遍路6日目(2017年11月5日)Pilgrimage day 6

この遍路6日目編では,2017年11月5日早朝民宿鮒の里を出発し,第二の遍路ころがしとも言われる第20番 鶴林寺,それに第三の遍路ころがしを行く第21番 太龍寺を経て,第22番 平等寺に至り,直ぐ傍の民宿山茶花に頼み込んで宿泊させてもらったときの写真を載せました.

遍路6日目周辺マップと札所


 

民宿鮒の里を出発

早朝民宿鮒の里を出発

早朝民宿鮒の里を出発

11月5日朝になった.前日の計画通り,5:00鮒の里のダイニングルームで朝食を頂き,お昼のおにぎりを持たせてもらった.そして5:30出発した.

5:30はまだ日が明けず,暗いがこの辺りは山ではないので街灯があり,別にヘッドランプがなくとも全く問題ない.写真のように第20番への分岐点標識や,その路面はよく見えている.


明るくなり緩やかに高度を揚げる

明るくなり緩やかに高度を揚げる

徐々に明るくなり,そしてそのうちすっかり明けた.第20番 鶴林寺への距離は長いがいい道が続く.周囲は既に収穫の済んだ田んぼや畑が多い.


第20番 霊鷲山 宝珠院 鶴林寺(りょうじゅざん ほうじゅいん かくりんじ)

勝浦町辺り

勝浦町辺り

大分歩いて勝浦町辺りに来た.若干ゴミが散乱しているが両岸の並木を映す静かな流れがなかなかいい.


歩き遍路道と車道の分岐点

歩き遍路道と車道の分岐点

第20番 鶴林寺への案内,歩き遍路道と車道の分岐点にやって来た.これを見ると歩き3.1km,車5.2kmであるが,これから第二の遍路ころがしとも言われる歩き遍路道は1時間くらいはかかろう.車で5.2kmはあっという間であろうが.


二重屋根の住宅

二重屋根の住宅

上分岐点近くで見えた二重屋根の住宅.徳島やこの先高知でしばしば見かける豪華な建築様式だ.またそれに見合う塀が築かれ,庭も備えている.


少し上り展望が効く

少し上り展望が効く

遍路道は小路になり,少し上ると下の町,おそらく勝浦町であろうが,見渡せるようになった.なかなかいい景観だ.


茅葺き屋根の遍路小屋

茅葺き屋根の遍路小屋

さらに進むと茅葺き屋根の遍路小屋があった.傍らの説明書きには,本小屋はとくしま文化財マイスターと神山茅葺き研究グループが技術を後世に伝えるため,文化庁の助成を得て,平成に建設した,と述べられている.

また用いられた茅は神山町産で,7トン必要だったそうだ.


階段路に丁石

階段路に丁石

そのうち階段路になった.土留を兼ねた階段であろう.幅もあるし歩き易いと思う.

また丁石も見られる.九丁とあるから1kmくらいで,多分第20番 鶴林寺までの距離と思われる.どこからとか,どこまでとか,或いは矢印とか刻まれず,距離だけで方向が判然としないのは丁石の物足りなさだ.

なお麓から鶴林寺までの遍路道には室町時代の年号を刻んだ古い丁石が11基も残っているそうだ.この写真のものはそれより新しいように見えるが....いや,よく判らない.


概ね頂きになり川を望む

概ね頂きになり川を望む

第20番 鶴林寺は標高570mの頂きに位置するそうだが,概ねその近くになったのか,木立の間から大きな川を望むようになった.地図を見ると那賀川であろうか,雄大だ.徳島には多摩川クラス,いやそれ以上大きな川が何本も流れている印象だ.


敷石の歩道になる

敷石の歩道になる

そのうちきれいな敷石の歩道になった.真っ直ぐであるし参道であろう,そして程なく山門に至る筈だ.


第20番 鶴林寺山門に至る

第20番 鶴林寺山門に至る

銅屋根の長い庇が特徴的な平屋形式の山門だ.シンプルな造形が美しい.銅の比重は大きいが,瓦屋根や茅屋根と較べて薄いので,これを支える柱などの構造は容易になろう.尤も近年はさらに比重が小さく耐久性もあるチタン屋根がまま見られるようになった.イスラム圏ではアルミ合金の屋根,特にモスクの屋根もよく見かける.

山門には白い鶴の像が納められていて解りやすい.


第20番 鶴林寺本堂への階段

第20番 鶴林寺本堂への階段

山門から少し行くと,右手に鶴林寺本堂へ上る石段になる.

