この氷河BCへ飛ぶ編では,7月9日朝カルカラ谷のヘリポートから飛び立ち,アラトー山脈(天山山脈)上空をフライトし,南イニルチェク氷河BC(ベースキャンプ)に着陸するときの写真を載せました.
ここでマーカー19はカルカラ谷,20が南イニルチェク氷河BCで,この間をヘリで飛ぶ.
また21は名峰ハンテングリ(7,010m)でカザフスタンとの国境に位置し,22は天山山脈(アラトー山脈)最高峰ポベーダで中国(ウイグル)との国境に位置している.マップで黒い線はそれぞれの国境だ.
フライト予定の7月9日朝,カルカラ谷は若干風が強そうだがよく晴れている.テントの傍には既に牛が朝食中だ.
目指す南イニルチェク氷河が見える訳ではないのだが,一応天山(アラトー)方面に目をやると大丈夫そう(単なる感覚)だ.
ということでこりゃ予定通り飛びそうだ.
クルーの皆さんは機材の状況を確認し,やがてエンジンをスタートした.
そして私たちの荷物を積み込んだ.大型ヘリなので荷物の制限がなく,持参のダッフルバッグそのままで済んだので楽だった.
6:30AM搭乗が始まった.このフライトでは私たちとポーランド登山隊の皆さんが一緒だった.合わせて20人位,それと荷物全部一緒だ.
全員乗り込み着席するとこんな感じだ.リベット剥き出し,板金にペイントの内装,シートベルト無しベンチは如何にも軍用機(実際キルギス軍機)だが,広さには驚く.
荷物の積み方など極めてラフで,乗っている私たちの移動も制限されない.まあ小型旅客機くらいの余裕度がある.
クルーはコックピットに3人だ.左にパイロット,右にコパイロット,そして中央(この背中を見せている人)は通信士?いや航空機関士?射撃手?....判らないのだが,この方がこの席を立ち,私たちを順次交代して座らせてくれた.
さて最終確認が済むと,エンジン出力を上げ,機体はふわりと浮上し始めた.
6:45AM機は離陸し,機首をアラトー山脈(天山山脈)に向け,高度を上げながら飛び始めた
山岳フライトで,しかもヘリなので,ある程度遅れは覚悟していたが,予定通り飛び立ったのがとても嬉しい.
ヘリのスピードは速い.あっという間にアラトー山脈(天山山脈)上空になった.尤もカルカラ谷が天山間近なためでもあろう.
こうして眺めると白銀のピークが無数に連なり,見事な景観だ.山の多くは無名峰であろうか.
コックピットに入れてもらい,真ん中のシートに座る.さすがこの席は上から下まで視界がよく利く.いい眺めだ.
このカッコいい山容は名峰ハンテングリ(7,010m)かと思えるくらいだ.しかし私は一番前,ドア脇に座っていたので最初にコックピットに入れてもらった.つまり天山山脈はカザフスタン寄りの筈で,ハンテングリの遥か手前なのだ.
ということで美しい山がごろごろ転がっているのだ.
コックピット席を立ち,一番後ろのシートに廻って座る.
一番後ろに廻り,背後を見るとさらに『軍用』のイメージが強くなる.つまり尾っぽ辺りのメカむき出し感が強くなるのだ.
これが北イニルチェク氷河であるという100%の自信があるわけではないのだが,多分そうであろう.北イニルチェク氷河は私たちのランディング予定の南イニルチェク氷河に対し,名峰ハンテングリを挟んで北側を流れている.そして下流で,南北イニルチェク氷河は交わり一つになるようだ.
ヘリは高度を下げ,南イニルチェク氷河の左岸モレーンへの着陸態勢に入った.氷河が白いのは雪が積もっているためではないだろうか.傾斜の急な部分で真っ白な氷だけというのはよく見るが,傾斜の緩い氷河は普通かなりの岩石で覆われていることが多いと思う.雪で覆われているにしても,真っ白な氷河はきれいだ.
無事ヘリは南イニルチェク氷河BC(4,000m)に着陸した.いや~ここも快晴だ,すばらしい.
ヘリは次のフライトがあるので,ローターは廻したままだ.私たちは地上に降り立ち,雪煙が舞い上がる中,ヘリポートを離れた.
真っ青な空が美しい.ヘリ背後がゴーリキー(Gorky Peak:6,050m),中央がチャパエフ(Chapayev Peak:6,371m),右がハンテングリ(Khan Tengri:7,010m)ということだ.
着陸すると直ぐ,天気のいいうちにと今度は天山山脈(アラトー山脈)最高峰ポベーダ(Pobeda Peak:7,439m写真中央)を背に記念写真を撮った.
ポベーダ峰は天山山脈最高峰であるとともに,キルギスタンの最高峰でもあるそうだ.
なおポベーダ峰とハンテングリ峰は,南イニルチェク氷河で16km隔てられているそうだが,このベースキャンプは双方の山の基地として活用されるという.それと私たちのようなハイカーもいる.