さて旅行で,つまらないというか,もったいない時間というか,それは行き帰りの航空機の時間であろう.不味くて,ちょっと....と敬遠される人も居られようが,私はビールなどのドリンクや食事は楽しみの一つだ.でもそれは短時間で,残る長時間はやはり映画が一番の楽しみだ.
機内映画の難点はジェットエンジンの轟音でセリフがかき消され易いことだ.特に歳取ると聞き取りにくくなる.
旅客機はターボファンエンジンが普通で,近年,推進効率を高めるためファンを大きく,バイパス比(高圧タービンや燃焼室に送る空気量に対する外周部から後部に排出し,スラストを発生さる空気量の比率)を高めたエンジンが多くなった.バイパス比を高めると騒音も減る傾向になるが,それでもまだ相当大きい.また尾翼近くにエンジンを配置し,キャビン内騒音を低減する方式は,燃費効率,メンテナンス性,信頼性が改善した....などで,大型機(B777など)でさえエンジン2基化が進み,あまり採用されなくなった.なお大型機のエンジンは実質的にロールスロイス,GE,プラットアンドホイットニー(P&W)などに絞られ,エアライン側で選定して使うそうだが,同じクラスのエンジンであれば騒音に関し圧倒的な差はないようだ.つまり,どのメーカーのエンジンでもバイパス比を上げて改善しているがそれでも相当うるさい訳だ.
で,あるときツアー同行者に教えてもらったのが『ノイズキャンセリングヘッドホン』.内蔵されたマイクフォンで周囲の雑音を検知し,逆位相(πだけシフト)で,同じ振幅の音波を発生し,元のノイズに重畳し,振幅は0,つまり結果としてノイズはキャンセルされる,と云うのが仕組み.
で,最近使っているのが下図のSONY製で,型番MDR-NC200Dというヘッドホンで,まあまあ効果がある.ノイズが無くなるか,と云う観点で問われれば,私は即座に『否』だと思う.キャンセルしきれないノイズは結構大きいが,映画のセリフはかなり聴き取り易くなる,と実感する.
SONYノイズキャンセリングヘッドホンMDR-NC200D
ノイズキャンセリングヘッドホンのメーカーはたくさんあり,また同じメーカーでも随分安価なものから高価なものまで取り揃えてある.SONYのこの製品は14,000円くらいで,並~中程度のものであろうか.デジタル方式で,以前使っていたアナログ式のMDR-NC7(4,000円くらいだったか)より聴き取り易さは上だと感じる.
なお改めてメーカーのノイズキャンセリング仕様を眺めると,総騒音抑制量(同社測定法による)約17.5dBで,音のエネルギーで約98.2%の騒音低減に相当,と記されている.エネルギーと聴力の関係が不明だが,ノイズの大きさが98.2%も減った,と云う感覚には程遠い.ただ繰り返すがセリフが明瞭になれば御の字だと思う.また同社最高級品(最高価格品)のMDR-1RNCは総騒音抑制量約25dBで,エネルギーで約99.7%の騒音低減だそうである.
なおケーブルは着脱式で,1.2mのものがちゃんと付属し,また航空機で多いF型プラグも付いている.F型プラグが無くなると機内で使えなくなるのでケーブル一体型が望ましいのだが.....まあ,無くさないよう気を付けよう.
MDR-NC200Dにはケースが付属しており,これが思いの外良い.つまりケースがないと,バッグ内でケーブルが他の物に絡まって困るのだが,それが避けられる.それと折りたたんで収納するのでまあ比較的コンパクトだ.またケースのポケットに予備の単4電池を入れておき,電池切れに備えることができる.
なお本体重量は180grの仕様で,ケースに本体,ケーブル,Fプラグを入れて秤に載せてみたら305grだった.ケースがしっかりし過ぎているようにも思う.
ところでこのヘッドホンは電車でも効果があるだろうか?私の耳では京成電鉄では殆ど効果がない.京成内で音楽プレーヤーを使ってみると,ガタゴト音や車掌のアナウンスは普通に聞こえてくる気がする.京成電鉄は元々騒音が大きくないので効果がはっきりしないのだと思う.
それが東京メトロになると少し効果が出る.つまり東京メトロではゴーッゴーッという騒音がいくらか低減される.早い話,京成電鉄より東京メトロがうるさいだけのことなのだとは思うが.それでもジェットエンジンの規則的大騒音のキャンセリングほどの効果は認められない.まあ,飛行機専用と割り切るのがいいかも知れない.
------------- できれば ---------
私は試したことがないのだが,カナル型とかインナーイヤー型のイヤホンタイプのノイズキャンセラーもいいんじゃなかろうか.私は耳から脱落し易いのでなかなか合うのが見つけられないのだが,耳にフィットすればこちらが鬱陶しくなく,また軽くて理想的な気がする.
(2013/8/9記)
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