寝袋(シェラフ,スリーピングバッグ)はトレッキングの必需品だ.その日の宿泊地に早めに到着し,陽の出ているときはテントの上に広げて干したり,またテント内に敷いて寝そべったりする.そうした場合,寝袋内の羽根(ダウンではなく)が飛び出ているのに気付くことが間々ある.こうした場合,私は暇に任せて出かかった羽根を引っ込めたりしている.
私が長らく用いているのは『Isuka Air810EXのショートタイプ』で下図の外観である.全重量1320gr,ダウン量810gr(800フィルパワ-)で嵩張るが,寒がりの私には必要なタイプだ.
Isuka Air810EX sの外観
ファスナーは上と下2つに付いているので,暑いときは下を開放し足を出して寝る.さらに暑い時は全部開いて掛け布団のようにしている.
ちなみにインナーシーツは袋状薄いシルクで,こちらはとてもコンパクトだ.それに意外と丈夫なことに驚く.
さてそのダウンであるが,蕎麦で言えば『繋ぎ』の役割で『羽根』が混ぜてあるのだそうだ.羽根なので真ん中に骨があり,それが外側の布を突き破って,飛び出してくる.その様子を下に描いてみた.
寝袋から出かかった羽根の様子
ところでダウン製品は寝袋だけでなく,ダウンジャケットなどにも使われる,いやむしろそちらが圧倒的に多いと思う.でもダウンジャケットと較べて,寝袋の方が羽根飛び出しが非常に多いように感じられる.寝袋の方が軽量化のため外側布が薄いし,体重の圧力が加わるためではなかろうか(想像)
さて寝袋から出かかった羽根を観察すると,当然であろうが羽根の根元の骨側から越境し始める.しかも骨の両側の羽根(小骨)は恰も釣り針のカエリのように,内側に引っ込めるのを妨げるような構造になっている.これでは出る一方な訳だ.
私は寝袋表面に次々出てくる羽根を見るにつけ,木下順二の『夕鶴』が脳裏に浮かぶ.おつうさんは我が身を削って織物にし,与ひょうに恩返ししたが,寝袋から出た羽根はパジャマ(の役目のジャケット)を汚すだけでちっともありがたくない.それでもおつうさんのように,寝袋が徐々に痩せ細るのではないかと懸念される(実際はそれほど出るわけではないが)
さて陽射しのある午後のテント内のシーンになる.下図参照し,先ずは出掛かった羽根の先と思しき部分を反対側布地の上から抑えこむ.見えないのだから出かかっている骨の先にある筈と推定し,指でつまむのがポイントだ.次に出かかっている骨側の布地を,骨の間近で抑えこむ.続いて掴んだ羽根を布地ごと引っ張れば,寝袋本体に戻る訳である.
出かかった羽根戻しの図解
羽根の2/3程度出かかったものも結構引き戻すことができる.盲で羽根先を掴むのが勝負どころで,それが上手くいった場合だが.そして今度は,お尻から芝居小屋に半身入り,『そんな所から出ちゃ困る』と言われ,木戸銭無しで芝居見物する,という落語を思い浮かべながら,次々と中に戻すのだ.まあ,随分と暇な話ですが.....そして,実際の効果は大したことなかろうが,上手くいったときの快感を味わうことができると思う.
(2016/4/20記)
スポンサーリンク