石段左の建物は護摩堂だが,さらにその左に大師堂が位置しているようだ.護摩堂には補修用であろう木材が積まれている.


第20番 鶴林寺本堂

第20番 鶴林寺本堂

本堂もまた銅の屋根で,シンプルなデザインだ.本堂前には一対の大きな鶴が向き合っている.ブロンズ製であろうが,鶴は白,という固定観念で見ると若干違和感も....(←偏ってるよ)

ところで本寺は弘法大師の開基だが,大師がこの山で修行中に雌雄2羽の白鶴が翼を広げ老杉のこずえに舞い降り,小さな(5.5cm)黄金のお地蔵さんを守護していたそうだ.このシーンに歓喜した大師は近くにあった霊木で高さ90センチほどの地蔵菩薩像を彫り,その胎内に前記黄金の地蔵さんを納めて本尊とし,寺名を鶴林寺にしたそうだ.

老木従って大木,その頂に5.5cm黄金のお地蔵さんとよく判ったものだが,やはり輝いていたからか.また今も大師手彫りの地蔵菩薩像と体内黄金地蔵はちゃんとあるのだろうか?と,いろいろ質問したくなります.まあ,そんなこと言い始めたら切りなかろうが.


第20番 鶴林寺大師堂

第20番 鶴林寺大師堂

鶴林寺大師堂も銅屋根構造で,お堂は皆統一されている.バラバラの設計ではなく,お寺コンプレックスとして総合的に構想され,図面が引かれたのであろう.

白い垂れ幕の両脇にはJALの鶴丸と同じようなデザインのマークが描かれている.多分JALの方が後だと思われるが別にデザイン盗用などという話は聞かないし,いいであろう.

ということでここで2回めの般若心経をまたたどたどしく読むのだった.そして納経所で御朱印を頂き,お接待です,と飴玉を添えて納経帳を返してもらった.


第21番 舎心山 常住院 太龍寺(しゃしんざん じょうじゅういん たいりゅうじ)

那賀川まで下る

那賀川まで下る

第20番 鶴林寺参拝が済むと,うねうねした道を南方向に下った.そして鶴林寺直前で眺めた那賀川の谷に至った.ここでは水井橋と名付けられた比較的幅の狭い橋を渡り,対岸の遍路道に出た.


第21番 太龍寺への道標

太龍寺への道標

渡った先のこの辺りでは,間違えやすいためかバカにたくさんの道標が集中して掲げられている.まあ多くある分には親切なことだし問題なかろう.


那賀川の谷からは上りになる

那賀川の谷からは上りになる

那賀川の谷から第21番 太龍寺へは基本的に上りになる.太龍寺の標高は500mくらいだそうで,また上りか~と思う.


第21番 太龍寺への上りは第三の遍路ころがし

第21番 太龍寺への上りは第三の遍路ころがし

ここも土留の階段トレイルは長く続く.鶴林寺の上りより長いと思う.

この写真の道標ではあと1.6kmとあるから,既に結構歩いたかな?


第21番 太龍寺への舟形丁石

舟形丁石

船の形をした道しるべと記され,一丁(109m)間隔で置かれている,とも説明されている.そうか随分短い間隔で置かれている(いた)のだな~,もっと疎らでいいので間違えやすい所にあれば,と贅沢なことと思わないでもない.でも僅か一丁歩いて次の丁石を見なければ,あっ間違いた!と直ぐに気付くからいいのかな.


第21番 太龍寺山門

第21番 太龍寺山門

平屋形式銅屋根の山門だ.門やお堂の屋根は上の鶴林寺と同じように銅で統一されているようだ.

柱や壁を見ると,元々朱に彩色されていたのが剥げ落ちているのかな~と感じられる.まあこれも古刹の趣きだと思われる.

ただ無造作に張られた禁煙とか火の用心のシールはいささかその趣きをいくらか損じているようではある.


第21番 太龍寺の納経所前庭

太龍寺の納経所前庭

納経所前庭には陽の当たる場所にベンチが据えられ,ここで民宿鮒の里で頂戴したおにぎりを頂く.納経所前は他の寺同様自販機が置かれ温かい飲み物が得られる.便利とも言えるし,折角の古刹,名刹の景観を損なう面のあることも否めない.

