この遍路16日目編では,2017年11月15日民宿なずなを出発し,浦ノ内湾沿いを歩き,須崎辺りを通り,中村街道を南下し,土佐久礼に到着,だが宿が取れずJR土讃線で窪川に行き宿泊したときの写真を載せました.
11月15日朝になった.まだ暗いが晴れている,うれしい.
階下のダイニングテーブルに下り,ししゃものように細長い魚,何だろう?の一夜干しなど頂く.
壁には大相撲番付が掲げられているが,折しも脇のテレビでは横綱日馬富士関からビール瓶で殴られて....とか流れている.女将さんは,双方の意見をちゃんと聞いてみなくてはね....と言う.どういうことか私はまだ理解できてなかったが,ちょっと残念なニュースであることは確かなようだ.
食事が終わると,入り口に掛けてあった上下ノースフェイスカッパを畳み,雨傘も畳み,ザックに詰め込む.これらが重さの元凶の一つなのだが.....無くせないし....
そしてお礼を述べお暇した.表に出て海岸から浦ノ内湾を見ると,息子さんも営んでいるという釣り筏が見えた.沖は屋根付きで,手前は修理中なのか屋根が外されている.まあ,舟形でなく,四角いが屋形舟の一種と見なせる.釣り客はここで釣り糸を垂れ,釣り上げ,そして食事も楽しめるという.今は昔,30年くらい前になろうか,東京湾の飲み放題納涼屋形船を思い浮かべた.
浦ノ内湾に迫る山の麓を這う街道,県道23号線を西に進んだ.時々海岸縁で,ときどき山で,合間から湾を望む.
海岸から離れると徐々に高度を上げた.この辺りは131mと載っているが,そこまで上ったかな...?そしてこの日もまたトンネルが多そうだが,先ず一つ目の浦ノ内隧道に差し掛かった.このトンネルは歩道とか一切なく,なかなか怖そうだが,あまり長くはなさそうなのでまあいいか,いや,いいも悪いもなく通らねばならない.
トンネルを越えると下りになり,再び浦ノ内湾沿いになる.
そしてビニールハウス群が岸沿いに見えてきた.当然野菜畑かな~と思いながら進むうち,些細に眺めていると,ハウス下方は空いており,空気の出入りが可能で,またそこから覗くと野菜は見えす,何やら水を含んだ容器が並んでいる.またハウスと海岸の間には太い塩ビ管が繋がれ,海水の汲み上げと排水が行われている様子だ.という訳で,これは魚の養殖ハウスではないかと思うに至った.確信は持てないが.
大きな実を付けたポンカン畑,背後に標記の看板を掲げた倉庫があった.この果実は広範な場所で見かけるが,普通のオレンジとかより黄色みが勝り,かなり大粒に見える.立目(たちめ)はこの辺りの地名で,立目ブランドポンカンを推進しているようだ.
なお,民宿なずなの女将さんに聞いてきたことであるが,ポンカンは収穫して直ぐ食べても味はイマイチで,収穫後数ヶ月冷蔵倉庫で寝かすことで美味しくなるそうだ.へ~寝かすのはバナナだけかと思っていた.
なお初夏の小夏みかんも,味改善のため冷蔵倉庫で寝かせてから出荷するそうである.それは手がかかりますね.一方柿は大変安価で,5個で100円,など普通だそうだ.寝かせ不要とかのためでしょうか.
さて遍路道は浦ノ内湾奥深くに沿うようになった.太平洋の波の影響が一層少なくなったためか,海面は鏡面のように平らだ.ただ満潮で波高いときもあるはずで,道端には結構高い防潮堤が築かれている.
湾を離れ,また山に入った.そしてこの日2つ目の鳥坂トンネルとなり,通過した.ちょうど工事中のため,一方通行でスピードも加減されていた.
そのうち標記の東屋があった.明るくきれいな小屋だ.標識を見る限り須崎だけで少なくとも17箇所設けられているようでちょっとびっくりする.またヘンロとカタカナ書きなのは如何なる意図かな.....
