このD4:ダナキューへ編では11月9日の記録,チャムジェ,タル,シランタル,ダラパニ,バガルチャップ,ダナキューまでの写真と記事を掲載した.
7:30AMチャムジェのロッジを出発した.それと殆ど時を同じくして,逆方向から行進してくるヤギと羊の群れに出合う.大群だ,200頭くらいか?草の無くなるカルカから,下の方に移動するのだそうだ.
中央アジアや中東では羊だけ,或いはヤギだけの群れである場合が多いように思ったが,ここではその2つが一緒になっているところが面白い.仲もいいようだ.
ヤギと羊の群れとすれ違ってチャムジェの外れまで来ると吊り橋があって,マルシャンディ川の東側(左岸)に渡った.
左岸に渡り巻き道は川を離れる如く少し高度を上げる.やがて大きな木が少なくなり,陽が照りつけるようになる.草の緑も疎らになり,ヤギと羊が下るのも納得できる.
チャムジェから1時間ばかり歩くと茶屋があった.庭には大きな紫の花と,赤い葉が花のように咲いていた.
ガイドGさんの言に依れば,紫の花はサンフラワーと呼ばれるそうだ.サンフラワーと言われれば,黄色いヒマワリ以外思いつかないのは思考力が足りないせいであろう.
一方赤い葉のラルパテは,ラル=赤い,パテ=葉っぱの意だそうで,一般名詞が固有名詞化したケースであろう.ポインセチアと同じか同類であると思われるが,大木で4~5mの高さのものまである.強い陽射しで鮮やかな赤が印象的だ.
下は,チャムジェとそこから暫くの間
タル村手前の茶屋でミルクテーを啜っていると珍しく東洋系のトレッカーに出会った.ソウルから来たというご兄弟で,二人とも60代,合わせて130歳になるそうだ.お兄さんの方は歩く速度が遅く,弟さんの方がいつも先に茶屋に到着し,待っている.その方が無理に速度を合わすより楽に歩けるのだろう.頂いた韓国製の飴が美味しかった.お二人にはこの先マナンやレダーなどでも出会うことになった.
一旦高く上がった巻き道はタル村の手前でマルシャンディ川まで下る.ここでは川面から直ぐ立ち上がる岩壁の脇に飛び石を置いたトレッキング路を通過する.雨季には冠水しそうであるが,他のルートもあるのであろうか?
チャムジェを出て3時間近く経った.この辺りでタル村のカンニ(仏塔門)をくぐる.タル村は広い範囲に分布し,茶屋も点々とある.
子供たちが元気に遊んでいる.この子は大きな鼻ピアスを付けてご機嫌だ.鼻ピアスの習慣があるのはタマン族かな....?
下は,タル辺りの写真
タルの村外れには境界をあらわすカンニ(仏塔門)があった.上部に黒白赤のチョルテン(仏塔)を擁している.この三色がいかなる意味合いを有するのか分からないが,今回のルートではしばしば見かける.クーンブやランタン地方では見かけないので,かなりユニークな形式のように思える.なお門の天井に曼荼羅が描かれ,側面にマニ車が配されているのは他の地方の形式と同じだ.
やがてシランタルの村に着いた.マリーゴールドの花が咲き乱れる一軒の茶屋で昼食を食べることにした.オニオンスープに野菜と卵のヌードル,お茶と,いつもさしたる違いはない.
庭先で食べたこの日も快晴.あまり好天が続くと,この先肝腎な場所(マナンやトロンパスなど)で崩れやしないかと心配になる.
食事を終え,再び北に歩き始めると程なくまた吊り橋が現れ,西側(右岸側)に渡った.
下は,シランタル辺りの光景
このルートはマルシャンディ川に流れ込む川や滝がとても多い.シランタルから右岸に渡った所から間もない場所にあるこの滝は,トレイルに注ぎ,歩く場も水浸しにしている.
これらマルシャンディ川に注ぐ小さな川にはしばしば小型発電機が設置され,傍らの集落に電灯を点すのに貢献しているようだ.小型ではあるが,それでもまだソーラーパネルでの発電/鉛電池で充電のシステムよりかなりパワーは大きく,ほんのり点灯レベルのソーラー式に比すれば圧倒的に明るい.
暫く行くとカルテ(Karte)という集落に至る.ここの本村はマルシャンディ左岸にあり,道もそこを通る.ただカルテを過ぎるとまた直ちに右岸に戻る吊り橋があって,渡るのであった.
周囲は切り立つ岩山で,畑はもちろん無いし,家畜も困難そう.....トレッカー相手の茶屋やロッジ以外にどう云った商売が営まれるのだろうか?家畜かな?
左岸に戻り,少し行くとダラパニ(Dharapani)に到着した.広場ではバレーボール大会が開かれ,プレーヤーも観客も大いに盛り上がっていた.この日,11月9日は日曜日であるが,ヒンドゥー教が国教のネパールでは土曜が休みで日曜はそうではない.まあ,普通の日に開催されるほどバレーボールは盛んなのかも知れない.或いは今春ネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)が第一党に躍り出たことだし,日曜日も休みになったのかな?
ところで,ダラパニのパニは水の意であるが,ダラは水道の蛇口のように水の出る管のような意味らしい.ということで,ダラパニは泉から引いてきた水が出る管の出口のようなものと思えばいいようだ.
暫く行くとダラパニのチェックポストがあって,ここで台帳に書き込む.外に出るとき,ふと前方に目を向けると結構間近に白い山が見えた.マナスル山系にあってラルキピーク(Larke Peak)(またはラルキャピーク :Larkya Peak)と称するそうだ.高さは6,010mのようであるが,なかなかどうして堂々としている.ネパール政府のトレッキングピーク対象の山で,カトマンドゥ発の往復登山で4週間程度要するようである.
下は,ダラパニ辺りの眺め
ダラパニを過ぎ少し行くとマルシャンディ川の上流方向に白い峰が見えてきた.アンナプルナ系,多分アンナプルナⅡ峰(Annapurna II 7,939m)であろう.
アンナプルナ山系は高い順にⅠ,Ⅱ,Ⅲ.....と名付けられているそうでⅡ峰は2番目の高さということになる.
程なくバガルチャップ(Bagarchhap)の村に入った.まだ午後3時であるが周囲が山で囲まれているので既に陽が陰ってきた.古い村のようで歴史を感じさせる石造りの家々が道の両側に立ち並んでいる.ただメインの道から少し逸れたところには幾つかの新しいロッジなども見られる.
下は,バガルチャップ周辺の写真
バガルチャップから広い道を辿ること30分余りか,ダナキュー(Danagyu)に到着した.振り返るときれいにマナスル山系が望めた.そこで今夜のロッジはダナキュー入り口に位置する写真のアンナプルナホテル(Annapurna Hotel)にすることにした.なおアンナプルナホテルと称しても残念ながらアンナプルナは見えない.数限りなくあるロッジの名前はどれもこれも同じようになってしまうのは致し方あるまい.
アンナプルナホテルのダイニングルームからは西方向にマナスル山系を望めるように広い窓が設けてある.午後5時15分くらいになると山は夕日で赤く輝いた.マナスル三山(マナスル,ピーク29,ヒマルチュリ)のどれであるか.....?う~ん,ヒマルチュリかな?
やがて完全に陽は落ち,夕食も済ませた.ロッジの部屋は広く,電灯もあった.客は筆者一人で,マルシャンディ川のゴーッと云う音以外は何も聞こえず,至って静か,シェラフに包まれると間もなく深い眠りについた.
下は,ダナキュー辺りの眺め