この日はハヌマラベース(またはラナン)から歩き始め,今回のハイライトの一つハヌマラ(4,720m)に至る.ハヌマラからは小さな沢沿い,眺めの良いトレイルを下り,スネルツェの茶屋に着き,お茶.スネルツェを出ると,一旦登りになり,迫力のスネルツェラの峡谷を過ぎ,やがてジンチェンタクポのキャンプサイトに到着し,ここで宿泊した.途中『ラルサ』と呼ばれ,馬やロバが食べると命が途絶えてしまうという珍しい花なども咲いていた,
ハヌマラベースで朝を迎えた.天気はイマイチのようだ.テントの片付けにかかる頃,14頭の馬は対岸の山の上で朝食中だった.馬方さんは素早くそこに向かうと,馬を見つけ,仕事場へと駆り立て下ってきた.馬も馬方さんも狭いトレイルをすたこらすたこら下る様は見事だ.
馬も戻り,私たちも今日は行程が16kmと長いということで6:35と随分早い時間に出発.歩き始めるとすぐ登坂に入る.この日もなかなか厳しいトレイルだ.途中スピードの速いトレッカーや馬に道を譲りながらゆっくり登っていった.
天気は回復せず,ハヌマラ(Hanuma La/4,720m)に近づく頃,僅かながら小雪がぱらつくようになり,高度も増し少し冷えてきたためカッパを着込む.
3時間近く歩いた後ハヌマラ(Hanuma La/4,720m)に到着した.いかにも峠と云った地形で,細い頂きの両側に急傾斜の坂が落ちている.大量のタルチョーやルンタが掲げられている.
私はやはり青空が好きなくちなので,そうでないのが少し残念だ.
ハヌマラからは広いザンスカール山脈の一部を望む.6,000m級と思われるこうした美しい山も見える.ちゃんと名が付けられているのもある筈だが,多すぎるのか聞いても覚えておられない,というのが実感だ.まあ,こうした景観が楽しめるので十分であろう,としたい.
下は,ハヌマラベース(ラナン)からハヌマラまでの写真
ハヌマラからは小さな沢沿いのトレイルを下った.沢は所々雪で覆われ,スノーブリッジを成し,石が被っている.氷河のモレーンと似た光景だ.ただトレイルは広々しており,下り勾配なのでとても楽である.
暫く下ると広々した川原があった.先行していたシェフSさんがスープを調理中で,到着した私たちは早速荷を下ろし,頂戴した.
ここで座っている間,下るトレッカー,登っているトレッカーや地元の人....それなりに色々な人達,合わせて10人くらいが行き交っている.バカの一つ覚え『ジュレ―』(今日は!など)を交わす程度であるが,楽しいひと時だった.
川沿いのトレイルは長く続いた.なかなか眺めがいい.トレイルは小川の左右へと適宜スイッチする,10箇所くらいの場所があったか,幸い飛び石で対岸に渡ることができ,渡渉なくして済んだ.ところが,一箇所で私はドジして,石の上で足を滑らせ,そのまま水中に.靴の内部まで水が入り,到着したジンチェンタクポのサイトで乾かすはめになったのだった.次の日くらいまでに何とか乾きはしたが.
近く,とは言っても1時間以上かかるであろうが,の住民が川原の柳を刈りに来ていた.これまでゴンパや住宅で見てきたように,天井に多用されるシーリング材として使うためであろうか.写真は午前中の仕事を終え,昼食の準備シーンのようである.午後もさらに伐採を継続するであろうから,夕方これ程大量の荷を背に運ぶのも大変そうですね~と思ってしまった.
どんどん下り,沢沿いのトレイルが終わる先あたりに茶屋があった.簡単なゲストハウスも営まれているようで,1,2人のトレッカーならここで宿がとれそうだ.私たちはダライラマ14世の肖像画(ともう一人のラマ)の架かるテントの下でお茶を頂戴し,一休みした.
下は,ハヌマラからスネルツェまでの写真
スネルツェラの茶屋で一服後,再び南へと向かった.少し登り道を進むとやがてスネルツェラ(Snertse La)という緩やかな峠に達した.峠は緩やかだが脇の峡谷はものすごく深く,トレイルから見下ろしても底が見えない.まあ,ミニグランドキャニオンといった趣だ.
スネルツェラの先は緩やかな下り勾配が続く.そしてやがてジンチェンタクポのキャンプサイトが見えてきた.大きな川の畔になるようだ.
写真左側のジグザグ模様であるが,『あれが明日登る道です』とガイドSさんから告げられる.ひえ~なかなかキツそうですな~
さらに下って午後3時,ジンチェンタクポに到着した.水量の多い2つの川が交わるところで,両者ともザンスカール川の支流になっているそうだ.今夜はゴーッという音が子守唄となりそうだ.到着した時既に手際よくテントを張ってくれていた.荷を下ろし,天気も回復してきたようで,早速濡れた靴を脱いで,陽に晒す.
川向うも含めてここは結構広いスペースがあった.幾つかのパーティがテントを張っている.荷役のロバであろうか,私たちのテント脇にも出没している.いつも大変なロバだけに,たまにこうした逍遥もリラックスできる憩いのひと時なのであろう.
いろいろ咲いていた中で特報的なもの.ガイドSさんの解説では,3番めの紫の花は『ラルサ』と呼ばれるそうで,馬やロバが食べるとお腹がパンパンに膨れ,死んでしまうそうだ.そのため馬方さんはこの花を食べないよう大変神経を使っているそうである.ただ,この花はどこでも咲いているということはなく,今日の午後以外見掛けることはなかった気がする.また馬とロバ以外の家畜には無害だそうである.
さて今日も無事歩き,ハヌマラを越え,ジンチェンタクポに着いた.いろいろな風景が楽しめた.明日ははナムルまで進む,さてどんな光景が待っているかな~