ヘンロ小屋からなお西に歩いていると,対向方向から来るクレーン車が停まった.そして写真のドライバーさんが降りてきて,お接待です,どうぞと,バウムクーヘン,きのこの山...等々入ったおやつの袋を下さった.かたじけないです.
知り合い(親戚だったか?)にお遍路さんがおり,これまでいろいろ話しを交わしているうちに,自分もお接待を心がけるに至ったそうだ.車に菓子等常備し,歩き遍路を見つける度に停車し,差し出すそうだ.運転もどうぞお気を付け下さい.
須崎市に入ってきた.そしてこれまであまり見掛けなかった工場ぽい建物が見えてきた.珍しい.
近づくと,門に住友大阪セメント(株)高知工場と掲げられていた.
住友大阪セメントを過ぎると,須崎湾の奥,小さな川の河口で,ここに架かる橋を渡る.
橋の袂の遍路道標シールを改めて眺めてみると,1200km/45日間と記されているので,45日間くらいで巡るのが標準的なようだ.
須崎湾の奥縁には須崎市の住宅街や繁華街が迫っている.そして大きな道路や鉄道も通り,橋が渡されている.
須崎湾は深く,大型船も入れるそうだ.(昔は)海運が盛んであったのかも知れない.
少し内陸に入り,JR土讃線を越えた.越えるとちょうど高知行き列車が通過していった.
そしてこの後,意図せずこの路線列車に乗る羽目になろうとは....この時点ではまだ想像だにしなかった.
土佐っ子広場という看板の架かる道の駅的お店があった.隣にJAの看板が見えるので,JA直営かな?
ここで確かしめ鯖や玉子のにぎりセット,ヨーグルトなど買い求め,店先のベンチでランチとした.早く,安く,旨かった.
次はまたトンネルが待っていた,この日3つ目だ.面白いことに2つ並んでおり,右側が須崎歩道トンネルと名付けられているので有無を言わさずそちら側を通過する.歩道専用とは大変結構なトンネルだ.
やがて須崎市繁華街の外れ,須崎市道の駅辺りを通過し,新荘川(しんじょうがわ)に至り,その橋を越えた.
新荘川を越えると,少し高台になり,見晴らしが効く.小高い山々の底に住宅や畑が展開されている.いい眺めだ.
さて新庄川を越えてなお中村街道を西に進んだ.そしてこの日4つ目の角谷(かどや)トンネル入り口に来た.420mと記されている.段差や柵はないが,一応歩道スペースが設けられている.
さらに5つ目,久保宇津トンネルが待っていた.先方出口を見ると,短かいようだ.確認すると130mとあるので確かに短い.
中村街道は一時海寄りの高台になった.ここからは土佐湾が一望できた.湾はリアス式海岸で,大小の岩が凸凹に出入りしている.
これでもかと現れた6つ目は,工事中の安和(あわ)トンネルだった.長さ245m,左側が工事中だったのでそちらを歩く.近くにはJR土讃線安和駅があり,街道からも見ることができた.
中村街道を南下すると,強い逆光で皆潰れてしまったためか,ちょっとひなびた感じの街を通過した.安和(あわ)の街で,行政的には須崎市の一部になるようだ.
街道脇に多分ポンカンであろうがみかん畑があった.畑は斜面に貼り付き,収穫時の運搬は大変そうだ.そこで運搬用のモノレールが引いてある.写真右,ビニールシートでカバーされたのがエンジンで,後ろの台車を引くのではなかろうか.
以前こうしたモノレール運搬車は高尾山で見たことがあった.
さてこの辺りの標準的遍路道は中村街道を離れ,北の旧遍路道が一般的だ.でも私はそちらは大変そうなので,それまでの中村街道をそのまま行くことにした.修行の道場,高知県というのにいい加減だな~
さて安易な中村街道を行くと,966mととても長い焼坂トンネルが待っていた.真打ちだ.
入り口には歩行者用反射タスキが用意されており,これを掛けて抜け,向こう側の箱に収容する.長いトンネルなので途中天井には送風機が廻っている.抜けるには15分くらい掛かったと思う.
中村街道一筋で歩いてきたが,とうとう別れる.宿を確保しようと思っている土佐久礼の市街に行くためだ.