ここでは朝私より30分遅れで発ったKさんに出会った.途中『xxまであとどれくらいの距離ですか?』と訊ねる逆打ちのお編纂さんに出会ったそうだ.そして今回の遍路は百九十数回目で,野宿で廻っているのだが,迂闊にもテントの外,ザックの上にうっかり山谷袋(頭陀袋)を放置し,全て持ち去られてしまった,との話を聞かされたそうだ.

そして心優しいKさんは,持っていたおにぎり,それと千円を差し上げたそうである.該お遍路は,嘘でありませんから証拠にと,錦の納め札(色は初心者の白から,回数で異なる)をくれたそうで,私もそれを見せてもらった.

ただ改めて考えてみると,錦の納め札はどこでも買えるもので何ら証明にはならないし,百九十数回の超ベテランが,あとどれくらいの距離ですか?と訊くことなどあり得ない....と疑念は抱いているそうだ.

私が第3番辺りの納経所で貰ったリーフレットには,まれに詐欺遍路がいるからご注意を,と書かれているので,そのような可能性も有り得よう.


第21番 太龍寺鐘楼門

第21番 太龍寺鐘楼門

太龍寺では普通の鐘楼でなく,石段の真ん中の鐘楼門に鐘が吊られている.通るときは二階から垂らされた鐘突きの引き綱の下を通るようになっている.私は突かなかった(迷惑な気がして殆ど突かない)が,普通の鐘楼と較べてなかなかの威容だ.通り道なので突く参拝者が多くなるのかも知れない.

ここでも見えるが,境内には立派な杉の大木が林立し,とても見応えがある.見事だ.

なおここにはロープウェイが通っており,その山頂駅はこの鐘楼門左側通りを行く,との案内板が出ている.


第21番 太龍寺本堂

第21番 太龍寺本堂

太龍寺もまた弘法大師の開基で,ここ本堂にはあまり聞くことがない(自分の場合)虚空蔵菩薩が本尊として祀られているそうだ.

お堂の所々には込み入ったレリーフがはめ込まれ,灯籠や大きな提灯が華やかだ.


第21番 太龍寺大師堂

第21番 太龍寺大師堂

本堂の右手に建てられているが,別の道を通っていく.太龍寺境内はなかなか広く巨木の林立と相まって素晴らしい.

ここで経を唱えると,いつも通り納経所に行き,納経帳に印を頂く.

これまで順調に歩いたので,鮒の里ご主人のアドバイスの宿,太龍寺から下ったところ,或いは次の第22番 平等寺脇の山茶花さんのうち,後者が良さそうだ.なら早く電話予約しなくてはと思いながら....なかなか電話しなかった.自分ながら困った性分だ.


第21番 太龍寺から下る

太龍寺から下る

そして太龍寺から下ることになった.代表的なルートは2つで,これも鮒の里ご主人のアドバイスがあった.私は無難そうな北側のノーマルルートを下ることにした.少し下れば舗装の楽なルートだった.

Kさんは南側,太平洋を向くお大師様の像が立ち,遍路道の趣き濃いルートを行くそうだ.後で聞くと,大師像を背から望み,一部藪漕ぎ区間もある,かと言ってマムシには出合わぬ,いいルートだったそうだ.


第22番 白水山 医王院 平等寺(はくすいざん いおういん びょうどうじ)

県道195号線を越える

県道195号線を越える

太龍寺から下り,ノーマル下山ルートを過ぎ,南下ルートを歩き,県道195号線に来た.そしてここで道標を見誤り195号線を東進してしまった.そして大分進んでから誤りに気づき,引き返した.ページ初めのマップのトラックで,195号線にはみ出た部分がちゃんと記録されていた,恥ずかしい.

そして引き返し,そこから195号線を越えて直ぐの所にあった道標がこれだ.ここも矢印が右向きと上向き(195号線と同方向?)2つあり,要警戒だ.


遍路道は大根峠になる

遍路道は大根峠になる

さてちゃんとした道に入り,今度は慎重に曲がりながら進んだ.そして大根峠に至った.と言ってもそのように書いてあるのでそう記しただけで,一応峠なのであろうが特段変哲もない地形に見えるな~.

そしてこれを見ると平等寺まで3.5kmか,結構ありますな.


タルチョー(ルンタ)が架かる

タルチョー(ルンタ)が架かる

ここは道標がないが,大根峠と同レベルの峠に見える.そして脇にはチベット文字が記されたタルチョー(ルンタ)が架けられていた.チベット仏教で峠は山の上や橋と共にタルチョーを掲げる場所なので,やはりここは峠であろう.


