刻まれている.所謂アラベスクのカテゴリーであろう.
これは上記ウズゲンミナレット展望室から見た写真だ.中程の黄色い建物はウズゲン市庁舎で,その後ろは旧ソ連時代に建てられた集合住宅が多いそうだ.
ところでガイドTさんの一番上のお兄さんは当ウズゲン市長を務めたことがあるそうだ.だが,ご両親に心配され,一期(4年だったか)で退いたそうだ.実はキルギスタンで政治家を務めるのは大変危険,しばしば暗殺事件も起こるのだそうだ.しかもウズベク系/キルギス系抗争の火種は多分尽きていない当地ならなおさらであろう.市長のあとはビジネスに転じたそうで,ご両親もホッとしているという.
結構交通量があるので大通りとした.前述のようにあまり高層の建物がない街で,人口は5万人ほどであるそうだ.
多くはないがカルパックの男性をときどき見かける.一方女性は他の中央アジアの女性と同じようにスカーフが一般的だ.ただスカーフの色あいや結び方はアラブ圏とは多少違って,イスラム色が緩いように見える.
それと,あまり傘をささないそうだが,さすがこの日の降りは大粒で傘の人も結構歩いている.
日本でもよくある移動販売車だ.メロンの販売で,朝採りで積んできたのだろうか.美味しそうだ.
ウズゲンの中央市場をいろいろ見物してきた.
手前の茶色のお米がプロフ(キルギス風ピラフ)に適した品種らしい.ただこの種は米研ぎが大変で随分何度も水を流す必要があるそうだ.またこの日は役所などは休日になるという.
予めパックした肉がないのがこの辺りの肉屋さんの特徴.
ガイドTさんに市場(スーパーより少し安いそうだ)でのお肉の値段を訊いてみた.
また2007年当時,中央アジアの旅2007で訪れたバラサグン(キルギスタン)で同じような質問をそのときのガイドさん(女性)に訊いてみた結果が該ページに載せてあるので,その値と並べてみた.
種類 | 今回2016年7月 | 前回2007年7月 | 註 | ||
---|---|---|---|---|---|
1kgの価格 | 円換算1S=\1.56 | 1kgの価格 | 円換算1S=\2.50 | ||
マトン | 290ソム | 452円 | 180ソム | 450円 | |
ラム | 310ソム | 483円 | - | - | |
ビーフ | 340ソム | 530円 | 150ソム | 375円 | |
馬肉 | 360ソム | 561円 | 120ソム | 325円 | 儀式に必須.ソーセージは高価 |
ヤギ | - | - | 100ソム | 250円 | 一匹4500ソム |
チキン | 250ソム | 390円 | 90ソム | 225円 | |
ポーク | 200ソム | 312円 | 180ソム | 450円 | 非イスラム教徒用,輸入多い |
ということになろう.
手前は食用油だ.キルギスタンでは食用油としてはひまわり油と綿花油が使われるということだ.綿花から油ができるということを初めて知った.
トマトやナスの手前に菜っ葉がある.さてこの菜っ葉は何でしょうか.
リンゴはもう収穫できるのでしょうか.果物一般はウズベク産が多いようだ.ここウズゲンではウズベク人が多数を占め,またウズベキスタンに近接しているという事情も関係しているであろう.
ジャガイモ,人参,玉ねぎといった根菜に特化して商売している.しかも3人の男で....帽子からするとウズベク族であろう.
ドライフルーツがメインで,ナッツ類も揃えている.覗き込んでいたらドライ杏を分けてくれた.どうもすみません.
スプロケットなどかなりマニアックなものが並んでいる.スポークのない車輪ハブなど,買ったとしても使うまで大変な作業になりそうだ.マニアならやるのかな.
大屋根市場の出口にはあぶれたお店が結構並んでいる.この果物野菜屋さんもそんな一つ.
手前のズングリした濃いグリーンはキューリだと思う.この辺りはこうしたズングリタイプが一般的なようだ.
キルギスでパンは幾種類かあるであろうが,この丸く平べったいナン(nan)は最も多く食べられているようだ.ただ他国のかまどの内側に貼り付けて焼くタイプと較べて厚みがあるかな.焼いている場面も見てみたいものだが...
こうしてウズゲンを廻った.次はカルダマ峠に向かう.