なおこの分岐点の道標は中村街道右直進と左に分岐,と二通り示されている.ここでは上側の縦矢印だ.
土佐久礼に向かった.やはり小高い山に囲まれた耕作地と住宅のある光景だ.いい天気で幸いだが,陽が低くなりかけて,影が伸びてきた.
土佐久礼市街に入った.そして道端に腰掛け,今日の狙いの宿に電話する.最初は前夜電話しても呼び出し音が続き,応答がなかったA旅館だ.今回も呼び出し音が続いたが,やがて,暫く休業します,との自動応答で,がっかり.
次いでB旅館に電話すると,今日は満室です,とさらにがっかり.
困って,土佐久礼から8kmほど先のC旅館に電話すると,こちらも満室です,ということでガックリ.サバを読みすぎていた報いだ.
だがめげてはいられない,へんろみち保存協力会のバイブルを紐解き,範囲を広げて当たってみる.そして明日参拝予定第37番 岩本寺近くの美馬旅館に電話する.するとあっさり,空いています,どうぞ,との返事で安堵する.空いているどころか,後に到着してみると客は自分一人だった.でも土佐久礼だけはどうしてこう混み合っていたのでしょうか.
第37番 岩本寺近くの美馬旅館はこれから歩いていける距離ではないので列車以外なかろう.で,午後3時前,JR土佐久礼駅に行く.写真のように駅舎はあり,お手洗いも備えているが,普段は無人駅のようで駅員はいない.時刻表を見ると第37番最寄りの窪川方面行きは16:35特急が一番早い.1時間半待つが仕方ない.
このベンチで待っていると,区切り打ちの男性が現れた.以前おおよそ88箇所廻ったのだが,この付近の区間だけ事情があり,歩かなかった.そこで今回はその補完のため歩いているそうだ.私が楽して歩いた焼山トンネルルートではなく,北の旧遍路道を歩き,大変だったそうで,学生時代サッカーで痛めた膝半月板辺りが応えたということだ.そして今日は出かけてきた方面に泊まるということで,高知行き列車が着くと,それに乗車して行った.どうぞお気を付けて.
16:35少し前にホームに出て,列車を待つ.そしてなかなかきれいなJR四国の特急あしずりが入ってきた.単線なのに特急があるなんてちょっと驚いたが,やはり客には便利だと思う.いささか疎らな運行間隔ではあるが.
特急あしずりのドアが開き,車内に乗り込む.シートマップは所謂在来線の特急普通車2-2タイプで,横縦ともに十分広いと思う.なお土佐久礼ー窪川間は乗車券360円,特急券320円だった.
そして土佐久礼駅から15分ほどの乗車で窪川駅に到着した.こちらは無人ではなくちゃんと出札口で駅員がチェックしていた.
到着した時刻は既に5時近くなので,第37番 岩本寺を参拝するのは無理だ.明日土佐久礼駅に列車で戻り,そこから歩きを継続し,ここに来てから岩本寺にお参りしよう.
ということで予約した美馬旅館に向かう.岩本寺の少し手前で直ぐに到着した.全体的にやや年季の入った建物だ.女将さんに案内された二階の部屋は前室を備えたタイプで,次いで一階の洗濯場や,お風呂,食堂を案内してもらう.
時間になり,食堂にいった.客が自分一人なのは前日の民宿なずなと同じことであるが,そのときは女将さんがいろいろ話し相手をしてくれた.一方ここは完全に一人でちと寂しい.
お料理はお刺身に,すき焼き風だったかの鍋など十分に美味しかった.ごちそうさまでした.
さて食事が終わり部屋に戻ると,今回の宿なしの失敗に鑑み,気合を入れて明日以降の計画と宿予約に取り掛かる.そして順次電話を掛けまくり,明日11/16(木)は民宿弘田,17(金)はネストウエストガーデン土佐ホテル,18(土)は民宿いさりび,19(日)は民宿足摺はっと,20(月)は民宿くもも,と一気に5日分予約確定した.やればできるじゃないか.しかも比較的混むであろう土日を押さえたので気が楽になった.
さて明日は土佐久礼に戻るJR特急が,窪川6:48発と早いので,早く寝よう,お休み.