遍路道は野の道になる

遍路道は野の道になる

山道の遍路道はやがて野の道になっていった.民家もすぐそこに見えて,周囲は畑になった.そして陽の位置は低くなってきた.


第22番 平等寺山門に至る

第22番 平等寺山門に至る

そして第22番 平等寺山門に至った.楼門形式の立派な門だ.

仁王門には強い夕陽が照りつけているが,その奥の本堂初め諸建物は既に陰っている.ここまで来たらもう宿の予約やってもやらなくても同じかと勝手に考え,何もしなかった.いかん.


第22番 平等寺仁王像と大わらじ

第22番 平等寺仁王像と大わらじ

多くの山門は仁王さまの前には格子やネットが張られ撮影し難いが,ここの山門はそうしたプロテクターがなく,容易に写せる.マッチョな仁王さまと大きなわらじと云う定番で,割れ目ができているので木製だろうか.

また他の寺では普通張り紙等禁止の旨,注意書きが掲げられているが,ここは許容しているようで千社札がペタペタ貼られている.お堂には納札箱があり,住所氏名を記した札を入れることができるのだから,山門に貼るのはよしたらいいと思う.


第22番 平等寺本堂

第22番 平等寺本堂

平等寺山門を入ると右に弘法大師像,左に水子地蔵尊が立ち,その先右に手水場,左に井戸?があり,その先の階段を上ったところが本堂だ.

本堂には五色の垂れ幕が架かり,また同色のテープが山門方向に張られている.五色の幕は山門や井戸舎にも掲げられている.宗派が高野山真言宗ということで,チベット仏教と同根だからでしょうか?いや,高野山真言宗の寺は,この前の第21番 太龍寺はじめいくらでもあるし....

とにかくここでお参りし,階段を降りる.


第22番 平等寺大師堂

第22番 平等寺大師堂

水子地蔵尊手前を左に入ったところに平等寺大師堂があった.そしてここでも手短にお参りを済ませて,納経所に急いだ.やはり宿が心配だ.


民宿山茶花

民宿山茶花に着く

民宿山茶花に着く

急ぎ平等寺を出て,4:40PM,直ぐ脇の民宿山茶花の入り口に立ち,現れた女将さんに一宿のお願いを申し入れた.部屋はあるのだが,食事の準備が....近くにビジネスホテルがあるからそちらの紹介で....いややはり食事作りますわ.お部屋は別館(新館で,写真左格子戸の建物)になります,との承諾を頂きとても嬉しかった.

次いで洗濯機や乾燥機の説明などお聞きし,部屋に案内してもらう.


民宿山茶花の別館客室

民宿山茶花の別館客室

ここが案内してもらった新館2階の客室.バスルームと別室トイレ付きで素晴らしい.これで500円本館より高いだけだというからには,空いているなら圧倒的にこちらを選びたい.

部屋で着替え,洗濯物を持って本館入り口の洗濯機に入れスタート.そして戻りお風呂に入る.家庭のお風呂と同じ一人用だが,温度調節は自由で時間も気にしないで済むので大変結構だ.

そのうち夕食時間になり,先ず洗濯物を乾燥機に,電気タイプよりガスタイプがいいというのでそちらに入れ,食堂のテーブルに座る.お向かいは確か4回目というベテランの歩き遍路さん,この時期まだヘビ,マムシもいます,見かけましたよ,とのことだ.するとお遍路さんではなさそうな3つ隣くらいの席の男性が,マムシは乾いたところにはおらず,水場のように水の多い所に棲んでいるからその辺は要注意です,とアドバイスをくれる.

そのうちKさんも斜向い席に着き,太平洋向きお大師ルートは藪があったが,マムシもおらずいいトレイルだった.そして日中電話予約していた当宿に到着後,別館に案内された,ということだ.

お隣は自転車遍路の千葉男性で,元々サイクリストであちこち駆けているが,定年になり,長い時間取れるので遍路ツアーに出たそうだ.千葉から四国にはうまい具合に自転車を積めるフェリーがあるそうだ.上り坂は大変で歩いて押す区間もあるが下りはものすごく速いそうだ.でも気を付けてくださいね.

お遍路が集まると色々話しが出て面白く,また有益だ.例えば三井住友といった都市銀行ATMは滅多にないが,郵貯ATMは四国の小さな町まで津々浦々展開されている.ただし都会と違って日曜日は休みで,土曜日は短い時間に制限されている....など.

こうして11月5日は更けていった.明日は第23番 薬王寺を目指す.



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